No.54 Mrs.ストレングスとチーフマチェット
ユキチカの故郷であるインファマス刑務所に到着し、彼らが向かったのはこの刑務所で最も危険とされる囚人。
それが情報屋のMrs.ストレングスだ。
沢山の本をプレゼントする代わりに、ユキチカ達は先の事件で遭遇した殺し屋キリサメについての情報を提供してもらうことになった。
Mrs.ストレングスの部屋にある本棚、その奥に様々な機械やモニターが設置された部屋が現れた。
ナイフを持ってコンピューターの前に行くMrs.ストレングス。
「特殊加工されたナイフ。金属にも関わらず全く光を反射しない。これと刀を使ったんだろう?そんな変わり者そうそういないさ。間違いないこいつだよ」
そして彼女は1人の少女の写真を映し出した。
白い肌に金髪の女性、顔にある大きな火傷が無ければ良家のお嬢様と言われても信じてしまうだろうその顔立ち。
「スズメ・キリサメ、日本の言い方ならキリサメ・スズメだね。名前こそ日本人みたいだが出生は日本じゃない、生まれた正確な時期は不明、一番古い記録が孤児院の名簿だ。そこでは顔の写真だけで名前はなく、番号で呼ばれてたみたいだね」
映しだされた画像のキリサメは暗い目をしていた。
「ここは色々と訳ありな孤児院でね。そんな環境で育ったせいなのか、それとも生まれ持ったものなのか。この頃からすでに彼女は人殺しのプロだった」
次に映し出されたのが新聞の記事だった。
見出しにはこう書かれていた。
”孤児院が火災により全焼、たった1人の生存者”
「今から10年前、孤児院で火事があったその火事の唯一の生き残りが彼女だった。出火の原因はガス漏れ。不幸な事故、そう判断された、しかし違ったんだ」
Mrs.ストレングスの声のトーンが低くなる。
「犯人はこのキリサメだ、こいつは職員含め他の孤児も皆殺しにしたんだ。その後孤児院に火をつけた」
この事を聞いて唾を飲み込むジーナとシャーロット。
「そんな奴が裏の世界で殺し屋として育てられたんだ。そりゃあ優秀な殺し屋になってるだろうさ」
「……」
黙ってしまうジーナとシャーロット。
「んがっはっはっは!少し怖がらせちまったかい?まあ殺し屋なんて出会わないにこしたことないからね」
笑うMrs.ストレングス。
「こいつは今世界中で仕事をしているが、表向きはある警備会社の仕事となっている。その警備会社の名前が【ハウンド】で、そこに一番出資してるのが」
「ウルティメイト社……」
シャーロットが先にその会社名を口に出す。
「そうだ、まあこれは単純に企業間の金の流れを見ただけさ。その会社がどこまでこのキリサメに関わっているのか、それに関してはまだ手元に情報がない。けど全くの無縁って事はないだろうね」
彼女がそう話すとベルがなる。
「なんだい、もう時間かい?しょうがないね。それじゃあユキチカ、本を沢山ありがとうね、また何かあったらうちにおいで」
「おばあちゃんありがとー!またねー!」
お土産のクッキーを袋に詰めて持ってユキチカはMrs.ストレングスにハグをして別れを告げた。
話を終えたユキチカ達はMrs.ストレングスのいる建物を出て、島で一番大きな建物に向かう。
建物に入って少し進むと独房が並んだ場所に出た。
そこは刑務所のイメージ通りの鉄格子や壁で区切られた部屋が並んでいた。
「おかえりー!」
「帰って来たって事はもしかして何かシャバでやらかしたのか?」
「また遊ぼうぜー!」
重々しい刑務所のイメージに反してかなり明るい様子でユキチカを迎える囚人たち。
「やっぱ故郷ってだけあって凄い歓迎ムード。刑務所って場所じゃなかったら素直に温かい家庭ってなるんだけど、なんか複雑な光景……」
ジーナがその光景をみてそう呟く。
「アイツは今どこにいるんだっけか
「食堂です」
「じゃあこっちだな」
ヤスシは部下に誰かの居場所を聞いている。
「アイツ?また誰かに会うの?」
ジーナがユキチカにきく。
「うん!今度は武器売ってるの!」
「これから会う人物はチーフ・マチェットと名乗っている武器を密輸したりしてる組織の親玉さ。組織の名前は”デスバリ―社”死とデリバリーを合体させた最高にイカす社名なんだと、センス悪いよな」
「武器商人……」
「本当にすごい交友関係ですね……」
ユキチカの返答にシャーロットやウルルはまた不安げな顔をする。
通路を進むと大きな空間に出る、長テーブルに普通の丸椅子、一見は普通の学校にある食堂とそう変わらない。
変わっているのはその食堂にいる人物たちだ。
食堂の中央に囚人服を着た者達が集まっていた。
「マチェー!」
ユキチカはMrs.ストレングスの時と同様、一人先に進んでその人だかりに話しかける。
すると集団の内一人がユキチカの前に立ちふさがる。
「おいコラ!ユキチカ!マチェットさんになめた呼び方してんじゃねぇぞ!?」
その者がユキチカに向かってすごむ。
