この国にもう少し、一途な人が増えるといいなと願います
「殿下の後宮はいつご準備出来ますか?」の続編です。
「レオナルド兄上、良かったですね〜!種無しじゃなくて!兄上の継承権が剥奪されたら、隣国の侵略待ったなしでしたよ!」
ううぅ、弟にもいろいろバレてる。
つらい。すごいつらい。
「アレクシスごめんな。お前が苦労してるの全然知らなかった。側妃様は父上に嫌われてるな〜とは思ってたんだが」
「ああ、アレは仕方ないです。父上が隣国訪問時に、薬盛って隠し通路から部屋に侵入して襲った工作員です。暗殺者じゃないかと隣国に突き出したのに、妊娠薬飲んで抱いてもらっただけだとアレが主張しまして、父上の記憶がなく証拠がなかったから、国際問題にならないよう仕方なく連れ帰ってきて幽閉してるんですよ。身近な手足になる人員はもう排除してありますが、まだ国内の工作員が私を国王にして属国にしようと暗躍してます。だから兄上、気をつけてください」
あ、嫌われてるとかのレベルじゃなかった。
全然平和じゃないよ、我が国。
しかし、なんで私知らないんだ?
「アリス様がいらっしゃいました」
護衛騎士が婚約者のアリスを案内してきた。
「お、来たか」
「レオナルド殿下、アレクシス殿下、ごきげんよう」
「アリス嬢、お久しぶりです」
「アリス、隣へ座って」
検査結果出るまで、アリスに会わせて貰えなかったんだよね。
昨日まで生きた心地しなかったよ。
「レオナルド殿下、教師陣の調査結果が出ました。閨教育担当の夫人は、裏に借金があり買収されたようです。隣国までは辿れませんでしたが、ハニートラップが仕掛けやすいようにだと思われます。今後の教育方法の変更が確定しましたわ」
「だろうね」
「私は国内貴族に警戒して、実技は高位娼婦に頼んだけど」
「それです。実技は高位娼婦、教育内容は監視も兼ねて男女の教師をつけます」
アレクシスの警戒心すごいな。
高位娼婦は、貴族知識やマナーの試験合格と病気の定期検査がされている人だ。
普通の娼婦とは違って、職業人として地位があるから信頼できるらしい。
「他の教師では、歴史担当が駄目でしたね。自分に隣国の血が入っていた為、若い頃苦労したことから、殿下が隣国に悪感情を持たないように誘導していました。他の生徒にはそこまであからさまなことをしていなかったので、発覚しなかったようです」
ええぇ…あの教授好きだったのに。
「後は…殿下の人徳故と言うか、難しい所なのですが、側近達が迅速な排除を行っていた為に、殿下まで問題が露見しなかったようです」
「え?どういうこと?」
「殿下にも、今まで何度もハニートラップと思われる女性や、工作員が接触しようとしてましたが、側近達が事前に排除していました。側近達は、殿下のおおらかな性格が危機を感じて損なわれるのを嫌がっていたようで、見えない所で排除して殿下に進言をしていなかったそうです」
え!あいつらそんな事いつしてたの!
「側近が優秀過ぎたわけか」
「まあ、そうですね」
「そんな優秀な側近が、兄上の女性関係の排除をしなかった理由は?」
「殿下には、普通の問題ない未亡人の情報を渡してくれてたみたいですよ。殿下の偏った知識は仕事上問題なかったため露見せず、女性関係はお忍びやプライベートのため殿下は語らず、対応出来なかったようです。侍従が対応するべきでしたが、彼は殿下が正しいと盲目な人でした。殿下が優秀故に、今まで問題を起こさなかったので、見過ごされていたようです。彼は、再教育が決まりました」
おおぅ、幼い頃からついてくれてたのに、申し訳ないな。
「ああ、だからいないんだね。兄上至上主義みたいな人だったもんね」
「ええ、鬼気迫る勢いで再教育受けてますわ。後は、私ですね。初めての女性関係管理で、後手に回り過ぎました。最初の頃の側近達の紹介した未亡人をさっさと後宮に入れるか、問題のある女性関係は早期に殿下に確認するべきでしたわ」
「あーその、ごめんな」
ううぅ、責められた方がマシだあ〜
その後は、少し雑談してからアリスは退室した。
とりあえず、苦労かけたアリスに、なにか贈り物しよう。うん。
「レオナルド兄上、この国は医療が進んでいるからか、性に奔放です。避妊薬や妊娠薬、血縁検査がここまで浸透してる国は珍しい。だからか、独自のルールが生まれている」
あー確かにそうだな。
他の国の王城で、医療塔なんて見たことないしな。
「薬関係の輸出や産業が多いのは間違いないね」
「ええ、この国の医療技術や薬学は宝です。しかし、独自の文化は厄介です。女性関係管理の法律なんて、この国だけですよ。この国は、平民でも裕福なら一夫多妻が多い。他国は、貴族でも一夫一妻が珍しくありませんから」
「そういえば、そうだな。我が国で、一夫一妻の貴族なんて珍しいな」
「過去の事件で、我が国は荒れました。だから、まだまだ政略結婚が主流なんです」
「うん?それがどうした?」
「兄上はまだ教わってないようですが、政略結婚の上、更に女性関係管理で苦労する正妻にも、救済措置があるんですよ」
「ん?」
「性に奔放なお国柄が、男性だけなわけないでしょう。正妻には、愛人を護衛や執事、侍従として側に置くことが許されます」
「そうなの!?」
「ええ、はっきり言って、結婚相手はビジネスパートナーと見ている人がほとんどです」
「はあー、なるほどねー」
「兄上、アリス嬢のこと結構好きですよね?」
「ふえ!?」
「今のままだと、間違いなくビジネスパートナーで終わります。後宮に3人迎えたら、挽回する機会はなくなりますよ」
グハッ
母に続いて弟も、的確に心を抉ってくる。
「う、うん。アリスと話してみる」
「私は、厄介な血筋もそうですが、この国の独自文化が合わないので他国に出ます。兄上とアリス嬢が上手くいって、この国にもう少し、一途な人が増えるといいなと願います」