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Scene39


ある夜、リクとアリスは相模国分寺跡に来ていた。


アリス「リク、名前の最後に『ん』がつくものって、かわいく感じない?」


それを聞いたリクは怪訝そうにアリスのことを見た。


アリス「何?」


リク「いや、そのくだらない話題、きっとナオとケントの影響を受けたんだろうなと思って。」


アリス「何それ?私たちにとって『くだらない』はもう褒め言葉よ。センスが問われるの。」


リク「分かった。じゃあ例えば?」


アリス「メロン、ぺんぎん、みかん、きつね・・・あっ、きつねは違うか。」


リク「じゃあ、その法則だと、きつねはかわいくないことになるな。」


アリス「いや、きつねはかわいい・・・。」


リク「じゃあ、早速、法則が崩壊したな。」


アリス「いや、きつねより、きつねんの方が可愛いよ。」


リク「え?そういう意味で言ってたの?」


アリス「うん。」


リク「じゃあ、アリスよりも、アリスんの方がかわいいの?」


アリス「うん。アリスんの方が可愛い!だから法則成立!」


リク「いや、さっき崩壊したような・・・」


アリス「じゃあ『リクん』だったら?」


リク「いや、それはかわいいというよりも、ダサい。」


リクとアリスは笑った。


リクはワイヤレスイヤホンの片方をアリスに渡して、REOスピードワゴンの “Keep On Loving You”をかけた。2人はしばらく黙って夜空の浮かぶ星々を眺めていた。


アリス「ねえリク、宇宙人って本当にいると思う?」


リク「まあ、広い宇宙だからな。どっかにはいるんじゃないかな?」


アリス「もし宇宙人がいたら、地球に友好的かな?」


リク「友好的であってほしいな。オレは宇宙人の友達ほしいもん。」


アリス「え、じゃあもし、すぐ近くに宇宙人がいたら?」


リク「え?それは嬉しい。友達になりたい。」


アリス「そうなんだ。」


アリスはちょっと嬉しそうにした。


リク「え?それだけ?」


アリス「それだけだよ。いつものくだらない会話。」


リク「そっか。」


アリス「うん。そう。」


少しだけ2人の間に少し沈黙が流れ後、アリスがふと口を開いた。


アリス「見て、あの明るい星。」


リク「どれ?」


アリスはオリオン座の肩にあるペテルギウスを指差した。


アリス「オリオン座の方にある星。」


リク「ペテルギウスだろ?」


アリス「私、あの星が好き。燃えるような赤い光が、すごく力強くて神秘的だよね。」


リク「ペテルギウスって、名前がいいよね。物語に出てきそうな感じが。」


アリス「うん、名前も素敵だよね。確かアラビア語で『巨人の肩』を意味してるんだよ。」


リク「そっか。オリオン座って狩人の形なんでしょ。その狩人の肩にあるのがペテルギウスだから『巨人の肩』なんだね。地球からどれくらい離れてるんだろ。」


アリス「地球から約640光年くらい離れてる。」


リク「じゃあ、僕たちが見てるのは640年前の光だから、今はもうペテルギウスは存在してないかもしれないね。」


リクにそう言われてアリスの顔が曇った。


アリス「640年前に近くでペテルギウスを見た人と、今ここでペテルギウスを見ている人は、同じペテルギウスを見ていることになるんだよね。640年前と今が共存している。そう思うと永遠と一瞬が共存しているような感じがする。」


