なまこ教授、なろうのランキング変更について語る
なまこ教授、なろうのランキング変更について講義する。
さて、先日1月16日付けでなろうのランキング表記が変わった。
これは昨年末に予告されていたことであり、一般の、特にライトユーザである読者にとっては「ふーん、そうなの」というものであろうが、我々作者や、コアな読者層、あるいはなろうを利用する出版社の編集者などにとってはかなり注目度の高いものであると言えよう。
君たちもわざわざこのエッセイを読みにきたと言うことはこの三者のいずれかではないかね?
さておき、まずは振り返りだ。
昨日までのランキング攻略、これは書籍化という意味ではなく単純になろうのランキングで1位を取る、注目度を高くするためにはどのような戦術・タクティクスを以て執筆すべきであっただろうか。
君たちも理解しているであろう。
それが現実的に可能であるかは別として、『ジャンル:異世界恋愛で、テンプレに沿ったまたは利用した、良質な短編または数万字程度で終わる連載作品を、連日投稿する』ことだ。
異論はあるまい?
例えば私自身なろうで幾度か日間総合ランキングのトップに立ったことがあるが、それは全てジャンル異世界恋愛の作品である。
その他のジャンル、エッセイなどで1位を取ったこともあるが、それが総合ランキングのトップになったことはないということだ。
もちろん先述した通り、短編を連日投稿したとて書籍化に直結するわけではない。
当たり前だが短編が本になるのは難しいのだ。最近では異世界恋愛のアンソロジー短編集やアンソロジー漫画も増えているとはいえな。
では恋愛や短編が強かったのはなぜか?
ランキングのトップページの一番上に表示されるのが恋愛だからである。また表示されるのが日間ランキングであるからだ。
少し前までは主人公が異世界転移・転生した作品はなろうでは不人気であった。さらにそのずっと前は転移・転生の作品が主流であったのに。
なぜか。転移・転生ものは別ランキングに隔離されたからである。隔離といってもPCからならほんの1クリック、スマホからだと2クリックでたどり着ける場所だ。だがその1クリックの差が圧倒的なポイント差を生んでいたことを忘れてはいけない。
異世界恋愛(非転生)の日間ポイント1位が1万を超える点数を稼いでいたのに、恋愛(転生)の1位は5千にも満たないことはよく見かけられる光景であった。
故になろうに投稿する作者たち、その中でもランキング入り、あるいはランキング入りからの書籍化を目指しているような作者たちはランキングがどう変化したのか、これにより読者はどういった導線で作品を見るようになるのか。
ここの分析を行うべきだろう。
無論、君がそのような些事は考える必要がないというのであればそれを否定する気はない。
それはそうだ。例えば執筆そのものが趣味であり読者の多寡や反応など気にしない作者だってなろうには数多く存在するのだから。
ただまあ、そういう作者はそもそもこのエッセイを読む必要はないのではないかな。
このエッセイは主にランキング攻略を考えている作者向けのエッセイであると改めて伝えておこう。
ではなろうの表記はどこが変わったであろうか?