「うわっ、みんなが優しいんじゃないんだ」
「まあ、ゆーて刑務所ですし、そんな人もいるんだね」
後ろでシャーロットとジーナがひそひそと話す。
「おう?ユキチカか」
「マチェットさん!」
「もう下がって良いぞ」
そう言って集団の中から現れた他の人物。
どうやらこの集団のボスのようだ。
「あ!マチェ!」
「チーフ・マチェットだっていつも言ってるだろ。マチェじゃかっこがつかねぇ」
マチェットと呼ばれるその女性は赤い髪をした眼帯をしており、片手には酒瓶をもう片方の手には葉巻を持って吸っていた。
「どうりでみんな騒がしい訳だ。まあ座れよ」
マチェットは葉巻の火を消し、近くにあった机の上に座る。
ユキチカは彼女の正面にある椅子に座った。
マチェットはジーナ達にも目を向ける。
「え、わ、私達も?」
「ほら、座れ」
変に抵抗する理由はないのでジーナ達は言われた通り席に着く。
「まあ久々に来たんだ、何か食ってけよ」
そういうと集団を割って何かが運ばれてきた。
「部下がケーキづくりに凝っててな、最近もうオレたちは食い飽きてたんだ」
そう言って出て来たのは縦横100cm高さ20cm程の巨大なケーキだ。
「わー!ケーキ!いちごいっぱいだ!」
「あー、そういえばお前イチゴのケーキ好きだったかぁ。いや、偶然だが今回のケーキは最高級のいちごをたっぷり使った物なんだ、ラッキーだったな」
マチェットはそう言ってケーキを部下にケーキをよそわせる。
みんな何やらそわそわしている。
(絶対ウソ)
(そういうタイプか)
シャーロットとジーナは彼女達をみてそう思った。
「ケーキ美味しい!」
「クッキーにケーキ、今夜はお夕飯はいりませんね」
目の前に大きく切られたケーキが並ぶ。
「私はもうあんまり食べられないかも。ユキチカにあげる」
「ありがとシャロ」
ユキチカはまだまだ食べられるようでケーキも手を止める事無く食べていく。
「それで、なんのようだ?」
マチェットにそう言われるとユキチカは一丁の銃を取り出す。
「お前ッ!はぁ、全くそれもかよ。どうりで現場で探しても無い訳だ」
キビがその銃を観て頭に手を当てる。
それは大型拳銃でカイ・ザイクが使っていたものだ。
「これマチェのだよね?」
ユキチカは銃をマチェットに渡す。
「おい、パラベラム」
銃を受け取ったマチェットが部下の1人の名前を呼ぶ。
呼ばれて現れたのはスキンヘッドにタトゥーの入った人物。
タトゥーは銃の絵で、頭以外にも手の甲にも同様の絵が彫られている。
パラベラムという女性がマチェットから銃を預かると口を開く。
「おおこれはこれは、大型拳銃オアシスホークですね。ハンドキャノンなんて呼ばれてる代物で正に持ち歩ける大砲みたいな銃です。人間に使うには過剰火力な一品、コイツで撃たれた人間は凄いですよ、肉片なんてもんじゃねえ、ピンクの霧になっちまう。使用する弾は6種類あって、この子は……なるほど一番デカい弾だ、この銃を設計した奴は最後にこれで自分の家族を……」
次々とその銃についての情報を話すパラベラム。
「おい」
「ああ、すみません。そうですね、これはうちのです間違いない。使用してる弾もうちのだ、それに」
マチェットに注意されて話を元に戻すパラベラム。
彼女は弾倉から弾を一つ取り出す。
「おい!弾入ってるのかよ!ユキチカ!」
キビがそれを見て声を上げる。
ユキチカは瞬間的にキビに背を向けた。
そんなやり取りには目もくれず、パラベラムは弾薬を分解して薬莢の中から火薬を掌に出した。
火薬のにおいをかぎ、さらになんと舐めたのだ。
まるで子どもが大きなキャンディーを舐めるようにガッツリと。
「うん、火薬もうちのだ」
舐めた火薬を味わってパラベラムはそう言った。
周囲の者はドン引きしている。
「おい、その舐めるのやめろって、それも皆が食ってる前でよ」
マチェットが再び注意する。
「ああすみません。あまりこの銃は扱わなくて昂ぶっちゃって。あまり扱わない品なんで、扱ってる奴の目星はもうついてます」
「だ、そうだ。すぐに分かるってよ」
マチェットがそう言ってユキチカの方を向く。
「あとこれ!」
ユキチカは今度は一枚の紙きれを取り出してマチェットに渡した。
「うん?なんだ商品の注文か……ってなんだこの注文!?」
紙に書かれた内容をみてマチェットが驚く。
「むり?」
「はぁ!?できるわ!だが時間はかかるぞ。それに当然金もな」
紙を部下に渡すマチェット。
「お金ならあるよー」
ユキチカがそう言うとマチェットは酒を一杯飲む。
「だろうな。だが今回はそれだけじゃない。ちょっとしたテスト受けて貰うぞ」
「テスト?」
そう聞かれたマチェットはジーナとシャーロットに目を向けた。
「そこの二人にな」
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