No.103 ここから出よう
「おい!おい!鬼丸とこの坊っちゃん!」
「起きて、鬼丸ユキチカ」
「うーん?なに?」
ある日の夜、ユキチカはオニツノとキリサメに起こされた。
「こっから出したるわ」
「ついてきて」
目元をこするユキチカ。
「うーん、眠い……寝足りない」
「カラダが機械の癖になに言うとんねん、ほらいくで!スズメちゃん坊ちゃんの靴持ってきて」
オニツノはユキチカを引っ張り起こす。
「はい靴」
「まったく手がかかるの、あの刑務所で育ったとは思えんわ」
文句を言いながらユキチカに靴を履かせるオニツノ。
2人は外の様子をみながらユキチカを部屋から連れ出す。
「なんで2人が?」
「この為に行動してた、イヴ様からの依頼」
「スズメはイヴ知ってるんだ!」
キリサメに嬉しそうに話すユキチカ。
「モッチーは?」
「お供させて貰っただけや、おもろそうやからの。ちゅーか”モッチー”ってなんや、可愛すぎるやろワシに似合わん」
オニツノは周囲を警戒しながら答えた。
行く道はキリサメが把握しているようで、彼女が先導して進んで行く。
「警備システム止めてるの?警報ならないね」
「うん、でも少しの間だけ、そう長くはもたない」
「そういう事や、さっさと行くでー」
ある程度進んだ所でオニツノが振り向いて立ち止まる。
「二人とも先行き」
「モッチー?」
「ワシは後からいくわ、そろそろ追手が来る頃やろうしな」
オニツノが言った通り周囲が騒々しくなる、ユキチカの脱走がバレたようだ。
「まだ外まで半分って所や、2人共気ぃ抜かんと行くんやで」
「行こう、鬼丸ユキチカ」
「またね!」
キリサメとユキチカが走って先に進む。
それから間もなくアンドロイドの兵達が通路の向こうからやって来た。
「はっ!なんやただのガラクタやないか。喧嘩相手には物足りんがまあええわ」
迫りくるアンドロイド兵にオニツノは飛び掛かる。
「オラァどないした!こんなもんかい!?」
アンドロイド兵の残骸の上に立つオニツノは周囲を見渡した。
「ちっ、ここ以外の道使って追いかけてるな。しゃーない、それなら」
オニツノはある場所に向う。
「スズメちゃんの言う通りやと、こっちに……おっ!あったあった」
手元の端末を見てオニツノは1つの部屋に到着した。
「なんだお前は!」
「オニツノだ!」
「なんや監視室には人がおるんかい。あんたら痛い目に会いたくなければじっとしとくんやな」
その場にいた者たちは警棒を取り出し、構える。
「後で泣きべそかいても知らんで」
「う……うう」
その場にいた者たちは瞬く間に倒されてしまう。
「まったく話にならんの。とりあえずここらへんの機械ぶっ壊したろ」
周囲にある機械を壊していくオニツノ。
「ようやくわかったよ、君がどうしてそんなに献身的に我々に尽くしてくれるのか。スパイか」
監視室にヴァーリが現れる。
彼の話を聞いて笑うオニツノ。
「そんな利口なもんとちゃうわ。気に食わん奴の計画をええ所で台無しにしたろって思ってただけや」
「いい性格をしているな」
「そらどうもッ!」
オニツノは攻撃を仕掛ける。
「あんなにアンドロイド使うのに、ここじゃ人を使とるんか?」
「アンドロイドは物量面は優れている、だが最後は人の目が必要なのだよ」
ヴァ―リはオニツノの攻撃を避けた。
「結局信用仕切ってないことかいな。でも分かるで、ワシも初めてネットショッピングしたときはホンマに届くんか信用できんかったからな!」
「君のそれと一緒にしてほしくないね」
「そやな、あんたと一緒なんて吐き気がするわッ!」
オニツノは地面に落ちていた警棒を蹴り飛ばし、相手の注意を逸らす。彼女はその隙に攻撃を仕掛けようとした。
「おっと」
「なんや……その身体!?」
飛び掛かるオニツノだったが、彼女の身体は宙で停止した。
