白昼夢06
あけましておめでとうございます。去年と年末年始は身内に風邪をうつされるばかりでした。皆さまもどうかお気をつけください。
執筆速度は以前に比べたら遅いですが、今年もちまちま書いていきたい所存です。
理多は僅かな必需品と、どこで手に入れたのか単車に乗って移動していた。
この空間に迷い込んでからの日数もそこそこ長いようで、いろいろな生き抜く術を身につけていた。
まず最初に、まとが理多から教わったのは『夜は出歩かない』ことだった。
まとが遭遇した存在は勿論、夜は昼間以上の危険が潜んでいる。
ゆえに、夜は適当に見つけた家でやり過ごすそうだ。場所は問わない。
勿論、戸締りは怠らないこと。
理多が話した「外で悲鳴が聞こえたと思ったら途中で途絶えた」話は、まとを震えさせるのに十分だった。
ふたりで単車に乗り、畑と家々を通り過ぎていく。
時折、化け物とすれ違ったりしたが、どの化け物も単車のスピードに追いつくことはなかった。
集落を抜けた先、ふたりは次の場所へ続いているトンネルにたどり着く。
山の下に作られたトンネルは、立ち塞がるようにフェンスで塞がれていた。
横には年季の入った木造の看板がある。経年で掠れた文字をまとが読み上げる。
「せき、ひ? を壊し、者……道は、開く?」
「どういうこと?」
看板には謎の文章が書かれていた。ふたりは顔を見合わせ、同時に首をかしげる。
「せきひ……せきひってなんだろ。せきひはひらがなって、漢字が思いつかなかったのかな」
「新朝末に現れた農民反乱軍のことかもよ」
「違うと思う」
単車を路肩に停め、トンネルの近辺を調べる。
フェンスには片開きの扉がついており、南京錠で施錠されていた。
「南京錠ね。せきひを壊さないと通れないわけか」
理多が南京錠に触れた瞬間、重い音を出して地面に落ちる。一瞬硬直するが、横からまとが「あーらら」と呟いたことで我に返った。
「壊したの?」
「違うよ! 勝手に落ちた!」
バツが悪そうに南京錠を拾う。と、理多はそこである違和感に気づいた。
「これ見てよ。鍵穴がない」
そう言って、南京錠の元来なら鍵穴がある箇所を見せる。
「……誰かが開けると思って、中途半端に置いてたんじゃない?」
「意味がわからなすぎる。鍵穴のない南京錠を用意しといて、敢えて閉めないなんて」
「それもそうだね」
南京錠は道端に捨て、フェンスを開ける。トンネルの先は真っ暗で、永遠の闇が続いてるかのように思えた。
「いくの?」
「行くしかない。帰るんだろ、家に」
「うん。帰りたい」
単車に乗り、フェンスをくぐり抜ける。
トンネルの中はライトに照らされてもなお、先はずっと暗いままだった。
この先になにがあるのか、言いようのない不安に襲われる。しかしアユムとの約束もある、不安をなぎ払うようにまとは前を見つめた。