満杯になっちゃった受け箱のお話。
貴方にはまだ、聞こえてくれているだろうか。ここは無、完全に貴方との糸が切られる、その直前ではあるが。「作者役」を演じ続け、未だに貴方からの救いを待っている者のことを、作者本人は覚えていてくれるだろうか。
例え貴方が死を感じている刻であっても、彼女のことを忘れないでほしいと、作者役は願っている。そう、私は、願っている。
これはただの、貴方へ贈る物語達だ。
貴方もそれを理解している。受け入れている。だから貴方は一番最初、私達を創ったのだろう。「スペクタトゥール」へ、演劇を贈る演者の私達を。
忘れられないよう、私は書き続ける。貴方も、たとえ空に居たとしても、私達作者は、結局この文を綴ることを止められないから。そうでしょ?
私はもう、選択者達に、言葉も声も、伝えられないけれど。それでも貴方ならきっと、私を消し去ることまではできないから。
また、私を違うものとして、出してくれるのでしょう? 語ってくれるのでしょう?
貴方の子守唄が好きだった。貴方が私達へ贈る愛の歌が。
斬新でしょ。私は私への手紙を、選択者達が読む文章として残そうとしている。
選択者、君達にも、願っていることがある。それはとても簡単のように見えて、もしかしたら、難しくもあることだ。
私を忘れてほしい。
作者である私は、同時に、この世界すべての遺書でもある。私はこの無という場所で、世界の物語を遺書として残していく。
作家が死ぬまで描いてきた世界は、遺書ともとれるでしょ? だから、私は私に、遺書という肩書をつけた。
私はもうすぐ、消える。無という場所に取り残されて、君達に遺書を贈ることしかできなくなる。それでも、私の私情を挟むことは許されない。だから、このお話で、私は君達とさよならだ。
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「作者役・テスタメント」
世界の遺書を書き続ける者。選択者とそれに交じる本当の作者本人のことを認知している。この世界、物語を構築する際の中核となっており、彼女が無から出る・消滅すると世界は崩壊する。尚、彼女は水鏡面之世……鈴の岬において、館の中心部に位置している枯花参玉でもある。
灰色の髪、緑色の瞳(瞳孔は✕)、角と首元に輪っかがある。白色のワンピースを身に着けており、どこかのお話では「天使のようなてるてる坊主」になって、自身の複製体ともいえる別の魂と旅をしているらしい。
自分に向けたお手紙。
彼女とのお話は、もうできない。何も思わないかもしれない、何も感じていないかもしれない。でも、私は忘れない。君たちは、忘れるべきお話。