ご縁がありませんでした。
佐和子は先月から某コンビニでアルバイトを始めていた。
このコンビニに決めた理由は、運転免許証を持っていないから近場が良かったということと、店員の接客態度が良かったからだ。
アルバイト募集の情報も何も無く、いざ出陣の気持ちでアルバイトをしたい旨を伝えると、すんなり面接へ進み、決められた期日よりも1日早く採用の通達が来て喜んでいた。
初めてコンビニバイトをしたのは高校生の時だ。今とはだいぶ仕様も変わっていたが、それでも接客業に向いていると自他ともに認める佐和子は、愛想良く業務をこなしていく。
しかし、事件は起こった。
2日目ゴミ出しを任された佐和子はペットボトルを素手で何個か触った翌日、左手の指三本に黒い汚れが出来ていることに気付く。
皮膚科に行くと、薬品かぶれでターンオーバーで治ると言われたが、結局予告された1ヶ月を過ぎても着色汚れは治らなかった。
話を戻すと3日目発熱を起こし欠勤をした。唯一の欠勤だ。翌日からまた頑張ろうと自転車を漕いで出勤すると、アスファルトと鉄板の間で派手に右側に転んだ。大破した自転車を押しつつも出勤し、業務を終えて病院へ行くと、3箇所ヒビが入っていた。店長にそれを伝えて、かつ、それでも労働意欲を見せていたが、オーナーの判断は「完治してから出勤してくれ」だった。全治10日~2週間と言われたのだが2週間たっても痛みが引かない。手首のヒビなのでサポーターでもくれてもいいのに、と思いながらも、湿布しかくれない医者だった。2週間が終え出勤を暫く続けていると、今度は母が交通事故を起こした。頭が真っ白になるも、それでも事情を説明した上で出勤した。店長からは出勤してから帰った方がいいのでは、オーナーならそう言うと思うといわれたので、その日はそのまま帰宅した。しかし、この件でオーナーが退職を促す可能性があると示唆する。一体全体どういうことだ?
その次の日のことだ。
前述の通りコンビニバイト経験者でもあり、朗らかな性格の佐和子は仕事の覚えも早かったはずだし、真面目だった。
今後どうなるかの電話がかかってくる予定の時刻を過ぎてもかかってこなかったので、こちらから電話をかけることにした。
「お疲れ様です。」
「お疲れ様です。」
「オーナーとのお話、どうなりましたでしょうか?」
「…この度はご縁がなかった、と伝えるようにとのことでした。」
頭の中で起爆剤が爆発するも冷静に今までの恩義を伝えて電話を切った。
あのぅ、オーナー、頭の毛、少し禿げてくれませんか?
ちま語で話せばこんな気持ちだ。
だが、大体は予測できていた。
なので既に2社応募済みだ。
明後日面接1件、もう1件は書類選考中。
いい小説のネタになると思えば、人生なんて大したことない。
心で毒づいて猫を撫でる。
にゃー。ちゅーるよこせー。
愛らしいから全てを許そう。




