Scene12
リク、ナオ、ケントの3人が幼稚園に通っていた頃。ある日の昼休み、園庭で遊んでいると、リクとケントがいつものようにじゃれ合い始めた。
リク「おいケント、そのボール返せよ!」
ケント「やだね!オレの方がシュート上手いんだから、このボールはオレのもんだ!」
ケントが笑いながらボールを持って逃げ回り、それをリクが追いかけた。
ナオは呆れ顔で言った。
ナオ「2人とも、また喧嘩してるの?ちょっとは休憩しなよ。」
リク「ナオ、こいつがオレのボール勝手に取ったんだ!」
ケント「違う!リクがシュート外したから、オレが代わりに練習してやってんだよ!」
2人は言い争いをはじめ、ヒートアップしてきた。
ナオは少し考えてから、ふいに自分のカバンから手作りのおにぎりを取り出した。
ナオ「ほらほら、おにぎり持ってきたよ。お昼ご飯の時間まだだけど、これ食べたら落ち着くんじゃない?」
リク「おにぎり?なんでナオが持ってるんだよ?」
ナオ「今朝、お母さんと一緒に作ったの。2人がまた喧嘩すると思ったから、仲直りのために持ってきたの。」
ケント「仲直りのおにぎり!?そんなのあるのかよ!」
ナオ「あるよ!これを半分こして食べたら、仲直りしなきゃいけないルールなんだから!」
ナオはにっこり笑いながら、おにぎりを2つに割って、リクとケントに手渡した。
リク「・・・なんか負けた気がするけど、うまそうだから食べるわ。」
ケント「お前が食べるならオレも食べる・・・お、これサケ入ってる!うまっ!」
リク「ほんとだ、めっちゃうまいじゃん!ナオ、すげぇな。」
ナオ「でしょ?2人ともケンカばっかりしてるんだから、たまには仲良くしてよね。」
ケント「おにぎり作戦、やるじゃんナオ!次も頼むな!」
リク「それよりもケント、また喧嘩の原因を作るなよ!」
2人は笑い合いながらおにぎりを食べた。
夕方、お迎えが来る時間になり、リクとケントがそれぞれの親と帰ろうとしていた。
リク「ナオ、今日ありがとうな。明日も頼むぞ!」
ケント「そうそう!じゃないと、オレたちはただの喧嘩マシンになっちゃうぞ!」
ナオは笑顔で言った。
ナオ「まったく、手のかかる奴らだわ。」
――
ケント「ああ、そんなことあったかも。」
ナオ「あったかもって、ケント憶えてないの?」
ケント「いや、リクとよくもめてったなって、今思い出したわ。」
そう言ってケントは頭をかいた。
リク「結構、くだらない理由でもめてたしな。」
ケント「いや、オレがガキだったんだよ。リクに迷惑かけてすまなかったな。」
リクは真顔でケントの方を見て言った。
リク「お前、成長したな。お前がそんな風に言うとは思わなかったよ。」
それを聞いたケントは冗談っぽく言った。
ケント「それ、どういうことだよ。ここはお前も謝るところだろ。」
そこにナオが割って入った。
ナオ「いやいや、ケントはまだガキだし、私たちに迷惑かけないでね。」
ケント「ナオまでそんなこと言うの?どっちかっていうと、オレがお前らの面倒を見てるんだぞ!」
それを聞いたリクとナオは笑った。