No.62 賑やかな実家
鬼丸ヤスシの口から語られた、消えたユキチカの姉であるイヴの話。
それを聞いてシャーロットは自身の記憶を探る。
「シャロ、どうしたの?」
「もしかしたらイヴって人の情報知ってるかも」
シャーロットの発言にみなが振り向く。
「あーでも確証はないよ、それにそんな重要かも分からないし。あのね、ウルティメイトの施設で働いてる時にどのプロジェクトに誰が所属してるか調べたことがあるの。そこには必ず1人分の空欄があったの。わかんないよ、本当にその人か。でも重要そうな、最新鋭の技術が関わる開発プロジェクトに必ずその空欄があるの。他のプロジェクトにはそういうのはなかったの」
シャーロットの発言を聞いてMrs.ストレングスが顎に手を当てる。
「ほお、そりゃあ興味深いね。全てにその空欄が無いって事は別に会社の資料形式がそうなっている訳じゃない。空欄には必ず誰かの名前が本来入るはず。だが名前は記載できない、でも存在してないとは処理できないって事かね……」
Mrs.ストレングスがそういうと少しばかりの沈黙が流れる。
「ごめんなさい」
するとウルルが頭を下げた。
「ちょっとなんでウルルが謝るの?」
ジーナがそういうとウルルが頭を下げながら話す。
「ウルティメイトは私の生みの親でもあります。でも私はその親に関して何も知らない!お役に立てずにいる自分が情けないです」
「だからってそんな落ち込むこと無いじゃないか。知らないことは知らないんだ。あんたは普段からユキチカの面倒を見てくれてるだろ?それだけでも私達は安心さ」
Mrs.ストレングスはウルルの肩に手をおいた。
「で、でも……」
「ウルルさん!ユキチカが素敵な友達に出会えて楽しそうにしてるのも、貴女が身の回りのことをしてくれてるからだ!感謝してる」
ヤスシも笑顔でウルルにそういった。
「だからこれからもユキチカの事を頼んだよ!」
Mrs.ストレングスはウルルの背中を叩いた。
「は、はい!一所懸命つとめます!」
大きく押されたウルルはビシッと姿勢をただす。
ユキチカ達は施設の外に出ていた。
見送りでヤスシ、ブルズアイ、それとショットシェルも出ていた。
「そうだ、シャーロットちゃん、これ御守り」
見送りにきたブルズアイはポケットからネックレスを取り出す。
使用された弾頭と薬莢が2つずつ付けられたネックレスだ。
「外した弾。厄除け?的な弾が貴女に当たらないよう。金属アレルギーじゃないよね?」
そういってブルズアイはネックレスをシャーロットにつけてあげる。
この時ブルズアイはシャーロットに顔を近づけ、彼女にしか聞こえない小さい声で話しかけた。
「私は君のフルネームを知ってるよ。父親の事も」
「ッ!!」
シャーロットが目を見開く。
「やっぱり、隠してるんだね」
「どうしてそれを」
周りに聞こえないようにシャーロットが質問する。
「悪いがそれは言えない、うちの業界で雇用主の情報はあまりおおっぴらに言えないんだ。君ならそのうち出会えるんじゃないかな」
「……」
ネックレスをつけ終え、ブルズアイが離れる。
「それと君の銃の腕は中々良かったよ。将来仕事に困ったら私の所おいで、立派な殺し屋に育ててあげるよ。オススメはしないけどね、それじゃあ」
ブルズアイはそう言って笑顔をシャーロットに向けた。
それを見ていたショットシェル。
彼女はマチェット達のかわりに見送りに来たみたいだ。
「すまない、私はああいうのは用意してなくて」
「いいよ、気にしないで」
ジーナがそういうとショットシェルはジーナを抱き上げた。
「また遊びに来ると良い!ジーナとの戦いは楽しかったからな!今度は負けない」
「そう言ってもらえて何より。でも私はあなたとの戦いで身体ボロボロだから下ろして貰えると嬉しいんだけど、ってちょっ!?」
ジーナを抱きしめるショットシェル。
「ちょっと!本当に、マジで身体ボロボロだから!そんな強く、抱きしめないで……ぐえ!」
ジーナが開放された所でユキチカ達は船に乗り込み出発することに。
「またなァァァ!!いつでも帰ってこいよー」
