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Lost Fantasia  作者: 眞弥。
第二部 -Prologue-
95/96

死に至る海岸線 前半

4作でまとめる予定でしたが、構想が膨らんだので4話目を分割する事にしました。

これは、レオン達が勇者パーティーに任命されるより前の出来事である。



「おい、あいつらも駄目だったってよ!」


「これでいくつのパーティーがあの依頼に失敗したんだ…?あの街に何が出たってんだよ?」


「さぁな…噂じゃ死霊が出たとか…」


「俺は冒険者にも死人が出たって聞いたぞ」


「冗談じゃねぇ。そんな依頼やるくらいなら迷宮(ダンジョン)潜ってた方がマシだぜ」


「…」



ギルド内に静寂が走る。そんな中。



「戻ってきたぜー!」


「帰って来たよー!!」



静まり返っていたギルド内に、場違いな声が響き渡る。

冒険者達がその声のする方向を見ると、思わず表情が緩み、その場が和む。



「どーしたのみんな?腐った肉でも食べた?」


「ハッハッハッ!シャル、相変わらずだな!」


「…もしかして、なんか真面目な事でも喋ってたのか?」


「フッ。そんな訳ねぇだろ、ノア!相変わらずデケェ声出しやがって!ちゃんと依頼は達成できたんだろうな?」


「あったり前よ!なぁ、シャル?」


「ふっふーん!見よ、私たちの今日の成果を!」



シャルが袋を持ち上げ、掲げてみせる。



「ほーお?何をやって来たってんだ?」


「えーとね…レオン、今日の私達の成果教えてあげて!」


黒蜂(ブラック·ビー)の討伐です。街の外れの方に巣を作っていると依頼があったので」


黒蜂(ブラック·ビー)だと…?お前らCランクに上がったばっかだよな?適正ランクはBの筈だぞ?」



レオンの説明に冒険者の1人が疑問を口にするが、そこにバーニィが補足を入れる。



「1個上のランクの依頼までなら許可が降りれば受けられるじゃないですか。ギルマスが俺達を信用して許可を出してくれたんですよ」


「別に信用だの、信頼だなんて話じゃねぇよ。お前等ならやれる。そう思ったから任せただけだ」



途中から話を聞いていたギルドマスターのバートが階段から降りてきながら、話に割って入る。



「それを信頼してる、って言うんじゃないのかい?」


「そうだそうだー!」


「素直じゃねぇぞー!」


「思ってる事はちゃんと言えー!」


「あ゙ぁ?」


「「「スミマセン」」」



副ギルドマスターのリンの言葉に追随して、他の冒険者達が野次を飛ばすが、バートの眼光に怖気づき、言葉を引っ込める。



「まぁそんな事はどうでもいい。レオン、お前等に話がある。ちょっと上まで来い」


「どうしたんですか?」



◇◇◇



「実はな…」


「えぇっ!?…いった!ちょっギルマス!拳で殴る事無いでしょ!」


「まだ何も話してねぇだろうが!真面目に聞け、ノア!」


「この馬鹿は放っといてください、ギルドマスター。本題はなんですか?」


「オリビア?俺ほんのちょーっと傷付いたよ?」


「こいつだ。お前等に頼みたくてな」



バートが1枚の依頼書を机に置き、差し出してくる。



「海岸線の調査…これを私達が?」


「あぁ。本来ならこの程度の依頼気にするまでも無かった。が、この依頼の指定ランクがな…」


「B以上…僕達はまだCになったばかりですけど。というより、調査依頼にBランク以上って随分出しますね?」


