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一瞬体が浮くような感覚がしたがすぐにその感覚が消える。どうやら転移させられたようだな。
目が見えるようになり確認をすると、後ろに扉があり目の前にはダンジョンが続いている。そして隣にはアイリがいた。
「どうやら扉の先に転移させられたみたいだな」
「そうですね。気を付けて進みましょう」
俺とアイリは気を引き締めなおし先に進んでいく。
ある程度進んで分かったことだが俺たちの選んだ扉の先は道がいくつにも分岐しておりまるで迷路のようになっている。このダンジョンの途中の階層でも同じように迷路のような階層はあったが、分岐の数やその大きさはおそらく桁違いに多い。
もちろん途中でモンスターも現れたが、その強さは49階層のモンスターより少し強い程度であり、少し時間はかかるが俺とアイリで十分倒せるレベルのモンスターだった。
「それにしてもかなりいろんな種類のモンスターがでてくるから、俺がこっちに来て正解だったかもな」
「そうですね。それにしても進めば進むほど分岐が増えている状況ですので、まだあとどれくらいかかるかまったく想像がつかないですね」
「そこだよなぁ。食料は100年以上は余裕で食べていける量の備蓄があるから問題ないとしても、逆の扉を選んだ4人と連絡がとれないってのがきついなぁ」
ちなみに食料は魔法の袋の中に大量に備蓄があるためまったく気にせず進むことができる。この袋の中では劣化がないため、時間が経過しても問題はない。
「このままあまりに時間がかかってしまうと私たちが死んだと勘違いしてしまうかもしれないですね」
「もし俺たちがほんとに死んでいたとしたらあいつらはどうなるんだろうな……」
「……閉じ込められてしまうんでしょうか?」
「もしそうだとしたら、逆にあいつら4人が死んでいたら俺たちも閉じ込められるってことになるなぁ」
「イービルと一緒なら閉じ込められてもなんとかなりそうですね」
俺はそういって笑うアイリを見て、アイリと同じ扉に進んでよかったと再認識した。
◇◇◇◇
それから1ヵ月が経った。
あいつらはもう最奥の扉のロックを解除しているだろうか。解除しているとして、これだけの時間を待ってくれているだろうか。疲労も溜まっており少しマイナスな想像をしてしまうことが増えてきた。
ダンジョン探索において長期間の探索はつきものとはいえ、1層にかける時間としてはさすがに長すぎる。強いモンスターを何体も倒しているため俺たちも強くなっており、段々と戦闘で疲れなくはなってきているものの、精神的にはやはり疲れる。どれだけ進めば最奥に辿り着けるかがわからないというのが精神的な疲労につながっているように思える。
そしてそれから数日探索を続けていきついに俺たちは最奥にある扉を発見した。
「……やっとたどり着いたな」
「長かったですね。金色の扉ですしこれがスフィンクスの言っていた最奥の扉で間違いないでしょう」
「よし! たしか扉に触れてロックを解除するんだったか?」
「そうですね。逆の扉に進んだ4人もロックを解除していれば完全にロックが解除され、求めるものが現れるという話でしたね」
「長かったなぁ……」
「そうですね。これでやっとこのダンジョンの攻略も完了ですね」
「いったいどんな秘宝があるのか少し楽しみだな」
「私は少し緊張してきました」
「よしっ! じゃあ扉に触れるぞ!」
俺はそういって扉に手を触れる。
その瞬間扉が激しく光る。
『よくぞここまで辿り着いた。これで半分のロックは解除された』
姿は見えないが頭の中にあのスフィンクスの声が響いてくる。
『もう半分のロックを解除することで貴様らの求めるものが現れるだろう』
「…………」
「…………え?」
「……どういうことだ?」
「……もう半分のロックが解除されていないということですか?」
「……まさか、あいつらがロックを解除できてない?」
「そんな……」
「あいつらの相手はボスモンスター1体のはずだ。もう既に1ヵ月以上の時間が経っていることを考えると……」
「……じゃあもう4人は……。だとすると私たちはここに閉じ込められてしまったということでしょうか……」
「いや、閉じ込められたかどうかはまだわからない。一度入り口の扉まで戻ってみよう」
「……そうですね。行ってみましょう」
俺たちは入り口の扉まで歩き出した。