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「別れたのは今日じゃない」  作者: れんれん


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6/6

最後に会った日



「少しだけ、会えない?」


届いたメッセージは、それだけだった。


名前を見ても、もう心臓は跳ねない。


少しだけ、時間を置いてから画面を閉じる。


---


会う理由なんて、もうない。


話すことも、特別ない。


それでも——


なぜか、断るほどでもない気がした。


---


「少しだけなら」


短く返す。


それで、決まった。


---


待ち合わせは、駅の近く。


よく使っていた場所。


でも不思議と、懐かしさはなかった。


---


「……久しぶり」


先に気づいたのは、彼の方だった。


軽く手を上げる。


前と同じ仕草。


でも、それだけ。


---


「久しぶり」


近づいて、同じように返す。


それ以上の言葉は、特に出てこない。


---


少しだけ歩く。


どこに行くでもなく、ただ並んで。


---


「元気そうだな」


「うん、それなりに」


それだけで会話が終わる。


前なら、何かを繋ごうとしていた沈黙。


でも今は、ただ静かに流れていく。


---


「……なんか、不思議だな」


彼が言う。


「前はもっと、話してたのに」


---


少しだけ考える。


確かにそうだった。


どうでもいいことでも、ずっと話していた。


沈黙が怖くて、埋めるように。


---


「今は、話さなくても平気だからね」


自然に出た言葉だった。


---


彼は少しだけ笑って、頷く。


---


「さ」


彼が立ち止まる。


「これで最後にしようと思って」


---


その言葉に、少しだけ驚く。


でも、嫌な感じはしなかった。


---


「ちゃんと終わらせたくて」


続く言葉は、どこか整理されている。


---


「俺さ、やっとわかったんだよ」


「遅かったけど」


---


静かに聞く。


もう、何も揺れない。


---


「お前がなんであのとき別れたのか」


「今なら、わかる気がする」


---


少しだけ目を細める。


---


「たぶん、俺が気づく頃には、もう終わってたんだよな」


---


その通りだと思った。


でも、それを口には出さない。


---


「……うん」


それだけ返す。


---


少しの沈黙。


でも、不思議と重くない。


---


「ありがとうな」


彼が言う。


「ちゃんと好きでいてくれて」


---


その言葉に、少しだけ胸があたたかくなる。


---


「こちらこそ」


自然に返す。


---


嘘じゃない。


ちゃんと好きだった。


ちゃんと大切だった。


---


「じゃあな」


彼が言う。


---


「うん。元気で」


---


それだけで、十分だった。


---


背を向ける。


歩き出す。


---


今回は、涙は出なかった。


引き止めたいとも思わない。


---


ただ、静かに思う。


---


ああ、これで本当に終わったんだなって。


---


振り返らない。


必要がないから。


---


あの恋は、ちゃんとここで終わる。


無理に続けることも、

思い出を塗り替えることもない。


---


ただ——


ここまで来たことを、受け取るだけ。


---


好きだった時間も、

悩んだ時間も、

全部そのままにして。


---


私は前に進む。


彼もきっと、別の場所へ行く。


---


同じ時間を歩くことは、もうない。


---


それでいいと思えたことが、

最後の答えだった。


---


終わらせたんじゃなくて、

ちゃんと終わっただけ。

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