No.69 誘拐されたアンドロイド
AIを信仰する団体、デウス・エクス・マキナに体験入会したジーナ。
その団体の司祭である人物とジーナが話をしている間になんとウルルがいなくなってしまったのだ。
ウルルの行方を追うと監視カメラに彼女と手をつなぐ少女の姿が。
「マズイな。この子か……」
「彼女は?」
司祭プライスにジーナが少女を見て言った。
「アンジェラ、私の娘だ」
「娘という割には少しよそよそしいですね」
「まぁね、色々あって彼女とはあまりまだ打ち解けてなくて」
「どこに向かったか分かりますか?」
ジーナの質問に対してプライスはすぐに画像を出して答える。
一軒家が映った画像だ。
「きっと別荘だ。嫌な予感がする、しかし私は監視されてる身だ。ここから勝手に出られない。どうするか」
プライスはため息をする。
「うーん……ん?」
何か策は無いかと考えるジーナ。すると部屋の端に転がっている大きなバッグに目が止まった。
DEMとロゴが入り、プライスの写真がでかでかとプリントされたT-シャツが大量に詰まったバッグだ。バッグの前に行くジーナ。
すると部屋の扉をノックする音が。
「ああ、もう昼の時間か。重役出勤するとお昼がすぐに来るから良いよね」
「こちらご注文の品です。おや、この子達は?」
「ああ、この子達は体験入会でね」
「どうも、うわーこのTシャツ良いなぁ」
昼食を運んで来た人物に顔をみられないように、ジーナは背を向けたまま話す。
「そ、そうなんです。本当だ、いいねこれ」
シャーロットも不自然に思われないように、顔を背けながらジーナの元に行く。
「そうですか、それでは失礼します」
部屋からその者が出ていった。
「そうだ、アイデアを出す為にエネルギー補給するかね?ここのチャーハンと照り焼きチキンは中々いいぞ。私は決められた店の出前しかここでは食べられなくてね」
そう話すプライスに目を向けるジーナ。
「プライスさんって結構小柄ですよね」
「え、いきなりどうしたの?」
それから少しして、ジーナとシャーロットが教会の外にいた。
「タクシー!」
ジーナがタクシーを止める。
「荷物あるんですけど後ろ開けてもらっても良いですか?」
トランクを開けて貰い隣にあったバッグを丁寧に入れるジーナ。
「目的地をどうぞ」
アンドロイドの運転手に目的地を伝える二人。
1時間程すると閑静な住宅地に到着した。
家は幾つもあるが電気がついている家は少ない。
別荘に特化した地域なのだろうか。
「到着しました」
「ありがとー」
トランクから荷物を下ろし走り去るタクシーを見送るジーナとシャーロット。
「開けますよー」
バッグを開けるとすぐにプライスが飛び出て、道路わきにしゃがみ込む。
「うわぁ……大丈夫ですか?」
ジーナがプライスの背中をさする。
「はぁ、はぁ、昼ご飯、君たちに食べて貰っておいて良かった。まさか誘拐体験するとはね。最初はちょっとワクワクしたが普通に車酔いしたよ。胎内回帰の効果もそこまで強くないんだね。さぁ、待たせたね、早く行こう」
プライスたちは別荘へと向かう。
「アンジェラちゃんいる?ちょっとお話があるんだけど」
別荘の鍵を開けるプライス。
「誰もいない」
「電気が使われてる痕跡もないね。本当に誰もいないのかも」
家中を見て回るが誰もいないどころか、ここ最近使われている形跡すら無かった。
「でもここ以外彼女が誰かを誘拐して連れていける場所はないはず」
プライスは深刻な表情をして言う。
「なんでウルルを攫ったと思いますか?」
「分からないよ……もしかしてそのウルルというのは普通の人じゃなかったりする?例えばとんでもなく頭が良いとか」
シャーロットに聞かれたプライスは首をかしげる。
「あ、それで言うと」
「とても頭が良いのは当たってますがそれだけじゃなくて……アンドロイドなんです、彼女」
ジーナとシャーロットは一瞬見合って、ウルルがアンドロイドという事を明かした。