「その通りだレオン。それだけでも納得いかないが、もう一つある。この依頼を受けたパーティー全てが失敗している」


「全て失敗…!?」


「あぁ。あまり他のパーティーの事を話すのは良くないでな、ここだけの話にしてくれ。調査に向かった全てのパーティーは、この依頼を続行不可として辞退している」


「全パーティー続行不可…そんな依頼を僕達がやるんですか?」


「目指すんだろ?先代勇者以降ただの一人も出ていない、AAAランク…通称Sランクを」


「!!!」


「お前等は冒険者になってしばらくも経ってねぇが、その実力は確かだと俺は感じている。受けてくれるな?」


「ギルマス…俺らやりますよ!」



バートの言葉でやる気になったノアが声を上げるが、その状態に一言釘を刺す。



「実力“は”だがな!勘違いするなよ、トラブルメーカーども!」


「ギルマス、今回はそのぐらいで…。ノアのこれもいつもの事じゃないですか」


「バーナード…お前がこいつと妹を甘やかし過ぎたんじゃないのか?」


「ははは…気を付けます」


「全く…本題に戻るぞ。依頼者には既に使いを出してCランクのお前等が行くと話を通してある、が念の為俺の書いた任命状を渡す。何かあればそれを使え、お前に預ける」


「ありがとうございます」


「後もう一つある。どうやらこの話が噂場として王都の方にまで広まってるらしくてな…。もしかすると、依頼の取合いになるかもしれん」


「何ですか、そいつ?」


「王都に限らずだがな、人が集まる所に偶にあるんだよ。依頼を受けた奴じゃなく、違う奴が依頼を片付けちまう事がな」


「そうなんですね」


「まぁ、こいつに関しちゃ全て依頼を取った奴が悪いとも言い切れねぇ。採集や駆除依頼は早い方が良い。そこも含めて冒険者だからな。問題になるのは指名依頼や指定依頼をぶん取っちまう事だ。こっちの方がめんどくせぇのよ、ギルドとしては」



オリビアはバートの言葉の真意をすぐに理解する。



「依頼を達成した時の報酬で揉めるという事ですね」


「流石だな。そう、依頼者にすりゃあ指名依頼でもない限り、どのパーティーが依頼をこなそうと構わねぇから奪ったそのパーティーに報酬が支払われる事になる。だが、そうなると取られた側のパーティーからすりゃあ前もって準備やらで時間を掛けていたのに無報酬だ。納得する筈がねぇ。…とは言うが大体取られた側が黙るしかねぇ。“余所のパーティーに依頼を奪われた”なんて恥以外の何ものでもねぇからな」



レオン達に冒険者同士の慣例を教えるバート。比較的新人冒険者である彼らには聞いた事がない話だったので、珍しく全員が真面目に聞いていた。



「長々話しちまったが、これで一番の問題になるのは『指名依頼』をぶん取っちまう事だ」


「なぁギルマス…なんで指定依頼より、指名依頼の方が問題になるんだ?」


「簡単な事だ。指定依頼は一定の条件を満たしているパーティーが受けられるが、指名依頼はそのパーティーに依頼されてるものだ。多発する事はねぇが、ごく稀にあっちまう。何でこれを説明するか分かるか?この依頼は既に指定依頼からお前等の指名依頼に切り替えてある。だが最初は指定依頼だったやつだ。多くの奴が知ってる。お前等の指名依頼となると狙われる可能性が出てくる」


「俺達の指名依頼である事が、なんで狙われる事に繋がるんです?さっき稀にしかないって言ってたのに」


「お前等は対外的に見ればCランクパーティーに上がったばっかの新人冒険者だ。そいつらに指名依頼が出されたとなるとお前等でも出来るような簡単な依頼だと思われる可能性がある、そういう話だ。だから早く準備して邪魔が入る前にさっさと片付けちまえ」


