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Scene6

次の日の昼休み、ナオが廊下の窓から雲を眺めながら言った。


ナオ「高校生活もあと1年か・・・。」


リク「1年っていっても、受験の1年だからな。そんなに楽しむこともできないな。」


ナオ「納得いかないなー・・・。あと1年しかないのにテスト漬けなんて・・・。」


ケント「でも、結構楽しかったじゃん。これまでの2年間も!」


ナオ「私、ずぅーと、高校生やってたいなー。」


リク「出た!ナオのモラトリアムモード。」


ナオ「そんなんじゃないよ。私は人生の不条理にちょっと納得してないだけ。」


リク「一生、高校生活が続く方が不条理だと思うぜ。」


するとナオが驚いたように言った。


ナオ「そういえば!納得いかないって言えばさ、包丁ってよく切れない方が危ないっていうじゃん。でも、やっぱりよく切れない方が安全でしょ。だって、切れないんだから。」


リク「出た!今度はナオのお馬鹿モード。」


ナオ「何それ。私にそんなモードないから。」


リク「そういう意味じゃないだろ。切れないと力を入れないといけないから、すべりやすくなって危ないっていうことだろ?それに切れない包丁でも指に当たったら切れるからな。」


ナオ「リクはノリが悪いな。」


ケント「納得がいかないかー。そう言えば、オレは交尾しているトンボを見かけたときに、何か申し訳なく感じることに納得がいない。見ちゃいけないもの見ちゃったような。」


ナオ「出た!ケントの変態モード。」


リク「オレは机の角に小指をぶつけたときの痛みに納得がいかないかな。何であんなに痛みを感じる必要があるの?」


ナオ「ははっ!この世の不条理の代表みいなもんよね。」


ケント「オレ、この前、ずっとテレビのリモコンを手に持ちながら、リモコンを探してわ。」


ナオ「分かるっ!私この前、停電になったとき、スマホのライトをつけてスマホを探してたもん。」


3人は爆笑した。


――


そのときにリクは、その場にもう1人女子がいるような気がした。そして、その女子はこう言った。


女子「私は、お気に入りのペンに限ってどこかに消えるとか?」


ナオ「あるね!私、友達とお揃いのものを買うと、なぜか私の方だけ壊れる。」


女子「他にもあるよ。美容院で『長さどうですか?』って聞かれるけど、そのときにはもう切られ過ぎてる!」


2人は爆笑した。


リク(何なんだこれ?記憶なのか?気のせいなのか?何でこんな具体的なイメージが出てくるんだろう・・・。)


――


ふと気が付くと、ナオとケントは笑いながらまだ続けていた。


ケント「なぜがオレだけ蚊に刺される。」


ナオ「ポテチの袋でかいのに、中身はスカスカ。」


ケント「コンビニのおにぎりの海苔、上手く剥がせたためしがない。」


ナオ「おしゃれして出かけた日に限って誰とも会わない。」


ケント「用心して傘を持って出た日に限って雨は降らない。」


ナオ「急いでいるときに限って信号が全部赤。」


ケント「好きな曲のサビのところで、決まって周りがうるさくなる。」


ナオ「試験終わった直後に答えを思い出す。」


その様子を見かねたリクが言った。


リク「何か、新しい山手線ゲームみたいなってるぞ。」


するとナオとケントはリクのことを怪訝そうに見た。


ナオ「リク、何ぼーっとしてるの?」


ケント「早く入って来いよ。」


リク「何それ?これって入っていかないといけないシステムなの?」


ナオ・ケント「うん。そうだよ。」


そのときだった。廊下の向こうから、靴箱で見かけた儚げな女子が廊下の向こうから歩いて来ているのが見えた。その女子はリクたちの方を見ながら通り過ぎて行った。リクは違和感を覚えてその女子に話しかけようとしたが、そのときに予鈴のチャイムが鳴った。


ナオ「リク、行くよ。」


ケントは笑いながら言った。


ケント「それ、ナオがいつもタロに言ってるセリフじゃん。」


リク「オレをナオの家の犬と同じにするな。」


ケント「じゃあ、教室まで競争な!」


ナオ「ケント、廊下は走っちゃダメっていつも言ってるでしょ?っていうか、それもう小学校のときから一生言ってるよね。」


ケント「何言ってんの?廊下は走るところだろ?じゃないと美女とぶつかるチャンスは一生訪れないぞ!」


そんなやり取りを聞きながら、リクは通り過ぎて行った女子の後ろ姿を眺めていた。

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