最終話 私があなたの名を呼びます
「ルシア……」
「ぐっ!!」
「この程度でもまだ駄目ですわね」
アイリスはルシアンと共に名前を呼び、それに耐える訓練をおこなった。
毎日毎日名前を少しずつ呼び、時には倒れる日もあったという。
「殿下、もう体が……」
「ダメだ、どうしてもアイリスと名前を呼び合いたい!」
「殿下……」
その言葉を信じ、そして100日目でようやくその時が来た。
「ルシアン……さま」
「…………こない。発作が……」
「まあ! やりましたわね!」
「ああ、ようやく大丈夫になったようだ」
◇◆◇
ある老夫婦が窓際で手を繋いで語り合っている。
「アイリス」
「なんでしょう、ルシアン様」
「あの時の日々を思い出すと、なんとも奇妙だなと思うよ」
「ええ、子供に遺伝しなかったのが幸いですわ」
「あの発作はつらかった……」
「私も辛かったですわ。あなたの名前が呼べないなんて」
「それはすまなかった……」
二人の手にはきらりと指輪が光っていた──
新作「呪われ令嬢、王妃になる」が連載開始しました。
呪いに侵された令嬢(29歳)と、ある秘密を抱えた若き国王陛下(33歳)の溺愛シンデレラストーリーです!
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