「…って言ってたけどよぉ…。ほんとにこんな依頼狙ってくる奴居るかぁ?」



数日後。レオン達は直通の馬車に乗り今回依頼が出された街、 ブレイトに向かっていた。ブレイトは海沿いに発達した街であり、漁業が盛んである。



「居るかもしれないだろ。冒険者の中には態度の悪い奴だって居るし、自分の事しか考えてない奴だって居る。この依頼を狙ってくる泥棒紛いも居ないとは限らない」


「…レオン、ノア。気を引き締めて行くぞ」



バーニィの言葉に強く頷く2人。そんな男3人の出す緊張感を壊す声が横から響く。



「ねーねー!あれそうじゃない?関門が見えて来たよ!結構大きそう!」


「バーニィ…そんな張り切りすぎる必要無いかもしんねぇよ?」


「…そうかもな」



◇◇◇



ブレイトに入ったレオン達。まずはこの街のギルド支部へ向かう。



「まずは依頼の内容を聞かないとどうにもならないよな」


「俺達が何を解決するのか、詳しい話は聞いてねぇし。でもよ、ギルマスが言うには海岸線の調査って話じゃんか。何がそんな難しいんだろうな?」


「全てのパーティーが断念した理由は教えてくれなかった…。多分調査だけで終わるような単純な事じゃない筈だ」


「戦うって事!?」


「なんでそんな楽しそうなのよ。戦わずに済むならその方が良いんだからね?」


「はーい」



言葉とは裏腹にわくわくした表情を抑えようともしないシャル。その様子に少し困ったような顔をするオリビアであった。



「お待ちしていました。バート殿より話は聞いています。貴方がたのパーティーがこの依頼を担当してくれると。ですが…本当によろしいのですか?」


「何故ですか?」



レオン達を出迎えたブレイトのギルド職員は不安げな表情を見せる。



「既に聞いているとは思いますが、この依頼を受けたパーティーは全て辞退されています。宰相様にも先日手紙を出した程です。ですので、お一人で構いません。この依頼を受けるのに相応しいか確かめさせていただけませんか?」