目、鼻、口から滝のような別れの涙を流しながら、ヤスシは見送った。
「手続きめんどくさいから程々にな」
「ばいばーい」
キビとユキチカが手を振る。
その後ろでうなだれたジーナに、呼びかけるシャーロットとウルル。
「ジーナ、ジーナ!」
「ジーナ様!大丈夫ですか!?」
「な、なんとか、あの剛腕に絞め殺されずに済んだよ……」
こうしてユキチカ達は”賑やかな実家”から出発した。
ウルティメイト社最上階のオフィス。
そこではリリィがモニターに向かって何か話していた。
「どういうつもりですか。あの場所に送り込むなんて」
「鬼丸ユキチカの情報を盗み出そうとしたんだ。潜入させるまでは成功したんだがなー。ダメだったみたいだ」
どうやら話の相手は男性のようだ。
「紛争により身体機能を失った者、そんな彼女達が社会復帰できるように私達の技術で体の機能を復元するという話だったのではないですか?カイ・ザイクが行っていた改造手術を利用して、まさか人間兵器にするなんて。あなたの手駒にする為に彼女達を助けた訳じゃない!」
リリィの声に怒りの感情が乗る。
「珍しいな、君がそこまで感情的になるなんて。いつもは仕事を淡々とこなしてくれているじゃないか」
「私にも我慢ならない事はあります」
拳を握りしめるリリィ。
「彼女たちは生まれ変わった、失った体の機能、それ以上のものを手に入れたんだ。これからの時代を牽引するのは彼女達のような新人類なのだよ」
「そういって彼女達をそそのかして、殺したのはあなたみたいなものですよ」
余裕そうな相手の話し方がリリィの神経を逆なでする。
「私は生きて帰ると思っていた、結果は違ったがな。そういえば君はさっきこういったね、あの子達は私の手駒にする為に助けた訳じゃないって、それは勘違いだよ。私は彼女達を自分の手駒だなんて思っちゃいない。彼女たちはただ自分達の役目を全うしただけだ」
「役目?」
リリィが震える声で聞き返すと相手はその余裕な態度を崩さずに答える。
「この世に存在する者はみな役目が与えられている。それを全うするのが正しい世界の在り方だ。役目から目を逸らすことは世界に仇名す行為に等しい。彼女たちは見事に役目を果たした。サイボーグ手術を受けた者が実戦ではどのような性能を発揮できるのか、その貴重なデータを提示してくれた」
「っ!」
握りしめた拳に更に力がこめられる。
「さて、私もこう見えて忙しい身でね。そろそろ失礼するよ、久しぶりに君と話せて楽しかった、では良い一日を」
リリィが何か言おうと口を開いた時、相手が話を差し込み通信を切ってしまった。
その直後、部屋にヒメヅカが入って来た。
「リリィさん」
「はぁ、いかんね。どうもアイツは嫌いでな、感情的になるのは柄じゃないんだが。本当、直接話していたら何度アイツをぶん殴っているか分からないよ」
そう言って髪をかき上げてリリィは笑顔を見せる。
「……なぁヒメヅカ」
「はいリリィさん」
リリィは鏡の前に立つ。
「私はこの顔が好きだ。我ながら素晴らしい出来だと思うよ。そっくりだ」
「はい、美しいですよ」
鏡に映った自分の顔に手を当てる。
「でもこれは本当にあのお方の為になっているんだろうか。時折分からなくなる」
「それは私にも分かりません、私はあのお方ではないですから。ですが私はどんな事があろうとも貴女を愛し続けます」
ヒメヅカはそう言ってリリィの肩に手を置く。
「ふふふ、そうか……ありがとう」
肩に置かれた手を握るリリィ、その表情は先ほどの怒りに満ちたものとは違い、非常に安堵している様子だ。
「そうだ、君も新しい役職になったし、これからは会える時間が短くなるのかな?君の昇進は嬉しいが寂しいな」
「そんな事が無いよう全力を尽くします。さぁ、今日はもうお仕事終わりましたし、何か飲み物でも用意しましょうか?」
ヒメヅカがそう言うとリリィはソファに腰掛ける。
「そうだな、今夜は少し強めのが飲みたい」
「ふふふ、畏まりました」
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