「これが新しい人間の姿だ」
そう話すヴァーリの腕は変形し、銀色の塊となってオニツノを掴み上げていた。
オニツノを壁や天井に叩きつけて投げ飛ばす。
「が……!クソ……アホみたいな力で人を掴んで振り回しよって!」
「酷い傷だな、肋骨が折れて肺に刺さったな。呼吸するだけで激痛だろう」
倒れたオニツノを見下ろすヴァ―リ。
「今からフルマラソン走れ言われても余裕や」
「立ち上がれるのか。興味深い」
歯を見せながら立ち上がるオニツノ。
彼女は再度攻撃をしかけるが反撃を受けてしまう。
今度は変形した腕が腹部を貫いていた。
「……ぐ…ガハ!」
オニツノは口から大量の血を吐き出す。
「おっと、赤黒い血は良くないと聞く、内臓からの出血だとね。私も何度かみた事はあるが……死んでしまうぞこのままでは」
「はあ……はあ……」
もうヴァーリの声は殆ど聞こえていない。
「君の戦闘能力はここで捨てるには勿体無い。そうだ君にも特別な身体をやろう。喜べ、新人類の肉体を私の次に体験できるのだ」
倒れたオニツノを変形させた腕で持ち上げるヴァ―リ。
オニツノはそのまま気を失ってしまった。
キリサメとユキチカはアンドロイドの兵たちをうまくかわしながら先に進もうとしていた。
「もう追っ手が、こっち」
時折現れたアンドロイド達を斬り伏せてキリサメは先導する。
「キリサメ強いね!黒い刀かっこいい!」
「……もうセキュリティシステムは復旧、監視に映らないように」
監視カメラを避けながら先に進む二人。
進んで行くと通路の先に部屋が現れた。
「こんな所に部屋?この図面にはない……」
「リフォーム?」
キリサメも知らない部屋のようだ。
「この部屋を抜けるのが、一番近い。でも中に……」
「しつれいしまーす」
ユキチカはキリサメが話し終える前に扉を開ける。
「おー」
「なに、これ」
扉を開けた先には極めて普通の長テーブルと椅子が、そこはよく見るダイニングルームだった。普通ではあるが一部特徴的な部分があった、それはいくつかの椅子にぬいぐるみが置かれているのだ、座らされていると言ってもいい。
ダイニングからはキッチンにリビングルームも見える、他にも幾つか部屋が繋がっている。こんな施設に3LDKの居住スペースがあるのは不思議でしかない、何かの実験場だろうか。
「~♪」
すると誰かがキッチンに立っている事に気づく、女性だ、鼻歌まじりに料理をしているのだろう。彼女はくすんだ金髪をしている。
「ん?お帰り、早かったね」
二人に気付いた彼女は顔を上げてそう言う。
「カイだ!」
「カイ・ザイク?」
その女性はカイ・ザイク、【光るシャボン玉事件】の時に対峙した研究者だ。
「晩ごはんもうすぐ出来るから、手洗いうがいして、宿題でもして待ってて」
二人にそう言うとカイは料理に戻る。
「?」
「どういうこと……」
ユキチカとキリサメは顔を見合わせる。
「何をしてるのほら、早く洗面台に行って」
彼女は再び顔を上げて二人に洗面台に行くように伝える。
「はーい」
「え?」
ユキチカはカイに言われた通りダイニングから続く洗面台に向かい、手洗いうがいをし始める。
「もう、いつまで帽子被ってるの、早くそれとって」
カイはキリサメのヘルメットを外した。
「あ……」
そして気付けばカイが作った料理を前にぬいぐるみ達と座っていた。
「いただきまーす」
「はい、どうぞめしあがれ」
ユキチカは両手を合わせて食事を始める。
「ん!おいしい!ほらキリサメも」
「え……」
キリサメも恐る恐る食事をする。
「うん……」
そう言って頷くキリサメ、彼女的な表現で美味しいという意味だ。
「ふふ、良かった。お母さん嬉しい」
食事をする二人をみてカイは微笑んだ。
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