「な…自分達はギルドマスターから直接話をされてここに来たんですよ?それは失礼というものじゃー」


「なら、私がやるよ!」



バーニィが職員と話す最中、シャルが割って入ってくる。



「おいシャル!」


「お兄ちゃんは真面目すぎ。こっちの人だって呼びたい人と違うのが来たら確かめたくもなるでしょ。何すればいいですか?」


「理解が早くて助かります。シャル様、でよろしいですかね。こちらへどうぞ」



職員は併設されている闘技場らしき所にレオン達全員を案内する。



「こちらは普段は新人冒険者の講習や登録、昇格試験に使う場所です」


「へ〜、広ーい!」


「で、シャルは誰と戦うんだ?」


「それは勿論私ですよ」


「も、勿論なのか…?」


「よし、始めよ!」



シャルとギルド職員が対峙する。シャルは籠手を装着し、魔力を通す。



「シャル様が普段戦うようにやってもらって構いません。遠慮はいりません。私の怪我等は考慮せず、やめと言うまで来てください」


「なら、遠慮なく!」



シャルが正面から飛びかかる。籠手に流した魔力を使い、魔力の砲撃をいくつも撃ち込む。

職員はその魔力の球を1つ残らず正確に叩き落とす。



「は、はえぇ…!」


「いや、シャルも悪くないぞ」



地面に落とした事により発生した煙幕を使い、背後に回るシャル。



「魔闘拳 -Lv3-」



籠手の周囲にスパークが走り、シャルの拳が空を切る。が、死角から放ったその攻撃も腕を掴まれ防がれてしまう。

しかし掴まれた事を認識した瞬間、相手の背中を蹴り、自らに回転を与え拘束から脱出する。



「シャルのやつ、あんな戦い方も出来たんだな」


「俺達が戦える事を証明しようとしてくれてるんだよ」


「なかなか良い攻撃をお持ちだ。しかし、これ以上術が無いのであれば、この依頼を任せる事はー」



シャルはその言葉の続きを話させなかった。

彼もまた、話している余裕は無くなっていた。何故なら先ほど落とした筈の魔力の球が、自分自身とシャルを中心に周囲を囲んでいたからである。



「怪我、考慮しなくていいって言ってたもんね。でもこれ喰らった後でやめ、なんて言える??」


「…私とした事が」



攻撃が迫る前にその場を離れようとするも、地面が泥濘んでおり、足を取られバランスを崩す。



「魔法は普段使わないけど、水球(ウォーターボール)も使い方次第だもん。とりあえず回避は間に合わないよね」



◇◇◇



この模擬戦でレオン達は力を認められ、依頼を一任される。



「申し遅れました。私、このブレイトで副支部長をしております、スライと申します。依頼が解決するまでの間、宜しくお願いいたします」


「こちらこそ、よろしくお願いします。それで僕達が調査する海岸線とは?」


「ご案内しましょう」



スライはレオン達を調査場所である海岸線に連れていく。

そこには彼ら以外にも人が居た。



「父さん!しっかりしてよ!帰ろうってば!」


「…うるさい。静かにしてくれ。そろそろ迎えが来るんだ…」


「今日もでしたか…」


「どういう事です?スライさん」


「数ヶ月前の事です。この街の住人が1人、この海岸で亡くなっているのが見つかりました。当初の調査結果では寒季である事が原因による死であると結論づけられます」


「まぁ…必ずしも無い事では無いと思いますが」


「ですがその5日後、調査を行った冒険者パーティーの1人がここで死亡しているのが見つかります。パーティーの証言によると、調査初日の夜から彼は様子がおかしかったと話していました」



スライの話を黙って聞くレオン達。スライはそのまま話を続ける。



「ですが、これは始まりに過ぎなかったのです。これ以降5日に1人、この海岸線で死亡者が出るのです。既に20人以上が亡くなっています。そしてこちらでの調査の結果、死亡者は同じ行動を取る事までは分かったのです。亡くなるまでの5日間、日が出ている時間全てをこの海岸線で過ごします。やがて段々とその者は意識が朦朧としてきます。そしてあそこに居る人のように迎えが来ると言うのです」


「被害者に共通点などは…?」


「分からないのです。それを含めて調査をお願いしたい。ですが1つ、ここに長居してはいけません。ここに来る事が多いと選ばれる可能性が高まります」


「…」



自分達が予期していた以上に重い事態に何も話せないレオン達。

そうなると当然の疑問が浮かんでくる。



「何故すぐにでも国に連絡して騎士団を派遣しないんですか!?」


「…来ないのです。我々も再三嘆願書を送っていますが『調査対象が明確で無い以上、騎士団を派遣する事は出来ない』と…」


「なんだそりゃ!国王はどういうつもりだ!」


「王国の助けが無いこの事態に巻き込んでしまい、申し訳ない。どうかご協力いただきたい」


「答えられるかは分かりませんが、僕達も出来る限りの事はします」


「ありがとうございます」



◇◇◇



「マジかよ…ここ居たら死んじまうんだろ?俺やなんだけど」


「代わる代わるここに調査に来る事にしよう。この場に来るのは2人にして、残る3人は聞き込みかな。それでどう?バーニィ」


「レオンの案で良いと思う。どう割り振る?」


「私ここで調査したい。さっきの人にも何か出来る事があるかもしれないし」


「なら俺がついて行こう」


「よし、今日の所はレオンとオリビアに任せた。俺達は周辺の調査と聞き込み行ってくる」



レオンとオリビアをその場に残し、3人は街に聞き込みへ向かう。



「レオン、私あの人達に話を聞いてみたいのだけどいいかしら」


「勿論。俺も一緒に聞くよ」



先ほど見かけた親子に話を聞きに行く2人。

少年はろくに話そうとしない父親を見て、涙を浮かべている。



「なぁ君、少しいいかな?」


「へっ!?な、何…誰あんたら?」


「私達は冒険者よ。この街の調査を頼まれたの」


「…また?もうそんなの何人も来たよ。調査なんかしなくていいよ、どうせあんたらも何もしないで帰るんでしょ?」



オリビアの冒険者であるという紹介にふてくされる少年。



「ふーん…君は諦めるんだ。良いの?君のお父さんが危ないのに?」


「良いわけないだろ!!でも…どうしろっていうんだよ!」


「なら教えて、私達に。君のお父さんがいつからこうなってるのか。その前に何かいつもと違う事は無かったか」


「…3日前に父さんここに来たんだ。何か怪しい物は無いかって。何も見つけられなかったけど、日が沈む時に黒い船を見たって言ってた…。そしたら、その日からだんだん変になっちゃって…」



