No.58 自分勝手な願望
シャーロットが無事にテストをクリアした。
一方その頃ジーナはショットシェルと素手での勝負をしていた。
「まったく、どんなタフネスしてるの。いくらアドレナリンでハイになってるつっても限度があるでしょ」
良い一撃を加えた感触はあるものの、相手は一向に動きを止めずに攻撃を仕掛けてくる。まるで怪物を相手にしているようだ。
「楽しいね!こんなに滾るのは、久しぶりだ!」
「なんか私が出会う人ってこんなのばっかり!」
ショットシェルの猛攻を躱しながらジーナはそう叫んだ。
(黒鉄でしかダメージが入らない。それを打ち込む隙を探すので精一杯!)
相手の攻撃は早く、また一発でも当たれば大ダメージ、当たらないように立ち回るので精々だった。
「さあ、考え事なんてしてないでかかって来な!」
「無茶言わないでよ!」
なんとか反撃の隙を伺い、攻撃を差し込むジーナ。
「シッ!」
ジーナは左ジャブを繰り出す。
しかしショットシェルはそれを避けた。
「鋭いね!だがそれじゃないだろ!」
(普通にジャブを避けないでよね!)
避けた相手にジーナは足払いする。
「お?!」
態勢を崩すショットシェル。
(ここだ!天蓋割り!)
ジーナは倒れそうになるショットシェルに拳を打ち下ろす。
「残念!」
空中でショットシェルは回避した。
「ウソ!?」
ショットシェルはジーナの腕を掴んだ。
「ほら!どうする?腕が折れちまうよ!」
ジーナは腕ひしぎ十字固めを極められてしまう。
(なんて握力!これじゃ関節外しても脱出できない)
即座に脱出できない事を判断し、ジーナはわざと床に倒れる。
この時に相手が絡ませていた足の拘束力が一瞬弱まる。その瞬間にジーナは足のロックを外した。
相手に覆いかぶさるような形になる。
これで肘関節を逆に曲げられる可能性はなくなった。
「そんな顔近づけちゃってどうした?キスでもしてやろうか?」
「ご冗談!さっさと離してよ!」
ショットシェルはジーナの右腕を離さずに掴んだまま更に握力を加えていく。
「肘関節が極まらなくてもこのまま腕を握りつぶしてやるよ!ん?随分と硬いね、ここも部位鍛錬か」
「その通りッ!」
ジーナは相手の肋骨下部分に手を突き刺した。
(これグロいからやりたくなかったけど!)
「早く拘束解かないと肋骨抜き取っちゃうよ!」
「ッぐ!?」
流石のショットシェルもこの痛みは応えたのか顔を歪ませ、後ろに倒していた頭を上げてきた。
「隙ありッ!!」
ジーナは相手の隙を突いて頭突きを放った。
「ガァッ……」
部位鍛錬により鍛え上げられたジーナの頭蓋骨、それを用いた頭突きは強烈なものだった。
相手の拘束が緩んだ瞬間に抜き出すジーナ。
「はぁ、はぁ」
「キレイな顔して結構いい戦い方するじゃないか」
ショットシェルが起き上がる。
(まだ立つよね~。まずいな、今ので腕は折れなかったけど上手く力が入らない。次捕まったら同じ手は通用しないだろうし)
「さぁ、殴り合い続行だ。お互いの的はまだ健在だしな」
ショットシェルはさほどダメージがある様子はない。
(倒れた時に背中の割れてくれたらよかったのに、流石に受け身取られてたか)
即座に攻撃を仕掛けてくるショットシェル。
ジーナは対応に一歩遅れてしまい、攻撃をもろに受けてしまう。
「っぐ!」
攻撃をくらい、地面に倒れるジーナ。
倒れたジーナは天井を見上げる、照明がチカチカと光りグルグル回っているように見えた。
(圧倒的な強さ……自分でも普通じゃない事してる……でもそんなの分かりきってる。でも何でだろうすっごい抵抗してやりたくなる)
