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No.84 悲しき天才たち


「連れてきましたよイヴ博士。例の彼ですよ」

ダイキはヴァーリに連れられ施設の奥にあるイヴのオフィスに案内された。


「イヴお姉ちゃんだ!」

「え?お知り合いですか?」

ヴァ―リの後ろからダイキが顔を出す。


「ああ、そういえばこの間あったね。そこに座って」

イヴはテーブルの上にある資料を片付ける。


「ヴァーリ、仕事に戻っていいよ」

席に座りコーヒーを飲むイヴ。


「……分かりました、では彼を頼みましたよ」

そう言われたヴァ―リは素直に部屋を後にして自身の持ち場に戻る。



 部屋に入るとダイキは鼻をつまんだ。

「……」

「なにしてるの?」


「くさい」

「っぐ、もっとオブラートに包んでくれないかな。タバコの煙とチョークとコーヒー、あとは洗ってない洗濯物や何日か風呂に入り忘れた私しかこの部屋にはないんだがな。そんなにひどいかな?」

文句を言いながらイヴは部屋の換気をし始めた。


「これは?」

今度はテーブルの上においてある機械に興味を示すダイキ。


「それは私のコーヒーマシン、飲む?コーヒー、砂糖とミルクは」

「あまいの!」

イヴはコーヒーに砂糖とミルクを入れる。


「いただきます!」

ダイキはそれを一口飲むがとても苦そうな顔をした。


「ありがとうございます……」

「チョコで喜ぶお子様にはちょっと早かったかな?その味が分かれば君は大人の仲間入りだ。そして四六時中飲むようになれば、おめでとうカフェイン中毒者の仲間入りだ」


イヴは砂糖とミルクが入った容器をダイキに渡す。

彼はそれをなみなみになるまでコーヒーにいれた。


「もうコーヒー色の砂糖ミルクだな」

「おいしッ!あ、これ使っていい?」

ペンと紙を指差してダイキは言った。


イヴはペンと紙を渡す。


「〜♪」

鼻歌を歌いながら彼はなにかを紙に描き出した。


紙に描き出されたのは設計図のようなものだった。それをみてイヴはコーヒーメーカーを彼の前に置く。


「これの設計図だ」

「みんなにあげる!」

ニッコリ笑うダイキ。


「これあげる。使い方の説明はもう要らないよね」




 夜になり、仕事終わりのヴァーリが部屋に様子を見に来た。ダイキはとっくに帰っていた。


「いかがでしたか?ダイキくんは」

イヴはオフィスを片付け、机を用意していた。


「イヴ博士、模様替えですか?」


「彼は明日から私の助手にする」


「えっ?!」

ヴァーリは目を丸くする。


「みてこれ彼が描いたの」

一枚の紙を取り出すイヴ。


「これは、設計図ですか?そのコーヒーメーカーの?あれ、でもそれって」


「そう、これは私が自分が1から設計したもの。独自の機能や機構を取り入れて、私が思う一番美味しいコーヒーを自動で淹れてくれる装置。彼はこれをみていきなりそれを描き出した。それなのにネジの一本間違えることなく正確に図面におこしてる」

彼女は他にも何枚か紙をみせた。


「それは……!?」

ヴァーリは驚愕し、その紙を自身の眼前に引っ張り寄せる。


「これは、研究開発中の……!?まさか見せたんですか?なんて危険な事を!」


「見せたのは外見だけ。それだけで彼はそれを描いた、外見だけでなんの為の物なのかとかは一切教えてないのに」

イヴは椅子に座る。


「彼の才能は私以上、いや、もはや才能という言葉で表現していいのかすら怪しいレベルの代物だよ。彼は私達と決定的に何かが違う。彼に適した環境さえあればこの計画が完遂されるのもあっという間だろうね」

イヴはタバコを取り出す。


「だから彼を助手にする……ヴァーリってタバコ吸ってたっけ?」

タバコに火をつけようとするが止めるイヴ。


「いえ、私は酒もタバコもしません」

「そ、とにかくあの子は助手にするから。みんなにも伝えておいて」

そう伝えてイヴは取り出したタバコを箱ごとゴミ箱に捨てた。




「けっこう強引なタイプなんですね」

「意外、あと部屋汚いのちょっと親近感……」

話を聴いていた慈七とシャーロットは感想を言う。


「ははは!確かに思えばかなり無茶を通していたね。部屋に関してもお恥ずかしい限りだよ。自分の身の回りなんて全然気にしてなかったからね。それもあの子にあったおかげかな、彼に会ってからは本当に色々変わったよ」

イヴは笑う。


「彼は私と違って、才能を発揮する場所を求めてなんかない。山で一緒に暮らしてた動物たちがもっと安全に確実に食糧や住まいを得られるように、村では皆の生活が良くなるように、常に誰かの為だった」

