魔王の娘ディベート 共通1
「つぎ、自己紹介を」
「わたし魔王の娘ディベータ! 皆さんよろしくお願いしまーす」
魔法界では法の改正で16になったら魔法学校に通うのが義務ではなく絶対になった。
しかし私は長きを生きる魔族で、対象年齢を過ぎているから通う必要はない。
そう思っていたら、誰か魔族を通わせてくれとどこかの学園長から頼まれた。
『ヴァリスあなた一番若いんだから』
『設定段階で編入無しって書いてあったんですが』
『メタい!』
『では、父さんが行こう』
『現役魔王のお父様が行くなんてだめよ、私が行くわ!』
『『どうぞどうぞ』』
2人が揃っていう。
『どうもどうも』
と学園長。
ここは魔法学園だから人間界と違って魔王のご令嬢がクラスメイトでも驚かれない。
「マヌケそうな女だわ」
「おい聞こえたら怖―いパパに殺されるぞ」
あの子が笑顔でいられるのも今日までだろう。クラスの誰もがそう思った。
「そんなことしたら星間戦争だわ」
「じゃあ俺が勇者になってやるよ!」
二人は入学前から恋仲だそうで、舞い上がっている様子。
その二人にどういう意図かディベータは微笑みかけた。
己を侮辱している相手なのに、魔王の娘は意外と優しいとクラスが和やかになる。
「ではこれより授業を……」
バカップルのくだらないやり取りを無視し、授業が開始された。
一方で学園長室に異議を申し立てる者がいた。
「……魔王の娘など我が校始まって以来ですな」
気難しそうな中年教師と、若い男は向き合う。
その様子を眺める青年は、議論するまでもない無駄な会話だとお茶を飲む。
「歴代の学園長が皆、変な生徒を数名選ぶんだ。私の代でネタが尽きた」
「これまでの遍歴は変人でも知能は高いか名家の子でした。今回は歴代の生徒とズレていますね」
「そんな分析は必要ないのだが」
◇
「はー」
空はどこも青だけど、魔界は紫なのよ。どうにも落ち着かない。
移住の別荘へ向かいながら、ふらふら街を歩く。
角は怖がられないようシニヨンキャップで隠しているから大丈夫だ。
獣人などは平気で歩いているものの、角は万人が怖がる。
人通りの多い場所へ行くと、甘い匂いがした。きっとこれは私の大好きなチョコに違いない。
「いらっしゃいませー」
「チョコプティングケーキのホール、果実のミニタルトくださーい」
さっそく別荘へ向かうことにしたのだが、何やら人だかりができている。
「いらしたわ!」
「きゃああああ! こちらを向かれたわ!」
「私を見てたのね!」
(そういうの自意識過剰というのよね)
本人はそれで幸せそうだし、迷惑をかけられないならそれでいい。
私はケーキを早く食べたいから、飛んで向かうことにする。
「ふー」
数分飛んだものの、別荘のある場所への地図が肝心なところでアバウトすぎてわからない。
学園、大通り、別荘って手書きの適当が過ぎるのではないか。
「あれはさっきのお嬢さん……」
彼に連絡して迎えに来てもらおう。……せっかくだから、KTAI電話とやらが使いたい。
しかし使い方がさっぱりで、地上へ降りてそのあたりの通行人に問おう。
「あのー」
「はい?」
さっきのモテ男が一人でいたから聞いてみる。
「私魔界から来たの、電話の使い方を教えて!」
「えっと、これが通話なので押してから番号を打って……」
「もしもしヴァリス! 地図適当すぎ! 迎え!」
あの子、今は学園にいるという。ならしばらくここで待つしかない。
「さっきは助かったわ、これあげる。さっき買ったばかりだから」
「ありがとうございます」
あんまり嬉しくはなさそうだけど、ケーキは嫌いなのかしら。
「甘いの嫌い?」
「いえ、実は妹が誕生日で……これを持って帰りたいなと」
(……ケーキくらい買えばいいんじゃないかな?)
「そう、ならこれをあげるわ」
箱にケーキを詰め直して箱ごと渡すことにする。
「え、ですが……」
「誕生日ならこんな小さいのより大きいほうがいいでしょ」
「大したことはしていないのに……貰うわけには……!」
「気が向いたからあげたいだ……」
「……お待たせ致しました」
「じゃあね!」
□□
「お兄ちゃんお帰りなさい!」
「マリ、お誕生日おめでとう。ケーキだよ」
「でもうちにはケーキなんて高級品買うお金……」
「親切な人がくれたんだ。魔界から来たっていってた」
「まんまる! お金持ちにも優しい人がいるのね」
「魔界は魔族の住んでいるところなのに……」
「これはお兄ちゃんのぶんでしょ?」
「
「あれが噂のカオスマインの魔王娘ディベータという女ね……」
「
口と育ちが悪いのか発音が拙くて