No.53 インファマス刑務所
船に揺られ、ユキチカの故郷インファマス刑務所を目指すユキチカ達。
「おつかれさまです。ただいま到着いたしました、では目隠しを外します。最初は眩しいかと思うのでお気を付けください」
そう言って車いすに座るユキチカ達の目隠しは外す職員。
「ついたー!」
「ありがとうございます。目隠ししてましたけど、ふつうに周りの状況把握していたのですが、良かったのでしょうか。その私アンドロイドなので……」
ウルルがそう言うとジーナとシャーロットも話し始める。
「ああ、それで言ったら私も見えなかったけど、波の音と窓から入って来る風でだいたいの方向が分かるし、自分の脈で時間もどれくらいか分かるし」
「あー、私も見えてる星と太陽の位置で今いる場所分かっちゃうかも……やっぱまずいのかな」
職員たちはそれを聞いてお互いに見つめ合って、少し困った様子だ。
「はっはっは!秘密の刑務所もこれじゃあ形無しだな!どうせこれは形式的な奴だから気にすんな。さ、案内してもらおうか?」
キビは職員にそう伝えると彼女達を施設まで案内した。
そこは刑務所というよりも要塞と呼ぶべき場所だった。
「ここはずーっと昔に戦争で使われてたんだよー。ほらあれ!大砲があそこから出てたの!」
ユキチカが道中に皆に説明する。
「あの、鬼丸様あまりそう言った話は……」
「え?ダメ?」
「ま、まあ一応ここ極秘の場所なので」
職員がユキチカに注意をする。
話をしていると施設に入る為の大きな門に到着する。
「おい、ユキチカ、事件捜査に協力してもらってるのお前の父ちゃんに教えてないから。自分から言うんだぞ、できるだけ私が側にいないときにな」
門が開くのを待っている間にユキチカに向かってキビがそう言った。
「おおーー我が愛する息子よぉーー!会いたかったぞ!」
門が開いた途端向こう側から声が。
鬼丸ヤスシ、ここインファマス刑務所の所長でありユキチカの父だ。
彼は駆け寄ってユキチカに抱き着く。
「おお、こんなに立派に育って……父ちゃんは嬉しいぞ」
涙ぐむヤスシ。
「まだここを出て数カ月だろうが」
キビがそう言って二人の横を通り過ぎる。
「ふん!三日会わざれば刮目してみよって言うんだよ!元気してたか、ユキチカ?」
「元気だよー!最近ね、カオルちゃんがねお仕事手伝わせてくれるの!事件捜査!」
サラッと捜査協力の事を話すユキチカ。
「あーあ、言っちゃった」
キビがそう言うとヤスシは笑いだす。
「はっはっは!その話は聞いてるぞ!流石は自慢の息子!人様の手助けをするなんてな!キビも鼻がたかいだろ!」
そう言ってヤスシはキビの肩を掴んだ。
掴むその手はかなり力が入っていた。
笑ったままの顔をキビの耳元に近づけるヤスシ。
「テメェには後で色々と話があるからな」
ヤスシがドスの効いた声でキビに向かって言う。
「へーい」
施設に入るとユキチカ達は車に乗って移動していた。
「ウルルみてみてーひょっとこ」
「そうですね、私はフクロウですね」
皆は仮面を渡されていた、それで顔を隠す必要があるみたいだ。
「牛の仮面もらったけど色々あるんだね」
「これ蜂だよね、なんで蜂の仮面なんてあるの?」
ジーナは牛の仮面を、シャーロットは蜂の仮面を付けている。
「私もいるのかこれ?てか狛犬って当てつけか?」
キビは狛犬の仮面をつけていた、彼女は仮面を付ける事についてヤスシにきく。
「お前も一応ここの客って事で来てるからな。だから付けねぇといけないの」
ヤスシがそう言うと向こう側から、彼らと同じように仮面をつけた者達を乗せた車が通り過ぎて行った。
「鬼丸ヤスシ様、今の方々は?」
「ああ、ここの事はユキチカから大方きいてるんだろ?仕事の依頼をしたか、その依頼したものを受けとったお歴々さ。君たちがこれから行くところから来たみたいだ」
ウルルの質問に答えるヤスシ、それを聞いて囚人に仕事を依頼するという話が本当の事なのだと思った。
一行は車を降りて建物内に入る。
窓は無く、冷たいコンクリートの通路を進む。
「ずーっと通路だけですね、もっと牢屋がずらーって並んでるイメージでしたけど」
通路をみてジーナがそう言った。
「他の所はそんな感じだ、ここは一番危険な奴を収容する場所だからちょっと違う作りになってる。この棟の囚人は一番奥の部屋にいる奴一人だけだ」
「って事はこの建物一つ全部がその囚人の為?!」
「そ、そんなヤバい人に会って大丈夫なの私達……」
ジーナの後ろにピッタリくっつくシャーロット。
「まあ危険人物なのは間違いない。奴は囚人で文句なしのトップクラスだ」
そんな不安げな彼女達をよそにユキチカが先に進む。
通路の奥には大きな透明な扉がいくつもあった。
