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No.92 本体はどこに?


 イヴが取り出した記憶を回収するため最難関ダンジョンに挑み、今は図書室と呼ばれるエリアで目的のものを探すウルルとシャーロット。


「データ、データ、何か目印とかある筈、分かってる人ならすぐに気づけるようなもの……記号、暗号……」


「それにしても本はしっかり並べられているんですね。こんなにホコリや蜘蛛の巣などあるのに」

 ふと本棚をみているウルルがそう言う。


「並んでる?」

「本が全てアルファベット順に並べられているんですよ」

 彼女が言う通り本は綺麗にアルファベット順に並べられている。


「流石ウルル。本の内容しかみてなくて並びは全然気にしてなかった……。ねぇウルル!並びでおかしい所ない?」


「おかしい所ですか、分かりました!」

 シャーロットが何を考えているのか分かったウルルは駆け出して本の順番を確認していく。


「ありました!ここHとEが割り込んでいます」

「ハヴァとイヴ、なるほどね」

 2人はその本を取り出すとその奥に1枚の紙が貼られていた。


「これでしょうか」

 ウルルがその紙に手を伸ばした。


「大正解ーー!おめでとー!」

 触れた瞬間パーティクラッカーと共にイヴが現れた。


「うわ!イヴさん!?」

「やあ、久しぶり、いやあんまり時間経ってないかな?よく見つけてくれたね!」

 パーティクラッカーを鳴らすイヴ。

 

「こっちに来れるなら最初から来てくれたら良かったのに」


「それは無理なんだよーシャロちゃん。この記憶へのアクセスにロックかけてるから。取り出して貰えないとアクセス出来ないんだよね」

 イヴはそういって手のひらサイズの光るキューブを生み出す。


「さて、この情報を渡すね」


「ハヴァさん?」

「イヴさん!?」


 騒ぎを聞きつけて戦っていたアンジェラとジーナがやってきた。


「おー!アンジェラちゃんにジーナちゃん、久しぶり!アンジェラちゃんはゲームだとアーラちゃんだったね!」


「ちょっとアーラちゃんの設備借りるね」

 イヴは光キューブを広げて何かを操作し始める。


「うわ!」

 するとプライスの声が。


「お母さんどうしたの?」

「なんかこっちの機材が勝手に動き始めて……このセキュリティを突破したの?!」


「プライスくん、あなたのセキュリティソフトめちゃくちゃ良い感じだから落ち込まないで。私はちょっとズルしただけだから」

 現実世界の方にもホログラムのイヴが現れる。


「えっリリィさん!?いや、感じが違う」

「そのデータ後で皆に渡しといてね」

 戸惑うプライスにそう伝えるイヴ。


「おっと、そろそろセキュリティが気づく頃だね。ここを出ようか、ついでにこんなクソダンジョンは吹き飛ばしちゃおう!ついてきて!」

 そういってイヴは走り出す。


「えええ!?」

「ユキチカの姉さんって感じがするな、まったく」

「本当にね!」

「いきましょうアンジェラ様!」

 アンジェラを連れてイヴの後を追うジーナ達。

 


最初の部屋に戻るとシドーとキビはボスとは違う敵を相手にしていた。


「2人共!ってボス倒してる!?」

 横たわっているボスをみて驚くアンジェラ。


「今2人が相手にしてるのって」

「セキュリティだね、普通じゃセキュリティには太刀打ち出来ないけど。流石は歴戦の2人、アンジェラちゃんの装置の性能が良いおかげでもあるね」


 迫りくるセキュリティ達を倒していくシドーとキビ。 


「先生!?」

「ってことは見つかったんだな」

 2人もイヴ達に気づく。


「さあ脱出だ!」

 イヴと共に皆はダンジョンから飛び出す。


「よーし吹き飛べ!」

 イヴがどこからともなく取り出したスイッチのボタンを押す、するとダンジョンは跡形もなく吹き飛んだ。




「いやぁおつかれさま。迅速な対応感謝するよ」

「ああ、ここは現実か?」


 ゲームの世界から現実世界に戻ってきたシドー達。


「それじゃあ持ち出したデータを見てみようか。おっとその前にアンジェラちゃんのプライスさん、このデータを見たら色々と知りたくない情報も知ることになるかもしれないけど大丈夫?」