公式がブログに記載してある。以下引用。
▼リニューアル範囲(PC版、スマートフォン版)
・ランキングTOPページ
・総合ランキング
・ジャンル別ランキング
・異世界転生/転移ランキング
上記リニューアルと併せて、小説家になろうインデックスページに掲載している月間ランキングを、連載中作品と短編作品の2種類の週間ランキングに変更いたしました。
また、今回のリニューアルではランキングからより作品を探しやすくするため、以下のランキングを追加しております。
▼新規機能
・ジャンル別ランキング、異世界転生/転移ランキングに以下を追加
・累計ランキング
・連載中、完結済、短編といった作品種別ごとのランキング
・作品の注目度を指標とした新たなランキングを追加
というところである。
まあ、この文章から判断するよりは、実際に表示される画面がどう変化しているのかを見ていった方が有用であろう。
ちなみに以下、全てはスマートフォンでの表示を元に説明することとする。なぜなら現在なろうを読む読者のうち2/3がスマートフォンで作品を読んでいるからである。つまりPCに対して影響力が倍あるためだ。
まずは『小説家になろう』トップページから。
1:『月間ランキング』→『週間連載中ランキング』に変更
2:ランキングの初期表示が『注目度』という新項目になっている
次に『小説を読もう!』トップページ。
3:特になし
そしておそらく最も影響の大きいであろう『小説を読もう!』の『ランキング』トップページ。
4:一番上に『ランキング一覧』というボタンが追加されている。
5:次に総合ランキングが表示されている。
6:ジャンル別日間ランキングの表示順は変わらないが、別ページ表示であった異世界転移転生ランキングが[その他]の下に移動している。
最後に個々のランキングについて。ランキングページの『もっと見る』をクリックした後の変更点だ。
7:上部一行目に『日間』〜『累計』を変更できるタブ。二行目に『連載中』『完結済み』『短編』『すべて』を変更するタブができた。
8:ランキングが50位で区切られた。
9:『あらすじ・作品情報』がクリックしないと表示されなくなった。
こんなものか。順に見ていくとしよう。
1:『月間ランキング』→『週間連載中ランキング』に変更
表記こそそうなっているが、少々実際に表示されているものとは異なる。最初に表示される『注目度ランキング』は確かにその全てが連載中のものであるのだが、それ以外のものは、
連載中ランキング1〜5位
短編ランキング1〜5位
という表記になっているのだ。
2:ランキングの初期表示が『注目度』という新項目になっている
今回追加された新たなランキングである。
この注目度という概念に関してはX上などでは憶測で呟いている者もいるが、まずは運営の解説くらい見ろと言いたくなるな。それを記載すると以下のようなものである。
「作品を閲覧された方のうちブックマークをした人数が多い作品」を注目が集まっている作品とし、一定の条件を満たした連載作品を対象にブックマーク数とユニークアクセス数を元にした独自の指標で集計し順位の決定を行っています。
ということだ。つまり長編連載作品のうちのブックマーク率だ。これを見た上で、条件とか独自の指標ってなんだ言っているなら良いのだがね。その指標は正直よくわからない。
少なくともエタっている作品はここから外すなどという条件はつけるべきだったと思うね。
3:特になし
厳密には追加されているタブはある。
例えば『ランキングから探す』の項目に『注目度ランキング』のボタンが追加されているなど。
ただ、読者を作品に導く導線として大きく影響を与える変化はないと考えられる。
4:一番上に『ランキング一覧』というボタンが追加されている。
クリックすると右に長々とランキングのリストが出る。
このリストはこの下に表示されるものと基本的には変わらない。
5:次に総合ランキングが表示されている。
今まで総合ランキングは別ページだったが、これが最上位となった。しかも日間、週間、月間、四半期、年間、累計とかなり長々と表示される。
6:ジャンル別日間ランキングの表示順は変わらないが、別ページ表示であった異世界転移転生ランキングが[その他]の下に移動している。
今までは日間ランキングが最上位に表示されていたのが、上記の通り総合ランキングより後になった。
また転移転生ランキングが別ページから、トップページの最下部に移動した。
7:上部一行目に『日間』〜『累計』を変更できるタブ。二行目に『連載中』『完結済み』『短編』『すべて』を変更するタブができた。
『日間』〜『累計』は今までも移動できたが、1クリックで表示できるものではなかった。
『連載中』などを今までランキングから抽出することは『検索』機能を使わねばできず、ランキングから直接見られるようになったのは初めてである。
8:ランキングが50位で区切られた。
今までは1〜100位、あるいは1〜300位がずっと一画面に表示されていたが、50位毎にページが区切られるようになった。
1クリックしないと51〜100位が表示されないという意味である。
9:『あらすじ・作品情報』がクリックしないと表示されなくなった。
今まではジャンル別ランキングでは表示されていたあらすじや作品情報のページが1クリックされないと表示されなくなった。
ちなみにPCで見ると旧来通り最初から表示されている。
こんなものであろうか。
さて、これら新環境であるがどうであろうか?