それを聞いたプライスは驚きを隠せない表情をみせる。
「アンドロイドだって?!いや……そうか、なるほど。これは思った以上にマズイな。早くタクシーを呼んで今から伝える場所に向かって!」
言われた通りにジーナはすぐにタクシーを呼んだ。
「彼女は君の友達を使ってある物を完成させようとしているんだ」
「ある物とは?」
シャーロットが興味深そうに尋ねる。
「私の友人である彼女の母親が残した仮想現実装置だ」
「ちょっと待って、彼女の母親って。アンジェラって子は」
「そうだ、私の実の娘じゃない。私の友人の娘だ」
プライス達は別荘の一室に戻り、そこのクローゼットを開ける。
「彼女の母は学友でね。よく一緒にテストの点数を競い合ったよ、まあ私が勝てたのは彼女の苦手な歴史や国語の分野ばっかりだったが」
クローゼットからカバーのかかった服を取り出す。
「この格好なら一緒に乗れるね。もうトランク経験は十分したから」
その服に急いで着替えるプライス。
「彼女は仮想現実の技術に魅了されていた。彼女はそれが鍵だと思ったんだ」
「なんの鍵?」
「人類が抱えるありとあらゆる問題を解決する鍵だ」
ジーナと話しながら服を着替え終えるプライス。
「もしも人間の精神を完全に仮想現実の世界に送り込めたらどうなるだろうか、物質的な肉体は要らなくなる。そうなれば物質的なしがらみの多くから人間は開放されるという事になる。老い、飢餓、病気に怪我が人生の障害リストから取り除かれ、他生物を虐げて生きる必要がなくなる。必要なのは仮想世界を制御するコンピュータだけだ。肉体は、まあバクテリアや微生物が喰って森の栄養にでもなるだろうさ」
「聞いた事はあるけど、それって可能なんですか?」
シャーロットが尋ねる。
「不可能とは言わない。だがかなり難しい問題がいくつもあるのも確か。その1つが制御するシステムだ。世界の制御だからね、極めて高度な人工知能にそれを支えるコンピューターが必要だ」
「もしかしてその装置にウルルを使おうって言うの?」
声を少し荒げるシャーロットに対して、頷くプライス。
「あ!来ましたよタクシー!」
「とにかく急ごう」
モニターが部屋を照らす薄暗い部屋で目を覚ますウルル。
「う、うう……」
「へぇーウルティメイトのブラックボックスに細工されてる。システムの最深部も色々と書き換えられてる。なにこれ、どうやったの?ウルルちゃんのお友達にはスゴイ人がいるんだね」
手術台のような物の上に横たわるウルル、その隣にはコンピューターを操作するアンジェラの姿が。
「アンジェラさんこれは、一体?」
「あ、おはようウルルちゃん」
アンジェラはニコッと笑う。
「アンジェラさんどうして私がアンドロイドだと」
「へぇー誘拐は良くないよとか、帰らせてって怒りだすかと思ったけど。そこ気になるんだね」
笑顔のまま話すアンジェラ。
「帰らせてと言ったところで帰らせてもらえる様子じゃないので」
「最初手首をつかんだでしょ、その時にあなたの脈をはかったの、でも脈はなかった。後ろから抱き着いた時も鼓動の音がしなかった。ならアンドロイドって結論づけるのは早計かしら?」
「なるほど、とてもシンプルで確実ですね」
「そう、物事はシンプルな方がいいの」
ウルルはアンジェラが操作している端末をみて話す。
「そう仰るのに随分と複雑そうな機械を触ってますね」
「貴女がそれを言うの?こんな複雑な知能を持ったAIなんて見た事ないよ、本当に人間と話しているようにしか思えないよ。疑似的な脈拍を作る機構でもあれば見分けがつかなくなちゃうね」
そう言ってアンジェラはウルルの頬を撫でる。
「私はね、貴女に私のお母さんになって欲しいの」
「お母さん?それは書類上の話ですか?血縁上では無理なので」
アンジェラは首を振る。
「そうだね、この装置でウルルちゃんは私のお母さんになるの」
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