第2話 私が特訓して差し上げます
「え? 原因不明の病?」
倒れたルシアンは心臓発作のようなものが起こっていたが、しかし現状はすでに正常になっているため、原因がわからないのだという。
「倒れた殿下の回復を待つしかないな」
「お兄さま、私のせいでしょうか?」
「お前のせいじゃないよ、大丈夫。殿下ならすぐに目を覚まされるはずだ」
その言葉通り、ルシアンは翌日には目を覚ましてアイリスと寝室で言葉を交わしていた。
「殿下、申し訳ございません」
「なぜアイリスが謝るんだ。倒れたのは私のせいじゃないか」
「ですが……」
ルシアンはそっと優しくアイリスの頭を撫でると、ふっと微笑んだ。
「なぜ倒れたかは私にもわからないが、医者はもう大丈夫だと言っている。だから大丈夫だ」
「そうだと良いのですが……」
そうして原因不明のまま、日常が過ぎようとしていたが、思わぬことで事態は急展開を迎える。
それは、アイリスがルシアンとお茶をしていたとき、ふとアイリスは彼の名を呼んだ。
「ルシアン様」
「──っ!!!」
その言葉で、なんと彼は再び倒れ込んでしまったのだ。
医師によればおそらくそのアイリスの「ルシアン」という言葉に反応しているのではないかと。
「『ルシアン』に反応している?」
「はい、それで過去のカルテを探してみたのですが何とも奇妙なことがわかりまして」
「なんですか?」
「実はルシアン様のお父上、つまり国王も同じ症状で何度か倒れたことがあるそうなのです」
「え……」
「その時の原因は魔女の呪い。魔女の呪いで『好きな人に名前を呼ばれるとドキドキして鼓動が異常に早まる』ようになったと」
「そんなことが……」
「あるようなのです。ですので、その遺伝かと……」
アイリスはベッドで眠るルシアンを見て、そして近づき手を握った。
「私は一生殿下のお名前をお呼びできない……」
すると、医師がアイリスに向かってアドバイスをする。
「治るかもしれない方法があります」
「──っ!」
「単純な話です。慣れさせればいいのです」
「慣れさせる……」
「少しずつ呼びながら心臓が耐えられるようにすればいいのです」
「なるほどっ! 呼び続ければいつか殿下のお名前を呼ぶことができる!」
その日からアイリスとルシアンの呪いとの闘いが始まった。
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