彼女を見下ろしてショットシェルは首をかしげる。
「分からないねぇ、あんたは何を思って戦ってるんだい?こんなになってまで、普通の学校に通うお嬢さんならまずここまでやらないよ?」
この言葉でジーナの漂っていた意識は元の場所に戻って来た。
「え?何?ああ、なんでこんな事してんのって?約束したからだよ」
頭を軽く振って、立ち上がるジーナ。
「約束?」
「そう、ユキチカの手助けするって」
ジーナは立ち上がって首を動かす。
「なんだ、金で貰ってんのか?」
ショットシェルの質問に対して首を横に振るジーナ。
「違う、ムカつくの、ウルティメイトの連中とかがさ。ユキチカを利用価値があるとか、高い能力があるとか……ユキチカを利用できる物としてしか見てないような口ぶりがさ。人の事を何だと思ってんだって、そんな人たちにユキチカが困らされるのが気に入らないだけ」
「見上げた愛情だな」
ふん、と鼻で笑うショットシェル。
「私はただ彼にもっと自由になって欲しいってだけ。別に頼まれた訳じゃない、自分勝手の願望だよ」
「ふっふっふ、じゃあその勝手な願望の為にしっかり私に勝たないとな!!」
「分かってるよ!」
そう言ってジーナは後ろを振り向いて走り出した。
それを追いかけるショットシェル。
(面白い!何をしてくるんだ、楽しみだ!)
ジーナはリングを囲う金網を足場にし、三角跳びをした。
勢いを利用して蹴りを放つジーナ。
「ここで蹴りか!温存してた?違うな、もう腕が限界なんだね。となればこれがあんた最後の一撃!だが蹴りでどうこうなる私じゃない!」
ショットシェルはジーナの攻撃を避けずにそのまま突き進む。
しかし、すぐに事の違和感に気付く。
(待て、この子は自分で思っているよりもよっぽど冷静で理性的な子だ。ならばこれにも何か勝ち筋があるはず。どこを狙っている、目?鼻?顎?いや違う、もう少しだけ下……まさか!!)
「黒鉄ノ槍ッ!!」
ジーナのつま先がショットシェルの喉に直撃。
「ぐ……あっ!」
意識を失ったショットシェルは後ろに大きな音を立てて倒れた。
当然意識を失った彼女は、受け身など取れる訳もなく、倒れた勢いで背中の的が破壊される。
その光景をみて会場がどよめく。
同じく別室で試合の映像を見ていたチーフマチェットとその部下達。
「へ?ショットシェルさんが蹴り一発で倒れた?!なんで、あの人のタフさじゃあれぐらい何てことないはず……」
何が起きたのか分からない様子の部下にマチェットが答える。
「気道を狙われたんだよ」
「気道?」
部下は首を傾げる。
「酸素を取り込めないようにされたのさ。気道をつま先で蹴り潰したんだ。これをされたら新しく酸素を取り込めないからな、当然脳に酸素はいかないから当然気絶する。こうされたら体の頑丈さは関係ない」
倒れたショットシェルをみて、ジーナは地面に座り込む。
「はぁ、はぁ……勝った!」
ジーナが拳を突き上げると会場が湧き上がる。
マチェットは誰かに連絡をいれる。
「2人ともテスト合格か、意外だな。これで良いか?ばあさんよ」
「んがっはっは!良くも何も素晴らしいじゃないか。というか、私はちょいと力試しをしてくれと頼んだんだ、ここまでやれなんて言った覚えはないよ。まったくマチェットは過保護だねぇ」
自分の部屋で笑いながら映像を見るMrs.ストレングス。
「うるせぇ、私は人を簡単に信用しないだけだ。テメェらと違ってな」
連絡を切ってマチェットはモニターを見てため息をつく。
「ガキの癖にまあまあやるじゃねぇか」
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