レシピ1 まずは材料を用意します
12話で完結します。
こちらの作品はシリーズ第2作目になります。
第1作目の『シャルトリューズの秘伝レシピ』も読んでいただけたら嬉しいです。
シャルトリューズは、いつもより気合が入っていた。
なぜなら、今日は勝負の日だからだ。
いつもよりも念入りに髪を梳かし、洋服もちょっと良いものを選んだ。
滅多にしない化粧もした。
鏡で自分の姿を確認する。
(……よし、少しは印象の良い感じに見えるかしら……?)
いろんな角度で自分の見え方を確認する。一分の隙もないことをチェックしたシャルトリューズは、仕上げに特製薬用酒を飲んだ。
自らの筋肉を一定時間覚醒させ、本来の筋力の130%の出力を可能にする、シャルトリューズ特製の筋力増強薬用酒を――。
「じゃ、父さん。私、いってくるわ」
シャルトリューズは薬用酒を満タンに詰めた大きな樽を「よっこらしょい!」と豪快かつ軽々と背負うと、隣町に売りに行くため父に声をかけた。
「シャルトリューズ……すまないねえ、父さんがハッスルしすぎて朝帰りなんかしちゃったから……。
こんな大切な日だって知ってたら、ちゃんと早く帰ってきてたのに……ふわああぁぁぁ……」
「私の殺意が向かわないうちに、口を閉じて速やかに寝て」
シャルトリューズは大あくびをしている父に、殺意を込めた極寒の眼差しを向けると、殺意を込めて扉を閉め、殺意を込めて家をあとにしたのであった。
・・・・・
村の広場を通過しようとしたシャルトリューズは、不穏な雰囲気を出している集団がいるのに気がついた。
イエーガーと仲間たちだ。
彼らは粗暴で口も悪く、村の人たちはあまり関わらないようにしている。
通りすぎていく村の人たちも、誰も彼らと目を合わせようとしない。
シャルトリューズ自身も、関わらずに済むのならそれに越したことはないと思っている。からまれるのは時間の無駄だ。
ただしここ最近は、イエーガー単体と接する機会もあり、イエーガー自体が一人でいる分には悪いやつじゃないことが分かった。
それは分かっているのだが、仲間といるとやはり雰囲気が悪い。
シャルトリューズは、無視して通過することにした。