リク「じゃあ、たとえあのペテルギウスが放つ光が一瞬だったとしても、640年もの間、いろんな星にいるたくさんの生き物たちに光を届けてるんだな。」


アリスは「フフッ」笑いながら言った。


アリス「リクって、たまにロマンチストだよね。」


リク「そんな風に星空を見れるオレって素敵だよな。」


アリス「自分で言うんだ。」


アリスはまた笑った。


リク「でも、ペテルギウスってもうすぐ超新星爆発を起こすかもしれないって知ってる?」


アリスの脳裏に超新星爆発の様子が浮かんだが、まるでそのことを知らないかのようにリクに言った。


アリス「え、ほんと?」


リク「超新星爆発って、星が重力を支えることができなくなったときに起こる爆発なんだ。」


アリス「星が一生の最後に見せる輝きなんだよね。なんだか切ないね。」


リク「うん。爆発したら、夜空が昼間みたいに明るくなるかもしれないって言われてるんだ。何日も、その光が消えないくらい明るいらしいよ。」


アリス「それってまるで、最後に全力で自分を輝かせて、誰かに『ありがとう』って伝えるみたいだね。」


リク「アリスはそう感じるんだ。」


アリス「そうだったらいいなっていう感じ。バーン!って、ありがとう!って、そんな世界だったらいいなって思う。」


リク「そうだね。あとペテルギウスにはベテルバディっていう伴星がいるかもしれないって言われてるんだよ。」


アリス「ベテルバディ・・・?名前が可愛いね。それってどんな星なの?」


リク「引力に引っ張られて、お互いの周りを回っている2つの星のことを連星系って言うんだ。それで、明るい方が主星のペテルギウスで、暗い方が伴星のベテルバディなんだ。まあ、もし本当にベテルバティがあればの話だけど。」


アリス「へえー、さすが本好きだけあるわね。」


アリスは笑った。


アリス「ペテルギウスとベテルバディの関係って素敵だね。ベテルバディ、本当にいて欲しいな。」


リク「まだ詳しいことは分かってないけどね。」


アリス「でも、もし本当にいるなら、ペテルギウスが爆発したあと、ベテルバティはどうなっちゃうのかな?」


リク「ああ、今まで一緒にいたペテルギウスがいなくなった後、ベテルバティを繋ぎ止めるものが無くなって、宇宙空間を彷徨うことになるのかな。それとも、他の恒星を見つけて、その恒星の周りを周り始めることになるのかな。」


アリス「ねえ、それって浮気みたいじゃん。」


笑いながら言うアリスを見ながらリクは冗談を言った


リク「浮気って言うか、自然の流れみたいな?」


アリス「今自然の流れって言った?ひどーい。」


リク「そういう意味の自然の流れじゃなくて、本当のネイチャーの流れ。」


アリス「じゃあね。そのベテルバディは、『ありがとう』って言っていなくなってしまったペテルギウスのことをずっと想ってるの。どこにいても、どんな時でも、ずっとペテルギウスのことを想ってるの。」


リク「何かそれ、切ない物語だな。ペテルギウスが爆発しても、ずっとペテルギウスのことを想ってる。確かに、ペテルギウスが存在した痕跡は、何らかの形でベテルバディに残るかもしれないね。そしたら、ベテルバディがペテルギウスの記憶を引き継ぐことになる。それってまるで、大切な人の思いを胸に生きていくみたいだね。」


アリス「そうだね。ペテルギウスとベテルバディが本当にいるなら、お互いに引力で支え合ってきたんだろうな。まるでずっと手を繋いでいたみたいに。爆発して別の場所に行ったとしても、ペテルギウスと引かれ合ってたことは、そのつながりはきっと消えないと思うんだ。」


リクは少しおどけて言った。


リク「本当に切ない話だな。この話で泣けそうな気がする。」


アリス「切ないけど、ずっと貴方のことを忘れませんって!言う素敵な話だよ。リクも私とこんな風に夜空を一緒に見たことを忘れないでほしいな。」


そう言ってアリスは意地悪そうに微笑んた。それを見たリクは照れた。


リク「何か、そんな風に言われたら勘違いするぞ。でもアリスも忘れるなよ。」


リクも冗談っぽく行った。


アリス 「じゃあ、約束しようよ。ペテルギウスが爆発しても、私たちはこのときのことを忘れないって。」


リク「分かった。じゃあ約束だ。」


アリスは意地悪そうに笑いながら言った。


アリス「ホントーに?」


リクは少し嬉しそうに言った。


リク「ああ、ホントだよ。忘れる訳ないじゃん。」


アリス「それよりさリク、靴下って、なんで洗濯すると片方だけいなくなるんだろう?」


リク「そりゃあアレだろ、洗濯機の中に異次元ポケットがあるからだよ。」


アリス「え、じゃあ片方の靴下たちはどこに行っちゃうの?」


リク「そりゃあ・・・、靴下たちだけの楽園にじゃない?」


アリス「それもロマンティックだね。」


リク「これって、ペテルギウスとベテルバティの流れで冗談を言ってる?」


アリス「バレたか。」


2人は顔を見合わせて笑った。



<第2章 終わり>


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