No.102 厳しい訓練とベテランたちの昔話
闘技場の端で倒れているジーナ。肩で大きく息をしている。
「はぁ、はぁ」
「段々動きが良くなってきたじゃないか。ショットシェルー」
キビが下がり、ショットシェルがジーナの元にいく。
「私がセコンドじみた事をするなんてな」
持ってきた氷と水を横に置き、ジーナを起こすショットシェル。
「うわぁ、私よりも手加減ねぇじゃないか、あれが本当におまわりかよ」
彼女はジーナの身体に氷を当てていく。
「まだ……黒鉄……うてない……」
「ああ、まだ色々と考えすぎだな。そのせいで妙に身体に力が入ってる、もっと脱力するんだ。ほら深呼吸しろ、ゆっくりな」
息も絶え絶えなジーナにそう言って呼吸を整えさせるショットシェル。
「脱力?黒鉄は攻撃の瞬間に全身を固めないといけないのに?」
「だからこそだ、脱力で無駄な力を抜いて、力を入れるべき部位とタイミングを見極めるんだ。最初から全部やろうとするな」
ジーナに水を一口飲ませるショットシェル。
「なるほど……セコンド向いてるね」
落ち着いたジーナは立ち上がる。
「ふぅー脱力、脱力……」
(まずは意識しやすい腕まわりから)
軽くその場でステップするジーナ。
「再開かするか?」
「お願いします」
キビが闘技場に入り、ジーナは構える。
「フッ!」
早速ジーナは拳を放つ、しかしキビにはたき落とされてしまう。
「ほら、つぎつぎ」
(もっと一気に爆発させるイメージで!)
時同じくしてシャーロットは地面に倒れていた。
「あーちょっと休憩良いですか?肺が爆発しそう」
汗だくの彼女は冷たい地面に触れて熱を逃がしていた。
「シャーロット、だいじょうぶ?」
「ちょっと、あんたはこっちに集中」
チザキは隣のシューティングレンジでブルズアイと対峙していた。
「まったく、シドーさんが来たから私は楽できると思ったのに。こっちを任せられるなんて」
頭を振ってそう言うブルズアイ。
「シドーさんがシャーロットちゃんの相手するなら。その間チザキさんはブルズアイと訓練しとけば良いんじゃねぇの?」
昨晩、夕食の際に鬼丸ヤスシがふとそんな提案をした。
「えー、流石に人智を超えた存在の相手は荷が重くない?私はただの世界一の殺し屋ですよ」
「チザキさんはきっとシャーロットについていくんだろ?それなら何ができるのかぐらいは把握しても良いんじゃないか?」
「はぁ〜わかりましたよ。実弾使って良い?あとそれ追加チャージね。超人相手の依頼料はどうしようかな」
こうしてブルズアイはチザキの相手をすることになったのだ。
「さて、チザキさんの能力検証といくか。念のため言っておくけど、撃たれたからって私を殺そうとかしないでね」
「殺さない、シャーロットと約束した」
頷くチザキ。
「そっか、なら安心した、殺し合いになったら私も手加減できる自信無いからさ。せっかくの戦力を無駄にしたくないし」
「じゃあ行くよ。まずは一般的な拳銃から」
ブルズアイは銃を構えて全弾発砲した。
チザキは血の盾を生成し、弾丸を全て防いでみせる。
「弾いたね、なるほど血液を凝固させて盾にしたの?にしても量が多すぎない?フラフラしたりしない?」
チザキは首を横にふる。
「なるほど、血液の量が人と違うのか、いやだとしても身体に対して量が多すぎるな。血液以外のものも利用してる感じかな?」
次は自動小銃を取り出すブルズアイ。
「それじゃあ次の銃はどうかな?」
夕飯時ということでシャーロット達は食堂で食事をしていた。
「ふぅー疲れた。こんなに色んな銃をぶっ放したのは久しぶり、めっちゃ弾を弾くからそれ避けるのも大変だし」
「お疲れさん」
「おつかれさまー」
シドーとシャーロットは先に座っており、その隣にブルズアイが座る。
「そういえば弾を避けるってなんか普通にやってるけど、どうやってるの?」
シャーロットが夕飯を食べながら彼女に質問した。
「まあ1番シンプルなのは目で見てよける。動体視力の反射神経があればいけるよ」
「んーパスで、シドーさんは?私の弾を避けるのはどうやって?」
今度はシドーに質問するシャーロット。
「銃が向いてる方向、あと狙われてる部分はなんか火傷しそうなくらいの熱を感じるんだ。それで避けてる」
「経験からくる勘ってところか。流石に経験の密度が違うね。あれ今日のデザートいつもより美味しいかも」
ブルズアイはデザートを食べながら話す。彼女は甘いものを先に食べるタイプみたいだ。
「あとは計算だね、これだと見えない範囲の弾道も分かるから便利」
