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No.94 秘密の扉の先へ


 高級介護施設にシドー達が潜入して2日目、プライスが内見役としてその施設にやってきた。


「身分証の確認が終わりました。お待ちしておりました、ベスト様」


「どうも、いやぁ〜ここは本当にセキュリティがしっかりしてるね。国会議事堂レベルじゃないかな」

 施設に入り案内係の者と話すプライス。


「利用者様の安全を確保するためです」

「それは安心できるね」

 そう言ってプライスは相手の手を見た。真っ青な手袋がつけられている。


「その手袋は?もしかして何か作業の途中だったのかな?だとしたら悪いね、中断させてしまって」

 

「え?ああ、いえこちらは衛生上の観点から私達がつけているだけです」

「つけてない人もいるみたいだけど」


「私達は業務で入居者様の対応からデスクワークと、色々なものに触れる機会がありますので。勿論、専門のスタッフであっても殺菌消毒は徹底しております」


「確かに全員が全員手袋してたら、ちょっと堅苦しいというか人のぬくもりが感じられないもんね」

 納得した素振りをみせるプライス。


「ではまずこちらから……」

 彼女は案内係の後をついていく。



「私はまず普通通りに案内される、途中で私は調理場をみたいと頼んでみるよ」

 施設の図にある調理場を指差すプライス。


「ちょうど怪しい通路の反対側か」

「そう、そっちに人を引き付けるから。その間に皆は通路を調べてみて」



 案内は入居者の共有スペース、寝室、レクリエーションルーム等基本的なものを見て回るものだった。


(案内ルートは最小限、あまりジロジロ中を見させないようにってことかな?まあ人が住んでる場所だし分からなくはない。それに……)


 プライスは案内されながら施設の図を思い出す。


(あの怪しい通路には近づかせないようにしているあたり、やっぱり何かあるんだろうな)



「ここまでに何か質問等ございますか?」

 そう聞かれるとプライスは手を叩く。


「あーそうだ!そうだった!うっかり忘れてたよ、調理場を少し見せてもらえないかな?うちの母は食の安全性とかにうるさくてね。もう今自分が口にしてるのが朝食なのか昼食なのかも分からないのにだよ。そこだけはうるさいんだ」


「畏まりました、ご案内します」


「案内されて、そのあとは?」

「こうするんだ」

 キビに向かってニヤリと笑うプライス。



「うっ……!」

「ベスト様!?」

 調理場付近に来た所でプライスが突然胸を抑えて倒れる。


「ああ!心臓が痛い!爆発しそうだ!」

「なんてこと、誰か!急病人です!早く来てください!」

 案内人は少し戸惑いながらも助けを呼んだ。


「私が騒ぎを起こしている間に頼んだよ」

「典型的だが良い作戦だな。自分たちの施設内で将来の太客に何かあったら大事だからな」


「そういう事」

 プライスの作戦を聞いてシドーは関心した。



「よし、ついたよ」

「私が持たせたペンあるよね、ペン先をつまんで引っ張ってみて」

 シャーロットが無線でジーナ達に指示を出す。


 流石に連日整備士が来るのは怪しまれる可能性があるため、当日シャーロットはウルルとアンジェラと共に、施設近くの駐車場に止めている車の中で待機していた。


「おーなんか横から画面が出てきた」


 シャーロットに言われる通り持たされたペンを操作する。ペンはアンテナのように伸び、ペン側面から極薄のモニターが現れた。


「それで壁の向こう側にある空間を調べられる。窓がない方を調べてみると良いよ」



「シャロちゃん凄いね、あんなのを作れるなんて」

 シャーロットの後ろでアンジェラがそういう。


「学校に秘密基地作ろうとした時にユキチカと考えたの。壁の厚さや材質を測る為のものなんだ」


「へー……ん?」

「いやダメですよ、勝手に学校を改造するのは」

 運転席にいるウルルが注意した。 


「おい、あったぞここだ。色が違う」

「ぱっと見はボタンもレバーも無いな」


 シドーが空間を探し当てる、一見すると他の部分と変わらない壁だ。


「やっぱり指紋認証だね、ジーナお願い」

「了解」

 シャーロットの指示を受けてジーナはポケットから青色の手袋を取り出した。

 

「その手袋!」


「衛生的に手袋は使い捨てのほうが良いもんね。社員専用の場所やゴミ箱は私達には触れさせようにしてる。けどこれだけ人がいるんだもの、手袋ぐらい良いだろって公共のゴミ箱に捨てちゃう人の1人ぐらいはいるもんだよねー」


 手袋を裏返し、そこから指紋を採取するジーナ。

 

「ヒューマンエラーだな」

 キビがそう言ってジーナと場所を代わる。


「そういう事です……よし!開いたよ」

 採取した指紋を壁に当てる、すると壁が動き出し、秘密の通路が現れた。


「また"だんじょん"か」

「そうだな、ジーナちゃんは真ん中を頼む」

「はい!」


 3人は秘密の扉の向こうに入っていく。




 扉の向こうにある階段を下る3人。


「シャーロットちゃん回線の状況は?」

「良く聞こえてる。地下でも問題なさそう」


 階段の先についた3人は周囲を警戒しながら先に進む。


「来る前に間取りは見ていたが、本当に広いな」

 先頭を進むシドー。


「ここに入った従業員がカメラに映っていなかった時間を考えると20分は行って出てくるのに時間がかかるって事かな。どれだけ奥にいるんだろう」


 そのまましばらく進むとシドーが止まる。


「待て、誰かいるぞ」

 シドーはそう言って2人を立ち止まらせ、懐から包丁を取り出した。


「そんなものどっから!」

「昼食食べそこねたばあさんに飯を運ぶ時に厨房に入ったんだ、その時に拝借した。使わずに済んだら後で返すよ」


 彼はジーナにそう答えながら、包丁の反射を利用して通路の先の状況を見る。


「関所みたいな感じだな」

「セキュリティゲートって事はあそこ以外に通る道ないのかな」

 ジーナが横からそれを覗き込む。


鉄格子の扉とそこの開閉を操作する部屋のようなものがみえる。


「正面突破といくか?」


「それは最後の手段にとっておきたいな」

「確かに、なにかないかな」

 キビとジーナは他に手が無いか探してみる。


「ああ、こういう時は……ダクトを通るのがお約束ですよね」

 ジーナはダクトを見つけた、通気孔も簡単に外せそうだ。


「頼んだぞジーナちゃん」

「ちょっと行ってきます」

 外した通気孔から中に入るジーナ。


 彼女はセキュリティゲートの側を通った。


「ふぁーあ、今日も何もないね」

「そりゃそうでしょ」

「そういえばさっき扉開けた通知来なかった?」

「そういえば。昼の時間にはまだ少し早いね、宅配の人が早く着いたのかな」

「まあそのうち来るでしょ」


 随分とのんきな警備員2人がそこにいるようだ。


(やる気ない!まあこんな所に忍び込もうなんて奴早々いないか)

 ジーナはダクトの中を進む。


「そのまま進んで」

「了解」


(思いつきで入ったけど、結構埃っぽいな。アクション映画の主人公もこんな気持ちで潜入してたんだろうか……)

 

「そこだよ!」

 シャーロットから指示が入るとジーナは側にある通気口を外し、下に降りた。


「おや、お客さんかな」


 降りた彼女を見てそう呟く者が一人。


「あなたが……」

「どうも、初めまして埃被りのお姫さま」


 そこには車いすに座った女性がいた。



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