死に戻りの君とともに、その先へ
「皆川京子、一緒に来てくれ」
高校に登校した京子は、校門のところで松川裕也に腕を掴まれた。裕也は高校生ながらに探偵をしており、数々の難事件を解決して地元の新聞で何度も取り上げられている。学校きっての有名人が地味な一介の女子に声を掛けたとあり、周りの生徒達にざわめきが広まるが、京子は彼に何の興味もない。
「なんですか?」
腕を払って冷たく尋ねる。
「俺はタイムループしているんだ。地球は5時間後に宇宙人のような奴らから攻撃を受けて、色々あって全面戦争になった挙句、おそらく人類は滅亡する。おそらくというのは、俺は早々に死ぬから結末は知らないんだ。で、死んだと思ったら今朝に戻る。君のスキルだろ」
「了解。では行きましょう。どこへ?」
「こっちだ。ゲートが開く場所に案内するよ」
京子は裕也についていく。
「何回目で私に辿り着いたのかしら?」
「苦労したよ…30回は超えていたよ」
「あら、優秀じゃない。歴代…3位ってところね。さすが我が校が誇る名探偵さんね」
「そりゃどうも。死に戻す前にヒントを出すようスキルの改良を提案するよ」
「そんなことができるなら、最初からしているわ」
「ちなみに、この会話も10回はしているよ」
「あら、まだそんなものなの」
「君を呼ばずに一人で行動したときもある。もう50回は死んでいるよ」
「それで、ゴールは近いのかしら?」
「あぁ、今回で終わらせる」
「お疲れ様ね」
「てか、自分でやってくれないかな」
「あら、前回の私は言ってなかった?私、頭が悪いのよ」
「悪いのは頭じゃなくて、性格でしょ」
「何か言ったかしら?」
「いえ、何も」
「で、頭が悪いから、私が何度ループしたところで何も変えられないわ。だから、周囲の中から一番優秀そうな人にループしてもらっているの」
「…そりゃ、光栄なことで…」
東京駅に出て、新幹線で新大阪へ。そこから地下鉄とモノレールを乗り継いで万博記念公園へと着く。もうお昼を過ぎている。
「急いで。あと10分でゲートが開く」
「ギリギリね。でも国内でよかったわ。前回はヨーロッパだったから、大変だったようよ」
「大変だったのは、君じゃなくて、ループ役なんだよな」
「ループ役が私を見つけてからは、私だって一緒に苦労しているはずよ。覚えていないけどね。ちょうど良い当日券がどうしても買えなかったらしくて、他人の航空券とパスポートで、タイミングの隙を突いて出国したのよ。何百回もチャレンジしたんですって」
「気の毒に…記憶が残っているのと残っていないのとでは、全然違うよ」
「すごく不機嫌で。10時間のフライトの最中、一言も喋ってくれないの。終わったらさっさと転校してしまったわ。私の顔は二度と見たくないんですって」
「もしかして新田百華か?」
「当たり」
「学年首位だったもんなぁ」
「勉強ができることとサバイバル力は違うのかもしれないと思ったわ。だから今回は探偵の貴方にしたのかもね。まぁ、今の私には預かり知らないことなんだけど」
ゲートが開く地点に着いて、京子はそのポイントを囲むようにアンテナのようなものを設置していく。
「前回の私は言ったかしら?私は戦闘力がないから、ゲートが開いた瞬間に破壊するしか勝ち筋がないのよね」
「聞いたよ。だからゲートの発生場所と時間を特定して、君を連れてきたんだ。勝ち筋というか、問題の先送りだよね」
「耳が痛いわ。追い返しているだけだから、何度も襲ってくるのよね。でも私がいなかったら、人類はとっくに滅亡しているわよ。貴方が今生きているのは、私がたまたま地球にいるおかげよ」
「そうだね。そういえば、君はどうして地球にいるの?」
「この話はしたことないの?」
「毎回違う答えが返ってくる」
「貴方は知らなくていいことだからね」
その時、空間が歪んで黒い穴が宙に生じた。しかし、京子が手に持っていたボタンを押すと、穴は捩れて消滅した。
「これで終わりよ。お疲れ様。じゃあ、ループ機能を返してもらうわね…あら、怪我をしたの?」
裕也の腹から血が出ている。穴が閉じ切る前に、向こうから飛んできた弾が当たったようだ。
「これは深いわね…貴方は間もなく死ぬわ。今ループ機能を返してもらったら、このまま死んでしまうけれど、どうする?」
「もういいよ。正直、疲れ果てているんだよ。ループ機能を取ってくれ」
「そう?…いえ、もう一回やり直しましょう。次は弾をちゃんと避けてね」
京子は裕也の傍に座って、その手を握る。
「私、貴方を気に入ったわ。これからもよろしくね」
裕也の生き地獄はまだまだ続く。




