愛と戦の 共通1
「シュヴェインの脂身サイコー!」
美味しい学食のある魔法学園の生徒で良かった。
ついこの間の食事は所謂、戦闘中に腐らない忍者メシで最悪だった。
「あんたほんと食い気ねアミーラ」
友人は男とも女とも言い切れないけど、美形である。
ノングエイン人民は性別にとらわれないという考えで育つらしい。
「見てあの子」
「卑しいわ」
ハイロダルタンダ分家の娘が肉のドカ食い。普通の家ならはしたないだろうが、
軍国の戦士なのだからムシャリと食うのは当然だろう。
「アミーラ、あいつら殴っていいかしら?」
「女の子を、なぐるですって!?」
「そーよそーよ!」
「あら、男女平等パンチよ。
それと、今の発言はノングエイン星法で書類送検モノだからね~」
「騒がしい……」
「きゃっ! スキュッフォス先生!」
「初めて見た」
ヤミエル・スキュッフォス。別名ヴァンパイアティーチャー。
イケメンで気難しそうな美術教師。絵具で好きに無機物を具象化できるらしい。
「……お前」
「私ですか?」
彼は私のつまんでいたトリボールをパクっと食べてしまった。
「きゃー!」
「羨ましい!」
本物の吸血鬼ではないから噛みつかれなくて良かった。
「食事が済んだら美術室へ来なさい」
「え?」
「私のトリボール……まあいいか」
「あれはイケメンにしか許されないわ」
「なーにを平然としてらっしゃるの?」
「普通の女子なら卒倒ものですわ!」
ああいうのにドキドキするのは恋愛できる脳だから。
あまり知られていないが、マージルクス国民は試験管ベビー。
すぐに成長するし、遺伝子が強化されている。
だから恋愛なんてプログラムされてない。
「さて、たべよ」
おまけに衝動的に戦闘を始めるので寿命が短い。
他のコロニーが平均年齢100に対して、
戦民族の我々は20になれたら奇跡だ。
(ああいう子たちが羨ましい)
物語で主人公にやっかむモブって感じだけど、ちゃんと人を愛せるのだから。
(私にもできるかな)
■■
運良く恋愛感情が芽生えて結婚に至る者は限られている。
減ったら人は機械で生産される。その機械はテラネス星の製品で、
材料を作るのがヴィサナス星。彼らには頭が上がらない。
これは愛の女神と戦の神の神話時代から遺伝子に刻まれている様子。
確か先生もヴィサナスの人だった筈。
金の髪と優れた容姿、高い知能。それが彼らの特徴だ。
「先生!」
「お前の血は何色だ?」
彼の指から黄色いものがポタポタと流れる。あれはヴィサナス人の血だ。
「深紅です……」
薬品のような匂いと、彼の生が落ちている空間。
背筋がゾクリとしているのは歓喜からであろうか?
◆
血を舐める
逃げる




