喰らいの森の姫 共通1 麗しき悪魔
これはどこかの世界にある奇妙な国での一人の少女の物語。
貴女が彼女、彼女は貴女である。そう思えば良いのです。あるいは、まったくの他人として見るでも構わない。
ただただ、見届けることが重要なのですから。
「こんな森に人なんて住んでいるのか?」
森には恐ろしい魔女、もしくは怪物が住んでいる。そんな噂があり、ギルドへ調査の依頼が舞い込んだ。
「うわああ!」
「どうした!?」
叫び声が聞こえて、冒険者の青年はその場へ向かう。
そこには植物のツルに絡まれ、今にも食い殺されそうな身なりの良い男がいた。
「なんだありゃ……」
冒険者は驚くが、目の前の男を救助する。金銭目当てというのもあった。
「ありがとう」
「貴族様がなんでこんな危険な森に? 人喰い魔女がいるかもしれねってのに」
「それだよ!」
貴族はテンション高く、
■
学園の庭園には偽物薔薇が咲く季節。
絶滅した植物や生き物は科学的に再建されて、簡易に育てられる。
虫がいないから、全て人間の手で交配する。
「ふふ……お花さん、今日も綺麗ね~」
なんて毎日声を掛けているのだけど、植物は本当に声が聞こえているのかしら。
「るんるーん」
「見てグリティーア人の馬鹿女が庭園で植物に話かけてるわ」
「おっおい……」
「どうせ聞こえやしないでしょ」
「後でどうなっても知らんぞ」
「ふん、なにびびってんの?」
「あーあ、僕は知らない」
「え、なんで当たんないの!?」
グリテア人の私は緑豊かな育ちだから、植物が好きだ。
美しいものばかりの、この世界を作った人に感謝している。
あら、この薔薇だけ白から青に……まあ綺麗だからいいか。
「そうだ……!」
他の色も植えよう。きっと綺麗になる。
「いたっ!」
指を棘でさしてしまった。黄緑色の血が薔薇を染めた。
「原初には醜い容姿の人間、昆虫がいた。
なぜそれらは排除されたのか、実に興味深いとは思わないか?」
突然上から声が聞こえてきて、驚いた。私に話しかけているのよね。
無視するのも失礼だから、思った通りに答えることにした。
「不要だったから故意で淘汰、もしくは単純に根絶したのでは?」
それくらい彼も想定内のことだろう。また馬鹿なこと言ってしまったわ。
「そういう考えもあるのか」