Scene13
3人は帰りながら話をしていた。
リク「次はどこに行きたい?」
ケント「え?次があるの?」
リク「オレたちがこれからもずっと一緒にいたら、いつか次が訪れるだろ?」
ナオ「私はもっと都会っぽいところがいい!」
ケントは「オレは、こういうのんびりした場所も悪くないけどな。でも、3人で都内に行ったら、それはそれで楽しいかもな。」
リク「じゃあ東京タワーにでも行ってみるか?」
ナオ「東京タワー!?」
リク「どうした?」
ナオ「東京タワーってベタ過ぎない?」
リク「オレ、行ったことないんだよね。」
ケント「オレも。」
ナオ「えー!そうなの!?」
リク「ナオは行ったことがあるの?」
ナオ「無いけど。」
ケント「無いんかい!」
リク「じゃあいいじゃん。」
ナオ「まー、自分から進んで行くことないし、誰かに誘われないと行かないもんね。」
ケント「じゃあ決まりだな!いつ行く!?」
ナオ「受験が終わったらかな。」
リク「そうだな。みんなが志望校に受かって、そのお祝いを兼ねてもいいかな。」
ケント「それいいな!じゃあ、来年の春くらいかな。」
最後に3人は遺跡の中心にある大きな石碑の前で記念写真を撮ることにした。ナオがスマホを掲げて3人の自撮りを試みたが、またしてもリクの顔だけが微妙に切れてしまった。
リク「またかよ!」
ナオ「リクはもう顔が半分しか写らない芸風で行こう」
リク「芸風って何だよ?」
ケント「じゃあ、オレが後ろに回るよ。」
そう言ってケントは柱が立っていた岩の上で手を挙げて両手を合わせて目をつむった。
ナオ「何してんの?」
ケント「柱になってる。やっぱ記念撮影だから、国分寺の柱があった方がいいじゃん。」
ナオ「フッ、何それ。」
ナオは笑いながらシャッターを押した。
――
その日の晩、リクは弥生神社と相模国分寺跡に行ったときの写真を見直していた。リクはときおり「フッ。」と笑いながら写真を見返していた。最後にケントが柱のモノマネをして3人で撮った写真を見たときに表情が曇った。
リク(あれ?何だろうこの違和感・・・。写真に3人しか写ってないのは少なすぎる気がする・・・。この写真にはもう1人いたような・・・。)
リクは他の写真をめくった。
リク(他の写真はそうでもないんだけど・・・。)
リクはまた3人の写真に戻った。
リク(やっぱり、この写真にはもう1人いた気がする・・・。何だ?この感じ・・・。)
リクがふと立ち上がると、ラックの上に置いてあるクマのぬいぐるみが目に入った。
リク(オレ・・・こんなぬいぐるみ持ってたっけ・・・?)
リクはベッドの上に横たわり、クマのぬいぐるみを眺めた。
リク(持ってたっけって何だよ。何でオレが知らないんだ?オレ・・・どうかしちゃったのかな・・・。)