少しずつ涙ぐむ少年。自分の父親が危ないという事を分かっているのだろう。



「3日前だね?なら期限は明日…。君、名前は?」


「お、俺テオ…」


「テオか、いい名前だ。僕はレオン」


「教えるのが遅れたわね。私はオリビア」


「テオ、君のお父さんを僕達に守らせてくれ」



◇◇◇



その日の夕方、レオン達はギルドに集合し、集めた情報を共有して話し合いを行っていた。



「…悪い。こっちはあまり情報は集まらなかった。関係者に話を聞きに行ったが、殆ど取り合ってもらえなかった。やっぱり、何処も動かずに被害者だけが増える現状に皆相当失望してるみたいだな」


「俺達は現場に居た親子から話を聞けた。と言っても、親父さんは迎えが来ると呟くばかりで話せる状態じゃなかった。テオという少年から聞いた話だと、親父さんが独自に3日前調査に行って黒い船を見たらしい」


「…日暮れの時か?」


「あぁ。そっちでも同じ情報を掴んでたか。信憑性が高くなってきたな」


「他に、有用な情報はあるかい?」



レオン達の会話に何者かが割り込んでくる。その手にはバーニィ達の調査が纏められた冊子が握られていた。



「あ、あれ…?俺いつの間に!」


「ふぅん…1日かけてこれか。まぁ、Cランクパーティー程度じゃこんなものだよね」


「-瞬光-」



レオンが瞬光を使い、冊子を奪い返す。



「やるね。この僕が奪われるとは…」


「突然何だあんたは!」


「今最もSランクに近い冒険者…。ヴィンス·サーライカムだ。そして、君達に代わってこの依頼を達成する者でもある」


「馬鹿言ってんじゃねぇよ。そんなのあんた一人でできるわけねぇだろ」


「そうだね、君は一人では出来ない。何故なら出来ないと心で決めつけているからだ」


「…は?」


「だが僕は違う。信じているんだ。僕に出来ない事は何も無い、と。だからその依頼は僕がやろう。君達はそれ等を置いて故郷にでも帰りたまえ」


「この依頼は俺達が任されたんだ。あんたに渡す気はねぇな!」


「そうだ、それに俺達は約束した。少年の父親を助けるとね」


「…なるほど。ならば勝負をしよう。どちらが先にこの依頼を片付ける事が出来るか。先に解決した方が報酬を受け取る。それでどうかな?」


「何言ってるんだ、そんなの受けるわけー」


「いいぜ!やってやらぁ!」



ヴィンスの提案をバーニィが断ろうとするも、割り込む形でノアが乗ってしまう。



「では決まりだ。僕の実力を知るといい」


「ノアぁ…」



◇◇◇



迎えが来る期限当日。レオン達は海岸線で黒い船の到着を待っていた。

既に迎え撃つ準備は出来ている。



「日が暮れるまであと少し…。確認しとくぞ。俺とシャル、ノアは黒い船を確認次第、乗り込む。その時シャルは索敵頼む。オリビアはテオの親父さんの守護。レオンはその二人を守る。良いな?」