 念のためにイヴは2人に警告の意味を込めて質問する。これらの情報を知れば2人も危険に晒される可能性がある。


「ウルルちゃんが巻き込まれているなら、私は出来る限り助けたいわ」

「皆には返しきれない恩がある、構わないよ」

 アンジェラとプライスはそう答えた。


「分かった、まずは自己紹介と状況の説明から」

 イヴは2人に自分の事と現状を簡単に説明した。


「ハヴァさんはイヴで、ウルティメイトがずっと隠してた人物」

「それと仮面の男はヴァーリ、そいつが1番危険な人物なんだね」


「それでこの施設に私の本体がいる」

 施設の映像を見せるイヴ。


「本体ってことはあなたは?」


「私は昔に作ったバックアップ、君たちに会ったことは本体には伝わってない。そんな事をしたらヴァーリにバレるからね」


 イヴはホログラムで一人の女性を映し出す。その女性はアンジェラにそっくりだった。


「これができるのもアンジェラちゃんのお母さんのお陰だよ。私の頭の中にあった理論を実現してくれた」


「……」

「そうだったんだ、やっぱりお母さんはすごい人だったんだ」

 アンジェラはそう言った、プライスはただ黙っていた。


「彼女のことは残念だったけど……」

 イヴは謝ろうとした、しかしその言葉の前にアンジェラが笑顔になる。


「大丈夫!私にはもう一人すごいお母さんがいるもの。お母さんの事を教えてくれてありがとう」

「アンジェラちゃん……!」


 そう言われてアンジェラがプライスに抱きつく、思わず涙を流すプライス。


「君は私が思っているよりずっとしっかりしているみたいだ、素晴らしいよ」


「うっ……いい話だな」

「涙もろいんだなあんた」

 シドーはキビの隣でもらい泣きしていた。


 


「本体はこの一連の事を直接は知らないんだな?」

「会えたら大体察すると思うよ。この施設はプライスさんなら知ってるよね?」

 イヴがプライスに聞くとプライスが頷く。


「高齢者用の介護施設だよ。それも超富裕層向けのね……私が会社を立ち上げて初期に関わった所だ」


「高齢者の介護施設?」

「私達の時代はそんな長生きする高齢者は少なかったからね。平和な世の中になってそういう人が増えたんだ」

 首を傾げるシドーに説明するイヴ。


「そんなの近所の人や、それこそ家族が見ればいいだろう?いやそうか、この世界じゃそんな簡単に人が増えねえから爺婆の面倒見るのも一苦労か」


「少子高齢化社会って言うんだよ先輩」

「戦争がなくても問題は山積みか」

 キビが後ろからシドーに言う。



「話を戻してっと、この施設に入るにはどうしたら良い?プライスさん」

 イヴがプライスに聞くと彼女は唸る。


「簡単じゃないよ、なにせ内見するにも厳しい審査があるくらいだからね」


「詐称するなら得意な奴を知ってるぞ」

「キビさんあんた警官なんだよな?」

「ベテランの凄腕の刑事って評判だ」


 笑ってシドーの発言に返すキビ。


「あ、施設で一つ思い出した。これって私もいじれますか?」

「どうぞ」

 イヴが出したホログラムに触れて操作し始めるプライス。


「地下施設……作った時から妙だと思ったけど。当時はこんなデカイ案件を逃すわけにはって深くは考えないようにしてたんだ。でも何かを隠しているならここだと思う」

 彼女は施設の地下に広い空間を作ってみせる。


「細かい設備は変わってるだろうけど、地下の構造自体は変わってないと思う。は利用者全員外に出したりとか色々大掛かりなことしないといけないからね。そんな事をしたらウチは地下に怪しい施設つくってますよーって宣伝するようなものだし」


「お母さん地下の構造は覚えてるの?」

 プライスは頷く。


「頭に入ってるよ。滅茶苦茶しんどかったからねこの仕事。二度と地下開発関係は安請け合いしないと決めたきっかけだよ。時間を少しもらえたら当時の仕事で使ったデータが残ってるはずだから、それを皆に後で共有するよ」

 


「構造は分かる、身分詐称も可能と、だけどそれでも問題があるよ」

「問題って?」

 キビがプライスに聞く。


「聞いた所、皆はウルティメイトの施設に侵入したんでしょ?確実に要注意人物のリストに入ってるよ。私達もきっと前の件でリスト入りしてるだろうし。連中持ってるよそういうの」


「私なら顔のパーツを変えれば……」

「ウルルちゃんは施設に入る前の検査でアンドロイドなのバレちゃうよ」


 アンジェラの言うことは最もだ、ウルルは型番号などもあるため最もバレやすい存在かもしれない。


「やっぱりそうですか……あ!皆様には対処法があります!いえ、厳密にはその可能性がありそうという話ですが」


 ウルルはポケットからクリームの入った瓶を取り出す。


「ユキチカ様が作られたクリーム。瞬時に人の皮膚を生成できるこのクリームを使用すれば、一定時間であれば顔を変える事も可能かと」


「ユキチカ様が損傷された際に備えて持っていたんです。まだ予備が家にあります」

  それは以前メンハギ事件の際、ユキチカが被害者の皮膚を治す為に使用したものだ。


「いいね、それじゃあ本格的に潜入作戦の計画を練ろうか」


 皆はイヴが囚われている施設に侵入するための作戦を立て始めるのであった。



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