01 祝:一万人目の転生者
あなたは一万人目の異世界転移者となりました。
したがって、当神界から記念の特典を付与させていただきます。
ご希望の得点に横にあるチェックボックスにチェックをつけて、この用紙を回収箱に提出してくたさい。
1、予言の書
2、チート
3、伝説の武器・装備一式
…。
周囲は白い空間。
そんな中、目の前の事務用机には箱と筆記具と用紙があった。
私はそれを見て「馬鹿じゃないの?」と思った。
達の悪い夢か、悪戯だと。
けれど、どこかに潜んでこちらを見ている誰かの気配はないし、仕掛けられたカメラどころか何も見つからなかった。
無視をしてその場を去ろうとしたけど、どこをどう歩いてもなぜかいつの間にか元の場所に戻ってきてしまう。
小一時間程無駄な足掻きをした私は、悟ってしまった。
ああ、「死んだんだな」と。
よく覚えてはいないけど、何らかの理由によって死んだ私は、どこかの世界に転生するらしい。
いわゆる異世界転生と言う奴だ。
オタクを馬鹿にし、中二病を馬鹿にし、フィクションを馬鹿にし、ラノベ愛好家を馬鹿にしていたこの私が、よりによってこんな目に合うとは、とても皮肉が効いている。存在しない物なんて、何の救いにもならないのに。
そこまで考えて分かった事と言えばわずかだけ。
自分が死んだらしい事。
何かアクションを取らなければ、この状況は何も改善しないらしい事。
私は筆記具を手に取って、忌々しい思いを叩きつけるかの様に、目の前の用紙を真っ黒に執拗に、時間をかけてぐちゃぐちゃに塗りつぶした。