「おうよ!」


「あったり前!」


「必ず守ってみせるわ」


「俺も居る。二人に危害は及ばせない」



全員の意志を確認し、決意を固める。

その後すぐ、日が沈み黒い船が遠くから現れた。



「結構でかいな…。よし、行くぞ!」



ノア、シャル、バーニィの3人が船を目指し駆け出す。

それより早く船に乗り込む者が居た。



「遅いね、君達。それでも冒険者かな?」



対決の相手であるヴィンスである。彼は水の上を走り、高く跳ぶと船の縁を掴み侵入に成功する。



「おいバーニィ!早くやってくれよ!」


「分かってる、急かすな!-身体能力(フィジカル)-解放。シャル!」


「まっかせて!」



筋力を解放したバーニィに向かい、走り出すシャル。目の前まで迫ると、飛び上がる。



「行くぞ!」



自身の両腕を足場として、シャルを船まで打ち上げる。そのままノアも続く。



「よ…っと!」



脚に力を入れて飛び上がり、2人の後を追うバーニィ。



「シャル、ノア!何か居たか!?」


「…見れば分かるよ、お兄ちゃん」


「何…そういう事か」



3人の前に広がっていたのは、既にヴィンスに討ち取られたと思われる大量の魔物の死骸であった。



◇◇◇



「もうすぐだ…迎えが来る…!」


「父さん!そんなこと言わないで!帰ろうよ!」


「あれだ…!どうか私を、彼女の元へ…!」



そう呟くと、テオの父親はいきなり立ち上がり、ゆっくり歩き出す。



「-拘束(バインド)-」



オリビアが魔法を唱え、魔力の輪で手と足を拘束する。バランスを崩し、前かがみに倒れる。



「ごめんねテオ。少し手荒な方法を使うわ。こうでもしないと、貴方のお父さん自体に危害が及ぶの」


「だ…大丈夫。信じてるから」


「ありがとう」


「離せ…!俺は向こうに行く!」



レオンが彼の肩を押さえ、動かないようにする。そのまま右手を振り上げると、頬に平手打ちする。



「しっかりしろ!父親として恥ずかしくないのか!自分の子供に心配かけて…。ちゃんと息子を見ろ!何故テオが泣いている事に気付かない!」


「う…」


「貴方の事情は分からない。だが心を強く持って、家族と共に生きてほしい」



その言葉の後、テオの父は気を失った。



「テオ、お父さんを叩いてすまなかった。許してくれとは言わない。でも分かってほしい」



テオはレオンの言葉に無言で頷く。



◇◇◇



「かなり魔物の数が多い…。が、寧ろそれが良い!立ち塞がる困難は僕に力を与えてくれる!」



亜光速のごとき速さで魔物達を斬り伏せていくヴィンス。



「ふぅ…こればかりはこの体に感謝しないといけないね。おや、ようやく来たのかい」


「あんたが倒し残したやつと戦ってたんだよ」


「おや、それは失礼。だがあの程度に手こずっているようではまだまだだね。僕は既に元凶の目星は付けている」



ヴィンスは船の甲板から下に続く階段を降りていく。



「お、おい!待てー」



ノア達がそれに続こうとするも海中から突如現れた触手のようなものに妨害を受ける。



「なんだよこれ…。こんなの見たことねえぞ!」


「これを倒さないとあいつに追い付けない…!二人とも!出し惜しみは無しだ!」


「行くよ。魔闘拳-Lv2-」



扉の前で立ち止まるヴィンスはそれを蹴り破る。



「やぁ。邪魔するよ、彷徨える幽霊」



ヴィンスがやって来たのは船長室と思われる場所。

その目の前には黒いマントにフードを羽織った何か。



「なんじゃ、人の部屋に入り込んで随分と無礼な奴じゃのう…」



彼の方向に向き直すと、僅かに髑髏が覗く。

周囲は霧のようなものが立ち込め、それが実体かどうか判断できない程である。



「それは失礼。だが一つ。あなたは人ではない」


「くくく…お互い様じゃろうが。()()()()()をしていようと儂に誤魔化しは効かん」


「似たもの同士という事かな。だがここであなたを消せば僕の栄光は守られる!」



黒い髑髏に突撃を迫るヴィンス。剣を振り下ろすが、金属と間違う程に硬いその腕で止められる。



「儂に物理攻撃など寄せ。魔法を使え」


「こんな場所で魔法など使えるものか!」


