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乱世の転生者  作者: 情熱のデンプシー
プロローグ
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プロローグ②


 その世界では、「彼」は商人であった。

 

 ビジネスというものに心酔し、35歳の若さにして、世界をまたにかける大企業を立ち上げた。


 世のため人のため、家族のため友のため、金と権力のため。


 「彼」の行動理念には、もちろんそういった理由もあるだろう。

 しかし、それらはあくまで一面であり、本質的な理由は少し違う。


 本質的な理由は、ただ純粋に、楽しいことがしたいから。


 これが「彼」の本質である。


 「彼」は弾丸が内臓を貫き、絶命する瞬間まで、生きたいように生きて、果てていった。


 「彼」の最期の言葉は、


 「あー、楽しかった」

 

 である。


 常人のそれとは思えない。


 偉大なる王の片鱗が垣間見える。


 しかし、それは「彼」のことを外から見た評価に過ぎない。

 「彼」とて一人の人間である。


 俗世にまみれ、飲み会ではしゃぎ、繰り返されるイッキのコールに逆らえず、道端で嘔吐する。

 こんなことしょっちゅうだ。


 よく週刊誌にネタにされている。


 …………。


 いや、いや、いや、


 エピソードが両極端すぎる。


「彼」という人間を人間として語ることは、非常に難解だ。


「彼」という人間を正しく語れるものがいるとすれば、

 それは「彼」だけだろう。


 だから、ここで語り部を交代しようと思う。

 お疲れさまでした。


 ここからは一人称の「彼」に任せようと思う。


 さあ、「彼」に視点を移すとしよう。


◇◆◇◆◇


 人生は楽しんだものが勝者だ。

 陳腐な言葉だが、真理だと思う。


 少なくとも、「俺」はそう思う。


 だから、1度きりの人生を精一杯楽しむことにした。

 

 そして、


「うおえええええええっ。もう絶対酒は飲まねえ。固く誓うよ、マジで」

 

 飲み会の帰りに、これまで1000回は繰り返した言葉を恨み言のように言う。


 そうやってくだをまきながらチンピラ然として夜道を歩くと、後ろから誰かが近づいてきた。

 気配に気づき、後ろを振り返ろうとすると、


 銃声が鳴る。


 ……日本だよ、ここ。


 不思議なことに、すぐに死ぬと分かった。走馬灯見えたし。

 反抗も抵抗もできず、ただ理不尽に殺される。

 なんだかそれは負けた気分だ。

 だから最期の負け惜しみに、こう言ってやった。


 「あー、楽しかった」


 そして死んだ。

 確実にオワタ。

 ご臨終。



 それから、長い間暗闇の中にいた。

 その長い時間に考える。考え抜く。


 俺の人生に、果たして心残りはあるだろうか。


 (や、あるだろ)


 両親は他界しているし、子供はいない。

 妻はたくましいから、未亡人って地位を利用して若くて金持ちなイケメンを捕まえる気がする。

 会社も軌道に乗りまくってるから俺がいなくても問題ない。


 だから、責任とかそういうのでなく、ただ純粋に。


(え?)


 ふいに光が見えた。

 

 なんだこれ。

 

 気が付くと俺は泣いていた。ぎゃーぎゃーと、まるで赤子のように…。

 

 いや、赤子のようにではない。赤子だ。目に映る自分の小さな手足を見て思った。

 そして、俺を抱き上げている老婆が嬉々として叫ぶ。

 

 「陛下!元気な男の子でございますよ!!」


 え?


 その後、俺は見知らぬ女性に抱かれていて、俺の事を満足げに覗き込む男性がいて…。

 

 これは、つまり、

 生まれ変わった…?


 楽しかった人生。それが再び始まった。


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