ユキチカは扉を次々と押し開ける。
「んがっはっはっは!!よく来たねェッ!!」
一番奥の扉を開けた途端、元気な声が響く。
扉の向こうにいたのは白髪の老婆だった。
気付けば部屋の中に入り、なぜかテーブルにつくジーナ達。
彼女らの前には焼きたてのクッキーが山のように積み上がっていた。
「さぁ、たんと食べておくれ!沢山焼いておいたからね!」
「おばあちゃんのクッキーだー!頂きまーす!」
ユキチカはクッキーを取り食べ始める。
「飲み物は何が良いかね?牛乳?コーヒー?紅茶?ジュースも色々あるよ、若い子は炭酸のが良いかね?好きなのを言ってごらん」
「こ、これってどういう状況?」
「えーっとここの一番危険な囚人に会いに来てクッキーを山盛りご馳走して貰ってる。ダメだ、言語化しても意味が分からない」
「あのお三方はもう普通に召し上がられてますね……」
ニコニコと聞いて来る老婆に対して状況が飲み込めていないジーナ、シャーロット、そしてウルルの三人。
「うんうん、相変わらずお前のクッキー旨いなー」
「コーヒー、これ良い奴だな。依頼主からの貰いもんか?まったく囚人の癖に良いご身分だな」
ヤスシとキビは普通にクッキーと飲み物を楽しんでいた。
「まあ、とりあえず食べようか、美味しそうだし」
「そうだね……頂きまーす」
「頂きます」
結局三人もクッキーを食べる事にした。
「うーん!美味しい!」
「ヤバい、これどんどん食べれちゃう!」
「なんと完璧な焼き上がり!シナモン、チョコレート、バター、全部美味しいです!」
「んがっはっはっは!そうかい!気に入ってくれたようで何よりだね!」
あっという間に山盛りのクッキーをたいらげたユキチカ達。
「さて、長旅で空いたお腹も少しは満たせたようだし……ああそうだ!いけないいけない、本題の前にまだ自己紹介してなかってね!」
Mrs.ストレングスは手をすっと出して来た。
「ストレングス、Mrs.ストレングスだ。スーちゃんやスーおばあちゃんと呼んでも良いよ。ユキチカがいつもお世話になってるね」
「どうも、私ユキチカ様の従者アンドロイド、ウルルと申します」
「ど、どうもシャーロット、です」
「はい、ジーナ、カラ・ジーナです。よろしくお願いします」
3人は挨拶をする。
「3人共とっても可愛らしい子だね。よろしくね」
Mrs.ストレングスはそうニッコリとほほ笑んだ。
3人は目の前の老婆が危険な囚人というのがウソのように思えた。
挨拶が済んだ所でユキチカが話を切り出す。
「ねぇおばあちゃん、これみて」
彼はそう言って真っ黒なナイフを取り出した。
「おいおい、それってあの殺し屋のナイフだろ?勝手に現場の証拠品をコレクションするなよな。コウノに後でバレたら何言われるか分かんねぇんだから」
キビがコーヒーを飲みながら目を回してそう言った。
「ほー、殺し屋のナイフねぇ。なんでそんなのが落ちている現場にうちの可愛いユキチカが行ったのか、興味があるねぇ」
Mrs.ストレングスは鋭い視線をキビに向ける。
同様にヤスシも隣からキビを睨みつけていた。
「……」
二人から目線を逸らしてコーヒーをすするキビ。
「ま、それはまた後で聞くとして。ユキチカ、ばあちゃんに仕事を頼むルールは知ってるね?」
「うん!これお土産!」
そう言ってユキチカは持って来た大きなバッグをテーブルの上に置いた。
中には大量の本がぎっしりと詰まっていた。
「どれどれ……おお!これは私の大好きな作家の新作かい?!こっちも今年の大賞作品!いいねぇ、流石はユキチカ分かってるねぇ。それに比べて他の連中ときたら金や嗜好品を渡せば良いと思ってやがるんだ、持ってくるもんがつまらなくてしょうがない。良いよ、これを貰えるなら喜んで仕事を引き受けようじゃないか!」
本が詰まった大きなかばんを片手で引き寄せて立ち上がるMrs.ストレングス。
「このナイフの持ち主の情報を知りたいんだね、ちょっと待ってな」
そう言って彼女は部屋の奥にある本棚に向かう。
「なんだ、世界中の殺し屋の履歴者をまとめたファイルでもあるのか?」
キビが話しかけるとMrs.ストレングスが笑う。
「私をローテクババァだと思わない事だね」
彼女がそう言って本棚から一冊の本を取り出してそれを開く。
そのページには紙の代わりに金属製の板があった。
板に手を当てると本棚が動き始める。
「ばぁちゃんの秘密基地!」
「おおお!!」
ユキチカとシャーロットが立ち上がる。
「どうだい、カッコイイだろう?」
本棚の奥に様々な機械やモニターが設置された部屋が現れた。
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