今のところ見る限り、X上での作者等の反応はネガティブなものが大半を占めている。
君たちにまず注意して欲しいのは、必ずしもこれを額面通り捉えて短絡的に改悪と考えてはならないということだ。
UI、ユーザインターフェースの変化は素人目にも一目瞭然で改善とわかるような変更がなされているのではない限り、慣れているUIが変更されれば改悪であるように見えるものだ。
そういう意味で、少なくとも劇的に改善されたというわけではないのは間違いない。改善なのか、大差ないのか、改悪なのか。これは数日以上場合によっては年単位の使われようを見て判断されるものであろう。
これが慣れれば使いやすいと思うようになるのか、他サイトへの読者・作者への流出を促してしまうものなのかは現状ではまだわからない。
個人的な分析というか見解を言えば、大きく改善されたと思う部分もあれば、改悪と感じる部分もある。
見づらくなったという反応については変更に不慣れであると言うのもある。だがそれを抜きにしても見づらくなった理由はある。
短期的に判断のつきかねる部分もある。
注目度ランキングについての良し悪しは不明、現状は悪し。
と考えている。
それぞれ見ていこう。
まずは明らかに改善されたなと思う部分である。
7:上部一行目に『日間』〜『累計』を変更できるタブ。二行目に『連載中』『完結済み』『短編』『すべて』を変更するタブができた。
特に今までできなかった二段目。
初期状態で『日間』の『すべて』が表示されているので、基本は今まで通りではあるし、ライトユーザがわざわざタブクリックして検索するかは定かではない。
少なくとも最初はしないだろう。
ただ、短編はもう飽きたというようなユーザ、あるいは逆に今は時間ないし短編読みたいなどという読者のニーズを受け止めることができるこれは明確な改善点であると言える。
なにより、異世界恋愛ジャンルなどで顕著であるが、ランキングを短編が占めていて新作長編がそもそもランキングに載れず沈んでいくというのが大きく軽減される。各100位まで表示されるためだ。
例えばデザイン変更直後の16日、日間異世界恋愛ランキング100位のポイントは186ptである。
ここに入れている連載中の作品はわずか20作品にすぎない。なおかつその大半は書籍化作家の作品であると聞けば、異世界恋愛で長編を連載して戦うのは極めて厳しいと思うのではないか?
だが今回のランキング改定により、連載中100位まで表示されるようになった。ポイントで言えば34ptだ。
どうだろうか? 可能性を感じないかね?
長編作品を探している編集者などにとっても作品を見つける可能性が上がっているように感じるのでね。私はこれを大きな改善点と思うのだ。
一方で改悪はこれ。
9:『あらすじ・作品情報』がクリックしないと表示されなくなった。
これはあらすじの価値が低下したということを意味し、説明的な長文タイトルの優位性が強化されているように感じるところである。
まあ、現状すでに長文タイトルが支配的であるのは変わらないので、この傾向が変わることはないだけと考えても良いと思う。
なろうでの長文タイトルを否定する気はないが、書籍化した時に長文タイトルは本質的にデザイン面で不利なのでな。
あまり長文タイトル一辺倒であってほしくはないという作者の意見と思ってくれればいい。
他は概ね判断がつきかねるところであるがデザイン面の話、ランキングトップページのレイアウトに関して。
5:次に総合ランキングが表示されている。
6:ジャンル別日間ランキングの表示順は変わらないが、別ページ表示であった異世界転移転生ランキングが[その他]の下に移動している。
このあたりが今回の見づらいというXの評価に繋がっているのではないか。
単純に今までの日間ランキングの上下にデータが追加されたのでページのスクロールが長すぎるのだよ。
意図はわかるとも。恋愛の上に総合があるのだ。恋愛一強と呼ばれたところから緩やかにファンタジーが増えていくだろうというのはな。
だが、長い、情報が多いのは単純にマイナス評価になりがちだ。
特に異世界転移転生ランキング、もう全体に吸収されているのだしわざわざ下につける必要もなかったのではないか、そう思うところもある。
また、
・今までは作品名の下にアンダーバーがあったのが無くなったこと。
・フォントサイズか文字の太さ、カラーが変更されていること。
・ランキングページから作者名にリンクが貼られていること。
