No.80 追放
「お姉ちゃんたちをいじめるなッ!!」
ヴァーリの背後からユキチカが現れ、握りしめた拳を放った。
「グッ!?」
殴り飛ばされたヴァ―リは火炎放射を止め、倒れた。
「妙だ、なぜ殴られるまで君の存在を忘れていたんだ?最も注意すべき相手だと言うのに。いくら私が浮足立っているとは言え、考えにくい」
ヴァ―リは頭を振って立ち上がる。
「そこの刑事も完全に忘れていた。君が何かしたのか?」
「お姉ちゃん達いじめちゃダメッ!」
ユキチカがヴァ―リに怒り、彼に向かって走り出す。
「ありがとうユキチカ」
炎に足止めを食らっていたイヴもヴァ―リ目掛け走り出す。
「君ら二人を同時に相手取るのは面倒だ。しかし、ここでなら話は別」
二人を交互に見てヴァ―リは言う。
「フィールド展開ッ!!」
彼の周囲に防壁が展開される。
ユキチカとイヴがその壁に衝突する寸前で手を前に突き出す。
「「ブラスト!」」
両者の手から衝撃波が放たれる。
二人は防壁をその衝撃波で粉砕し、ヴァ―リに接近。
「なにッ!だが」
ヴァーリはすぐに二人に向けてアーマーに装備されている銃を発砲。
二人は銃弾を腕で防ぐ。
(やはりそうか、イヴ……)
「来いッ!我が兵隊ども!」
ヴァーリがそういうと地面からアンドロイドが複数体現れる。
「当たり前のように、戦闘用に改造されてるね」
イヴが相手の武装をみてそう言った。
「あ、それカオルちゃんに見つかったら怒られるよ。ぼくもやったけど」
ユキチカは相手の攻撃をかいくぐりながらそう話す。
「とりあえず殺傷能力のある銃器の搭載させただけ、相変わらずセンスが無いね」
イヴも余裕そうだ。
相手は銃火器に戦闘用の装甲を搭載していたが、どれもユキチカとイヴには効果は無かった。銃弾は避けられるか防がれ、装甲すら彼らの対アンドロイド用の装備の前では無意味だった。
(装甲内部に直接電撃を与えているのか。想定よりも時間を稼げんな)
「すご……」
「さすがの私もあそこまでの戦闘性能は持ち合わせていません」
シャーロットとウルルは、ただこの光景を見ることしか出来なかった。
「どのみちそいつらでどうこう出来るなど思ってない。行けッ!」
彼の号令と共にアンドロイド達はユキチカ達に飛びつく。
「こんなのでも多少の役には立つだろ」
ヴァ―リが手首に装着されていた端末を操作する。
ユキチカとイヴにしがみついたアンドロイドが”ピーッ”と警告音を発した。
「これは……よくないね」
「ぼかーん?」
直後アンドロイドは自爆。ユキチカとイヴは爆発の衝撃で崩落してきた天井や壁の残骸の下敷きになってしまう。
「足止め程度にはなるか。やはり脆い所から崩すべきだな」
ヴァ―リは再び端末を操作した。
他のアンドロイドも同様に甲高い音を上げる、次の標的はシャーロットとウルルに設定されたようだ。
「申し訳ありません、シャロ様。あの爆発に耐えうる装甲は」
「分かってる!一旦引いて態勢を立て直そう!あの爆発程度じゃユキチカとイヴさんなら大丈夫!」
シャーロットとウルルは退く事に。
「えらく判断が早いな。だが逃げられるかな?」
ヴァ―リの言う通り反対側からもアンドロイド達が迫って来ており、到底逃げられるような状況ではない。
「ちょっとこれはヤバいかも!」
「シャロ様は私の後ろに!」
挟まれた二人は壁際で立ち止まる。
「うおりゃァァァァ!!」
アンドロイド達がすぐそこまで迫ったその時、ジーナが壊れた壁の一部でアンドロイド達を押しのけて現れた。
「ジーナ!!」
「ジーナ様!!」
「二人とも大丈夫?!うわ、ウルル怪我してるじゃん!」
ジーナは二人に駆け寄る。
「ええ、損傷はしたもののご心配には及びません」