そう言ってイブは微笑む、とても優しい表情だ。


「彼のおかげで私も自分の才能が人に大きな影響を与える事を再認識できた。そして、自分が行っているのがいかに愚かな事かもね……」




「こんな子どもを研究に参加させるなんて」


 イヴがダイキを助手にするという話を聞いて、反対する者も少なくはなかったが、それもすぐに受け入れられていった。最初こそ反発していた者達も、きづけば一緒に昼食をするくらいの仲になっていた。


「ダイキ!コインについて面白い話をしてやろう、眼球くらいしかないこのコインを純粋なエネルギーに変えたらどれくらいのエネルギーになると思う?」


食堂で彼とテーブルを共にした陽気な研究員の1人がダイキに話しかける。


「?」

昼ごはんを頬張りながら彼は首を傾げる。


「正解は爆弾並のエネルギーになるのさ!それもただの爆弾じゃないぞ!原子爆弾すら凌駕するんだ!どうだ凄いだろ!」


「すごーい!」

ダイキが喜んでいると、隣に座っていた女性研究員がその陽気な男性研究員に注意した。


「ちょっと子どもに何教えてるの!それに不謹慎でしょ!この国の子にそんな話!」


「確かに……今のはいいチョイスじゃなかった。ごめんなダイキ」

「いいよー!コイン面白いね!へー」

ダイキはポケットからコインを取り出してみる。


「ありがとうな、ほんとうにお前はいい奴だな。にしてもあんなものを使っちまうなんて、戦争なんてバカな事を始める連中は流石だよな頭のなかどうなってんだ。その時代に生まれてなくてよかったよ」

コインの話をした男性研究員は手元のコーヒーを飲み干してそう言った。


「でもそんなバカな連中が今度は核を撃ち合う一歩手前まで行ったんだ。この先も分からないよ、どうなるか」

他の研究員がそう話す。


「なんで使っちゃいけないのに作ったの?」

ダイキが聞くとみんなは一瞬黙った。


「あー、そうだな……つまりこういう事だダイキ、バカな連中の願いを叶えられる悲しい天才がいたんだ。そいつらは天才過ぎてバカな願い以上のものを作れちまったんだ。ダイナマイトも最初は人々の仕事を楽にするためだった、でもそれをどっかのバカが争いごとに使いやがったんだ」

コインの話をした男性研究員がそう言う。みんなは浮かない顔をしている、ダイキはうんうんと頷いて聞いていた。


「な、なあダイキはこの仕事好きか?」

彼はダイキに聞くとダイキは大きく頷いた。


「うん!だってみんな喜んでくれるんでしょ!それにみんなと一緒におしごとするの楽しいよ!」

すると彼は何かを思い出すように上を見上げる。


「あー、でも本当はシドーにもお話してあげたい。でもここでの事はないしょって言われてるから」


「そう、ちゃんと約束を守ってくれてるのね。ありがとう」

ダイキの頭を隣に座っていた女性研究員が撫でる。


「ダイキー、時間だよシドーが来てる」

話しているとイヴが現れ、ダイキにそう伝えた。


「そうか今日は午前中だけの日か」

「それじゃあおつかれさま!ダイキ」


「ん!ごちそうさまでした!みんなまたねー!」

彼は食器を片付けイヴの後を追いかけた。


「ダイキくんが来てくれて良かった。今のイヴ博士凄く良くなったよね」

「前までは少しの静電気で破裂する風船みたいだったからな」

「タバコを止めたんだって?それにちゃんと毎日シャワー浴びてるんだって。子どもって偉大だな」

去った二人を見て研究員がそんな話をする。


「はぁ……にしてもさ、彼を騙しているのが辛いよおれ。おれたちが今まさに”悲しき天才”になろうとしているのを知ったらダイキ……」

「悲観的にならないで、人々の役に立つかもしれないじゃない」

そう言われコインの話をした男性研究員が立ち上がる。


「上の連中がそんなこと考えてるもんか!連中の頭にあるのは自分の金や地位を守ることだけだ!力を手に入れてその結果どうなるかなんて考えてない。このコインをエネルギーに変えられたら、世界はもうエネルギーに金を払わなくて済む豊かな暮らしがやってくるだろうよ。でも連中はそれを聞いてきっとこう思うだろうさ”小型の超強力な爆弾が出来た!”ってな!違うか?」

彼の言葉に誰も反論できなかった。


  ダイキが施設で何をしているかは村の者は知らなかった。せいぜい知っているのは、学者先生達と仕事をしているというくらいだ。だがシドーを含め村の者達にとってはダイキが楽しんでいるのが分かればそれで十分だった。だから彼らに質問する事もなく、常に彼らを快く受け入れてくれた。


 悲しき天才達にとってそれが何よりも辛かった。



ここまで読んで頂きありがとうございました!

今後も投稿していこうと思うので評価、コメントなどして頂ければ励みになります!

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