が見づらいということに影響を与えている。
下は便利といえば便利な機能ではある。今までは作品をクリックしなくては作者ページに移動できなかったので。
だが、タイトルと作者名がどちらも同色になってしまっていてタイトルが見づらい。作品のポイントも赤字→灰色であり、全体的にデザインが大人しい、平面的でのっぺりしている、無機質さを覚えるレイアウトである。
『小説を読もう!』側のランキングに関してはこのくらいだ。次いで『小説家になろう』のトップページ改変についてだが……。
1:『月間ランキング』→『週間連載中ランキング』に変更
2:ランキングの初期表示が『注目度』という新項目になっている
これだな。純粋にこれは私には分からないところなのだが。
そもそもここのランキングからユーザは作品を探しているのだろうか? というものがある。
もちろんここから読む読者が皆無であるはずはない。特に初日はここが初表示というのもあり、『注目度』に表示された作品のアクセス数はある程度跳ねているのが確認できる。
ただ、今までなろうトップページの月間ランキングに入ったからと言って日間ランキングが劇的に跳ね直すということはなかったように思う。
長くなろうにいる読者にとっては影響は比較的限定的なのではないだろうかと想像がつく。またここを操作していると、次回からは操作した後のランキングが表示されるという仕様もあるし。
だが初めて『小説家になろう』を訪れた人にとってまず見えるタイトルはこれになるのである。影響がないとは言えまい。
それから考えれば、注目度ランキング上位にジャンル、コメディーやSFの作品が入っているのもあり、いわゆる弱小ジャンルの作品にスポットが当たる可能性があるのは非常に良い点であると言えよう。
またここが連載中の長編のみが入るランキングであるというのも、現状の短編の多さから長編有利に変えていこうというなろう運営の意図も見える。
つまり施策の方向性としては間違っていない。
最悪なのは、上述した通り、エタ作品がここに入っているということだ。なろうのトップページ、つまり顔である。そこを新規ユーザがクリックして、最初に見る言葉が、この作品は数ヶ月、数年更新が止まっていますとかどう考えても良い印象を与えないだろう。故に最悪である。
更新が止まっている作品は注目度ランキングから弾くぐらいのことはしてもらいたいものである。
一方、注目度以外のジャンル別ランキングに関しては、ここの作品が連載中作品5点、短編5点がランキングとして載っていることに対し、2つの懸念を覚えることだろう。
1つは完結作品がないことだ。つまりいわゆる完結ブーストが弱体化することである。
もう1つは異世界恋愛など短編が多いジャンルでは短編率を減らせる施策であるが、ファンタジーや歴史などそもそも長編率が高いジャンルでは短編に5枠割かれてしまっていると長編が載りづらくなっているということである。
影響は限定的かと思うが、今後の動向に注目したい。
さて、そろそろまとめに入ろう。
作者として強く興味がある、重要なのは異世界恋愛・短編が強すぎるという部分がどう変わるかという点についてではないだろうか。
総合ランキングが優位になったため長期的に見れば恋愛が少し減りファンタジーが増加すると考えているし、1ジャンル別100位以下の長編が表示されるようになったため長編の価値が増していくように思う。
注目度ランキングも長編には追い風、短編には向かい風だ。
ただ、当然のことであるが現状がすぐに大きく変わるというような劇的な変化はないと考える。
だが、1/19現在、異世界恋愛の最高ポイントが8150pt、100位のポイントが190ptと、変更前よりポイントが2割ほど減少しているのは明らかである。
読者が長編を読めばそれだけで1日に生まれるポイントの総量は変わる。
これがその意味であるならこの変更は成功だろう。
これが作者や読者の他サイトへの流出を意味するのであれば、施策は失敗となる。
これはもちろんまだわからないところだ。
結局のところ我々はなろうの運営に与えられた戦場で戦うしかないのだ。
UI、ユーザインターフェースの変更に文句もあるかもしれない。だがそれはなろう運営に意見として送るしかない。それだって反映されるとして時間はかかるだろう。
しかし作品はまた別だ。君が素晴らしい作品をなろうから世に送り出していってくれることを望んでいるし、私もまたその一人なのだ。
小説家になろうの発展と、互いの健闘を祈る。