「成る程な…久々にここまで来た奴だけあって馬鹿じゃあないようじゃの。この儂に毒魔法を使ってくるとは。お主、物理攻撃に魔法を乗せてくる方じゃったか」


「戦い方にスタイルはあるよ?しかし、時と場合というものがある。こういった場所で大規模魔法を使うのはよほど策を練ってあるかー」



ヴィンスが言葉を話しきる前に頭上で大きな爆発音が響く。



「よほど策を練ってあるか…何じゃ?」


「何も考えていないお馬鹿さん、だろうね」



◇◇◇



「よっしゃぁーーー!!!バーニィ!一本ちぎったぜ!」


「何やってんだノア!危ねえだろ!ここで大規模魔法なんて使うんじゃねぇ!その大剣で斬りゃ良いだろうが!」


「確かにな。そっちの方が簡単そうだ!」



ノアはバスタードソードを構え、まだ何本もある触手に斬りかかっていく。



「おらぁ!」



ノアの一撃では切り倒せず、半分程が切れるのみだった。しかもその切断面からゆっくり再生している。



「一撃じゃあちょっと足りなかったか…。なら、もう一回同じとこ切ってやるよ!」



ノアが身体強化を使う。更にその剣に炎魔法を付与し、触手を斬りつける。斬られた側は海に沈み、再生しようとするも切断面が焼けているせいで再生が上手くいかない。



「おし!これなら悪くねぇな!」


「君、動くな!」


「え?」



ノアの真横を吹っ飛ばされて来たヴィンスが通り過ぎる。空中で回転し、縁を足場にすると敵に斬りかかっていく。



「儂の駒が大分死んだのう…。これはこれで使いようがあるというもの。行けい!」



周辺に散らばった魔物の骨を浮かべ、矢のようにヴィンスに向かわせる。

大多数の攻撃は剣で防ぎ、一部は躱していたが、攻撃がヴィンスの頬を掠める。



「やめだ」


「ん?」


「は??」


「君、こいつの討伐は任せるよ」



そう言うと船から降りようとするヴィンス。ノアだけでなく、髑髏も理解が追い付かない。



「待て待て!意味分かんねぇだろ!」


「僕は今キレそうなんだ」


「はぁ??だから、何言ってるか分かんねぇってー」


「僕を!これ以上!!怒らせるな!!!」



ノアの胸ぐらを掴み、船の縁へ叩きつける。

先ほどまでの余裕そうな表情は一切見られない。



「な、なんだよ急に…」


「僕はこの件にはもう関わらない。僕が放棄したこの依頼、やれるものならやってみるといい」


(こいつできない事は無いとか言ってたくせに…)


「たりめーよ。こいつは元々俺達の依頼だ。必ず俺達が解決してみせる」


「さらばだ。彷徨える幽霊」



船から降り、立ち去るヴィンス。

少し呆気にとられるも、ノアは敵の前に向き直る。



「さーて、何か締まらねぇけどよ。あんたの相手は俺だ!」



構えるノアを横目に通り過ぎる髑髏。

その視線の先に居たのは。



「儂とした事が何という見落としを…。あやつの魂など必要ない、最早あの娘一人で事足りる…!そう断言出来る程の上質な魂の持ち主!」



髑髏は自身の周囲に漂う黒い霧を手元に収束させると一気に放出させる。

オリビアはまだ気付けていない。



「オリビアー!避けろーッ!」



ノアが叫ぶも僅かに遅く、オリビアがその攻撃を認識した時には既に眼前まで迫っていた。



「うおおおおお!!!!」



レオンがその間に割って入る事に成功する。

攻撃を剣で受け止め、威力が弱まってきたタイミングを狙い、打ち返す。



「まさか儂の攻撃をはね返すとは…。まぁよい。今日は引き返してやる!しかし、明日その魂貰いに来るぞ。どんな手を使ってでもな!」



甲板上に突風が吹き荒れ、ノア達3人は下船を余儀なくされる。

レオン達と合流するも、彼らの表情は決して芳しいものではなかった。

投稿する度お久しぶりですと書いてます、眞弥。です。

ゲームも多忙も言い訳に更新を放ったらかしにしていました。

これからは本腰を入れて更新頑張ろうと思います。

かつて程のペースはまだ難しいですが、物語を始めた以上終わらせる責任があります。今一度、お付き合いよろしくお願いします。


閲覧ありがとうございます。

感想、誤字脱字等の報告よければお願いします。

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