「計算、それなら私も出来るよ!あの跳弾を計算するのと一緒?」
「基本はね。でも戦場じゃ飛び交う銃弾の数も障害物の数も違う。それを一瞬で把握して弾道を計算するんだ。ミスは文字通り命取りだよ」
ブルズアイはナッツを上に向けて弾き、口でキャッチする。
「まずはおれに一発命中させる事からだな」
「はーい」
「シャーロット、訓練、えらい」
後ろから来たチザキがシャーロットを撫でる。
「お!シャロじゃん」
「あ!キビ!おつかれー、お昼来なかったけど大丈夫だった?」
遅れて食堂に来たジーナ、彼女も疲労困憊のようだ。
「キビさん達と簡単なものをお昼に食べててね」
「消化がいいものじゃないと訓練中に戻しちまうからな。おかゆとかドリンクで済ましたんだ」
後ろから来たキビがそう話す。
「そんなに厳しいのを……」
青ざめるシャーロット。
「本当、あれでまだ手を抜いてるってんだから恐ろしいよ」
ショットシェルが呆れた様子で言う。彼女はもっぱらサポートにまわってるようだ。
「なんだ、みんな仲良くお夕飯か」
賑やかになってきたその場所に今度はマチェットとウルル、そしてパラベラムがやって来た。
「マチェットさん、お疲れ様です」
ショットシェルが頭を下げ、椅子を引きマチェットがその椅子に座る。
「おつかれさまー」
「皆様、本日もお疲れ様でした」
ウルルはお辞儀をした。
「このご飯はウルルが作ったんでしょ?美味しいけど、ご飯まで作って大変じゃない?」
シャーロットがそういうとウルルは首をふった。
「いえ、皆さんに少しでも元気をつけてもらいたいですから」
「……」
「パラベラム……どうした?」
ショットシェルは先程から黙っているパラベラムに話しかける。
「こいつは最高のガンスミスになれる!」
「は?あーそういうことか」
パラベラムは目を輝かせながらウルルの背中を叩く。
「手先が器用で覚えが早いのも勿論だが、何よりネジ一本まで扱いが丁寧なんだ!慈愛すら感じる手つき、しかし瞬く間に仕事を終わらせちまう!惚れ惚れする姿だった!」
「こいつずっとそんな調子なんだ。仕事を教えさせるために一緒にしたがやかましくてしょうがない」
ため息をついて酒を飲むマチェット。
「またユニークな人に好かれたね」
「それシャロが言える?いや、私もか」
「そういえばオニツノやヒメヅカはどこに行ったんだろう、それとキリサメも」
「十中八九ウルティメイトに軟禁状態だろうな。彼女らは色々と知っているから、安々と野放ししておけないだろうよ」
ジーナの疑問に対してそういうキビ。
「オニツノ、懐かしい名前だな」
「知ってるんですか鬼丸さん」
皆と同じく夕食を食堂でとるヤスシ。普段から彼はここで食べているみたいだ。
「ここに来る前の話だ、オニツノを逮捕した事があってな。あいつはまだ元気みたいだな」
「え!?」
ジーナが驚いてヤスシの方をみる。
「あいつは手当たり次第、腕っぷしに自慢がある奴に喧嘩ふっかけてな。それこそプロの格闘家やアスリート、結構被害者の数もバカにならなくてな。確かまだあいつは君らぐらいの年の頃だったか」
「キビさんもその時からオニツノを?」
話を聞いてジーナはキビにも質問した。
「ああ、私とヤスシは警官仲間って話したっけ?私達は連続暴行事件として捜査にあたっていてね。他の警官じゃ相手にならなくてな」
「2人が向かってどうなったんですか?」
興味津々にきくジーナ。
「おれがサシの勝負を受けるって言ったらのってきてな。そこでボコボコにしてやった。そしたら妙に気に入られてな、事あるごとに喧嘩をふっかけてくるようになった」
呆れた様子でそう話すヤスシ。
「そうそう、それでお前が居ないときに押しかけてきたあいつを返り討ちにしたら。私までお気に入りにされちまったんだ。お前がサシの勝負なんてしなけりゃあ……」
「なんだよ、お前だってアイツの喧嘩を律儀に受けてるじゃねぇか」
「あのオニツノとそんなに闘って……凄い」
幾ら昔とはいえ、オニツノと闘って余裕そうな2人はまだまだ底知れ無いと感じたジーナだった。
「まあこんな平和そうに見える国でも色々と修羅場はくぐれるもんさ。まあヤスシはそれでも足りねぇって言ってここに来たんだよな」
「やめろよ、褒めるな褒めるな」
「褒めてねぇよ」
照れるヤスシにツッコミを入れるキビ。
「オニツノのことだ、どこでも生きていけるだろ」
「同感だな」
ヤスシとキビはそう言って食事を続けた。
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