「ジーナこそあのキリサメと戦ったんでしょ?大丈夫?」
「あー、大丈夫、ん?向こうのデカいメカがヴァ―リ?」
二人の状態を確認して慈七はヴァ―リの方に目を向けてそう言った。
「あれはアーマーで中身がヴァ―リ・ジョーンズ。イヴさんとプライスさんが言ってたウルティメイトの本当のトップ、仮面の男。それに加えてユキチカの身体を持ってる人だよ」
「え!ユキチカの身体を?どういうこと!?」
「説明はきっとイヴ様からして頂けるでしょう。とにかくあのアンドロイドから逃げましょう」
「あ!そうだ今のうちにウルル、ちょっといい?」
シャーロットはそう言って何かを準備し始める。
「続々と来るな。まあいい」
ヴァ―リがそう言うと瓦礫を押しのけてイヴとユキチカが出て来た。
二人とも所々の皮膚が無くなっており、その下に金属のようなものや発光する部品が見えている。
「皮1枚程度か。やはりここは……」
ヴァ―リが端末を操作する事によって周囲にいた全てのアンドロイドが自爆態勢へと入る。
「君ら二人はなんとかなるかもしれんが。他の生身の人間はどうなるかな?」
大惨事を期待していたヴァ―リ、しかし警告音が止まり何故か爆発は起きない。アンドロイド達は一斉に地面に倒れた。
「なにが起きた?」
ヴァ―リは周囲を見回すがもう起動しているアンドロイドはいない。
離れた所でシャーロットが喜びの声を上げた。
「やった!ウルルを介してこの施設にいるアンドロイドのシステム乗っ取ったよ!」
「あの子達を過小評価してたみたいね。ヴァ―リ」
イヴはそう言った。
「まさかこの短時間、今後の改良リストに加えておこう。この場は……そうだな」
ヴァ―リは一番近くにいたアンドロイドの頭を掴む。
「直接起爆させるしかないようだな」
彼が掴んだアンドロイドが再び警告音を発する。そのアンドロイドをヴァ―リはウルル達目掛け投げようとする。
「みんな逃げてッ!」
イヴが振り向きそう叫んだ、その時だ。
「させないッ!!」
ユキチカがヴァ―リに体当たりし、押し出した。壁を破壊しながら、ユキチカはその場から彼を遠ざけていく。
「なるべく仲間から遠ざけようと言うのか?健気だなッ!!」
ヴァ―リはアンドロイドを爆発させる。ユキチカは爆発の直撃を受けるものの一切力を緩める事無くヴァ―リを掴んでいた。
二人は大きな扉を破壊した。
縦に広がった空間があらわれる。
(貨物用エレベーター、もうこんな所まで)
二人は空中に飛び出した。空中に放り出されたヴァーリをユキチカは両足で挟み込む。マウントポジションへ持っていき、両掌をヴァーリに突きつける。
「先の衝撃波かッ!無駄なことだ。先の爆発で君は薄皮1枚程度とはいえダメージを負った。だが私のアーマーは無傷!通用せんよ」
「10倍なら?」
ユキチカの両腕が機械仕掛けの大筒に変形した。
「脅しが通じるとでも?そんな事をすればこの体だって無事ではすまんぞ」
するとユキチカがうーんと唸る。
「こういう時なんて言うんだっけ、えーっとお父さんが言ってた……そうだ!」
「お前が幸運かどうか試してみるか!」
ユキチカの腕の光が強くなる。
「待て!自分の体がどうなってもいいのかッ!」
「バニッシュメントッッ!!!」
ユキチカは一切の躊躇なく両腕に圧縮したエネルギーを衝撃波として放つ。衝撃波は貨物エレベーターの周囲の壁やエレベーター用のケーブルや照明、全てを破壊する。
「ガ……アッ…!!」
ヴァ―リのアーマーは砕け散り、そのまま下にあるエレベーターへと激突。
「あれ、これじゃなかったけ?」
そんな事を言いながらユキチカも降りて行った。
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