プロローグ①
これは、とある世界のとある時代。
300年以上続く長い長い戦乱の世。
大陸で巻き起こる乱世の波に、
人々はもがき苦しみ、生と死を積み重ね、
それでも人々は愚かにも争うしか術を知らない。
そんな時代のこと。
一人の王が現れた。
「彼」は開明的な魔術師であった。
「彼」は一騎当千の剣士でもあった。
世の流れを見据えた商人でもあり、世の陰に潜む隠密でもあった。
「彼」は言った。
「コミュニケーションの基本はね。相手の良いところを見つけてあげることだよ。そのためには色々な『良い』を知らなきゃいけない。世の中にある全部の『良い』を知ることができれば、そいつは世界一の人気者になれるだろうね。俺みたいにさ」
完璧超人め。
「彼」のことをよく知らない者は、口をそろえてそう言う。
しかし、「彼」の家臣たちは知っている。
「彼」がどれだけのことをしてきたのか。
膨大な下積みを乗り越え、血のにじむ努力をこなし、挫折と敗北を繰り返してここにいる。
そんな「彼」を家臣たちは一様に言う。
くそったれ完璧超人め。
「あっはは!手の抜けない性分でね!でも良かったよ。おかげでみんなの良いところを知ることができた。カナミの真面目さ。ローランの執念。クウガの悪知恵にリットの情熱。みんな俺にない才能だ。みんながいたから、ここまでやってこれた」
こういう男だ。
いつも明るく、笑みを絶やさない。
誰より傷つき、誰より裏切られ、誰より苦しみ、それでも決して折れない、諦めない。
いつだって、気づけばへらへら笑っている。
時代を変え、世の価値観を変えた、世界で最も偉大なる王。
その名は『ディムル・エメラルド』
民を愛し、民に愛され、後に300年の太平の世を作り上げるこの男。
そんな王の物語をここに綴ろう。
まず初めに、「彼」を語るには決して外せない、「彼」の前世の話から始めようか。
初投稿です。
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