No.95 イヴの本体
秘密の扉を進んだ先で、車椅子に座った女性に出会うジーナ。
「初めまして、いやお久しぶりというべきかな?まあ私本体が会うのは初めてだから、初めましてとしておこうか。どうも初めまして、私の名前はイヴ、アウガスタ・ド・ヴィリエ・ド・イヴ。長いでしょ?イヴで良いよ」
その女性は見たところ60代ぐらいだろうか、ジーナがみた姿とは違うが、この話し方は間違いない。イヴ本人がそこにいた。
「本当に貴方なんですね、良かった!ああ、えっとユキチカの友達のジーナです!他のみんなと一緒にあなたを助けに来ました」
ジーナはイヴの元に駆け寄る。
「あんな登場の仕方をするからにはそうだろうね。でなければ私を暗殺しに来た殺し屋だ。それじゃあ早速ここを出ようか、悪いけど車いすを押して貰えるかな?」
「分かりました!」
ジーナは後ろに周り車椅子を押し始める。
「ここを開けるとすぐに警報が鳴って人が来るからその対処を頼めるかな?」
「開けるからってそんな簡単に?」
イヴは懐から何かを取り出した。
「これ歯磨き粉や運ばれてきた食材とか、それと昨日従業員から拝借した袖のボタンね、それでつくったの」
小さいジュースの紙パックにボタンが取り付けられている。
「ぽちっとね」
イヴがボタンを押すと扉が開く。それと同時に警報がなり始める。
「思ったよりうるさいね、大丈夫?」
「ええ、色々あったお陰で聞き慣れてるので」
警報によって耳をふさぐイヴ、ジーナは車椅子を押して外に出る。
「それでは君の友達に援護要請を」
「はい!シャロ、みんなに伝えて」
「警報?脱走されたのか?!」
「またか、でもあの足じゃどこにも行けないし、さっさと戻ってもらいましょ」
警報に気付いた警備員が立ち上がる。
「ならおれが運んでやるよ」
「「え?」」
彼女らの背後にシドーが現れる。
彼は2人の首に腕を回し、相手の足をはらう。
「少し寝といてくれよ」
姿勢を崩した警備員はそのまま絞め落とされた。
「よし、ゲートを開けたぞ」
「こっちだ!急げ!」
キビがゲートを開け、シドーがジーナに呼びかける。
「イヴ先生!お久しぶりです!」
「おー!もしかしてシドー?久しいね」
「ベスト様はどこに!?一体なんの騒ぎですか!」
「脱走です、ゲートとの連絡が取れない、すぐに向かいましょう!」
職員達が異常に気づき向かおうとしたその時、証明がいきなり消えた。
「なんだ?電気が急に?!」
「なに?一体何なの?」
「お、落ち着いてください!」
「入居者を部屋に!」
「お昼ごはんは?」
「後でお部屋に運びますね、さあこちらに」
社員達が脱走に気づき向かおうとする、しかしパニックになった入居者やそれを部屋に避難させようとする従業員で思うように進めない。
「ふぅーただいまーどうよ中は」
「お母さんお帰り!凄い騒ぎだよ」
アンジェラが施設内部の映像を見せる。
「内見の時にちょっとしたサプライズを仕込んで来たんだ。ご隠居様を驚かせるのは忍びないけどね」
「プライス様もシートベルトを、車を施設入り口につけます。場合によっては荒い運転になりますので」
「よろしくね」
プライスは席につきシートベルトをつける。
「色々と騒ぎになってるみたいだな、このまま出口に向かうぞ!」
シドーが先行しその後ろをキビとイヴを押すジーナが続く。
人混みをすり抜けて先に進む一行。
「ッ!伏せろ!」
するとシドーは後ろの皆に覆いかぶさる。
「てめぇダイキの大切な人達を弾くきか?畜生、ダイキの身体に傷つけやがったな!誰だ!」
振り向くとそこにはアルファとシータが立っていた。
「あなた達はあの時の!」
ジーナが2人を見てそういった。
「気を付けろシドーさん、その2人はそこいらのとは違う」
「ああ、何の躊躇もなく人を撃ち殺そうとするやつみたいだな」
二人の後ろから警備員が現れる。
「後ろからぞろぞろと……ん?」
「どうしたキビさん」
キビはその警備員をみて怪しむ。
「あんたら警備員の服を着てるが見ない顔ばかりだ、いや、厳密には顔は一種類だな。この施設はアンドロイドを使わないって話だったが」
「排除対象を確認」
警備員の目が光る、アンドロイドだ。
「あいつらの施設でいない訳ないと思ってたんだ。隠してたんだな」
「相手にしてる暇はねぇ!悪りぃが容赦しねぇぞ」
シドーは包丁をアルファに投げ、相手はそれを撃ち落した。
「介護士歴は1日だが、銃の扱いならそこそこ経験あるんだぜ」
その隙にシドーは二人の銃を奪う。
「よしさっさと逃げるぞ!」
銃を奪ったシドーはジーナとキビにそう言って走りだす。
「車だ、行くぞ!」
外に出るとすぐそこにウルルが車を停めて待っていた。
「ガンマお願いします」
倒れたアルファとシータが何者かに連絡を入れる。
「神よ、この弾丸に祝福を」
施設の屋上に狙撃銃を構える一人の男がいた。
「ついた!」
「車いすからこっちの席に移すからな先生!ジーナちゃんは先に車に」
この時、イヴは車のカーブミラーにこちらを狙う者の姿を見た。シドーが狙われている事に直感的に気づいた。
「ッ!危ない!」
イヴは自分の腕の力で車いすから乗り出し、シドーを押し出す。
押し出されたシドーはそのまま車内に倒れ込んだ。
「……え?先生?先生っ!」
倒れたシドーの上には血を流すイヴが倒れていた。
「ウルルちゃん車を出して!」
「分かりました!」
キビの指示を受けウルルはとにかく今は運転に集中する事にし、車を出した。
「神よ、今はあの者達を生かすのですね。ではあの者達に更なる生き苦しみをお与えください」
狙撃した男は逃走する車を見届け銃を下げた。
「こちらガンマ、最重要ターゲットの1人を排除、他の者は逃走」
「先生……」
この時シドーは状況をすぐに理解してしまう。誰かが自分を狙って撃ったのだ。それをイヴは身を挺して守ってくれた。
「クソッ!」
シドーは出血箇所に自分の上着を裂き、押さえつけて止血しようとする。
出血箇所は胸部の両側面で、その軌道には両肺と心臓がある。もうこの場でどうにか出来る傷ではない。
「シドー……」
「ッ!先生!話すな、今血を止めてやる!」
そう言うシドーの手にイブは弱々しく手を重ねた。
「これが渡しかったんだ」
彼女はそう言って一枚の透明な板を渡した。
「これに電気を流せば情報を取り出せるよ」
「先生!」
「そんな顔しないで。こうなる事も想定済みさ……それに私のバックアップはちゃんと取ってある。私はただこの身体を使い切るだけさ、またすぐに会えるよ。この世界でね」
なんともイヴらしい励ましだ。
「……分かった!必ずこの世界で会おうな先生!」
「それでは少しばかり休むよ、この身体は疲れやすくていけないや」
この言葉を最後にイヴは目を閉じ、二度と開ける事は無かった。
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