白昼夢04
間が空いてしまいました、すみません、
熱中症などにはお気をつけてお過ごしください。自分はずっと不調のままです。
倒れるように気絶してから、どれだけの時間が過ぎただろうか。
まとが意識を取り戻したとき、辺りは暗く冷え込んでいた。冷たい床に横たわり、固く冷え込んだ体を起こす。
まとの体は寒さで震え、喉も極限まで乾いていた。起きてすぐ、水が欲しいと思った。
上り框に座り、真っ暗な周辺を見渡す。なにもない。
それだけで十分な答えだろう。まとが僅かに縋った希望は、はじめからなかったのだ。
落胆すると、凍えた両腕をさすった。寒い、ここの夜は半袖半ズボンでは厳しいことも悟った。
なにからなにまで、上手くいかない現状に怒りすらわいてきた。
「なにか、なにかないかな……」
戸を開けたままだった為、月明かりで玄関が微かに照らされている。この明かりを頼りにしようとした時、ふと外からなにやら声がするような気がした。
「……ん、なに?」
最初は気のせいかと思った。が。たしかに聞こえる気がする。
好奇心が勝り、恐る恐る顔を少しだけ覗かせて外に耳を傾ける。たしかになにか聞こえる、気のせいではなかった。
なんだろうか。さらに耳を澄ませる。
――遠くでなにやら、カラスのような声がした。カラスだろうか、カラスに近い人の声みたいだ。
鳴いてる? 泣いてる? うめき声?
まるでもがき苦しんでいるような、そんな鳴き声がどこからか聞こえた。
(なんだろ、もっとよく聞こえないかな……)
その音をさらに聞き取ろうと、外へ身を乗り出す。その瞬間、遠くで聞こえていた声が不意に真横からした。
途端に息が止まる。
カラスだと思っていた声は、性別も老若男女かもわからないうめき声だっだ。近くになった分、おぞましさがより鮮明になる。
そのうめき声は、時折り「くるしい」「たすけて」と言っているように聞こえた。全身の毛が粟立つのを感じる。
恐怖で叫び声すら上げられない。否、叫んでいたらきっと助からなかっただろう。
おまけにまとは見てしまった。声の正体を。
それは頭や四肢がなく、しかしそこに棒立ちしている肉塊のようだった。月明かりで鮮明に見えてしまった分、ショックも大きい。
なにせ、その肉塊は黒かった。同時に黒焦げたような臭いも鼻腔をついた。
どんな末路を辿れば、そのような形に成り果てるのか。考えたくもなかった。
まとは必死に息を殺し、音を殺して影に隠れる。
両手で口を押さえ、声の主がいなくなるまで耐え忍ぶことにした。無限にも思えるような時間が過ぎ始める。
目が覚めても変わらなかった現状を恨みながら、今にも泣き出しそうになった。
しかし、だからといって現状が変わるわけではない。
家の前にいる存在へ早くいなくなれと祈りながら、まとは朝がくるのを待ち続けた。