デートプラン
「ほんとうに行くの?」
彼女は、計画を練るぼくにそう問うてきた。
「やっぱりいやだった?」
「ううん。そんなことないよ。ほんとに行くならわたしも心の準備をしないとなって」
ぼくたちが住む場所から電車とバスで3時間くらいの場所に、有名な遊園地があった。大型のジェットコースターやお化け屋敷など、スリルがあるものに定評がある場所なのだが彼女はどれも苦手だった。ほとんどのことに対して図太さがあり、なんでもかかってこいという姿勢でいる彼女のふだんの様子からすると意外な弱点を見つけたという感じだったので、一緒に来てくれるという読みにかこつけて、苦手なものが多い場所に行ったときの反応を見てみたいという意地の悪い気持ちがぼくのなかに芽生えていたのだった。それに、お互いの趣味が合わないことは往々にしてあるのだから、機会を見てこういうことをするのはお互いを理解するために良いことなんじゃないかと、恋愛経験があまりないなりに考えていた節もあった。
できる限り無駄なく動きたかったぼくは、事前に当日の動きを一から考えていた。
「ほんとに大丈夫?」
今一度確認する。
「うん。せっかくだし行こうよ。わたしは一緒に行ければどこでもいいよ」
彼女のことばは常に、目に見えぬものの存在を端正に映し出しているかのようでありまっすぐに読み取ることが出来た。
ぼくはそんな彼女がとても好きだった。素直な感情表現、彼女の黒くて艶のある髪の毛が落ちゆく太陽の光で茶色く透明に変わるあの時間、しゃべろうとする前に髪の毛を手ぐしする癖や、靴を履いたら必ず左右2回ずつつま先をとんとんと当てること、歩いているときにときおり意味もなくおなかに数秒手を当てること、いつも足首くらいまでの長さのスカートをはき、それがひらりひらりと波を作っていること。どんな小さなことでも、すべてが愛おしくて大事に思えた。彼女の不幸はいまやぼくにとって最も忌むべきものだった。
ぼくはなんのとりえもない人間ではあるが、彼女の幸せのためならすべてを投げ打てると本気で思っていた。片眼を閉ちょきちょきと指を開いたりまた閉じたりして、指の間から差し込む光に目を細めて遊んでいる彼女が、そうしながら毎日を何不自由なく送れるようにしてあげたかった。




