愛お菓子 共通1 ライバルなどいない
「行ってらっしゃいませ~」
「ええ」
ホウキで空を飛んで登校するのが魔法学校の生徒だ。だから私も……苦手だけれども、やるしかないのよ。
「あ、無理無理!」
今日は気まぐれで早く飛ぶホウキにまるでナマケモノのようなしがみ付き方をしてなんとか空を移動。
「堕ちる!」
でも万が一の為にテラネス化学社のパラシュートを取り寄せたから大丈夫!
「なんで!?」
パラシュートが開かないわ、どうしよう魔法なんて学校で教わればいいと思って……。
「いやああああああああ!」
私は意識を飛ばした。
「おい」
「あ……生きてる? それとも……貴方は天使?」
私の目の前にいるとても綺麗な顔の男性はまるで賢者のようなローブを纏っている。
柔らかそうな捻じれた金髪、目は濃い青をしている。そしてどこか不思議な雰囲気の人。
周りは一面が緑の草木で、ここはやっぱり森の奥地かしら。
「ひょっとして貴方が助けてくださった?」
「たまたまだ」
なんらかの力で衝撃を緩和してくれたのだろう、痛いところも軽い傷もない。
「ありがとうございます! よかったらこれを」
「なんだこれは」
「お菓子の詰め合わせボックスです」
「ほう……近頃の都会はこのようになっているのか」
「ああ、今は学校へ向かうところなので! また改めてお礼をします!」
「そちらは出口ではない」
ホウキを拾って案内された方角を低空飛行しながら学校へ着く。
□
いつも早めに登校しているから、今日も遅刻せずに教室に入れた。
席は窓辺でとても日当たりが良く、ついつい眠気に船をこぐ。
「ではこの問題を……アーチェ・リリズム・ロンダート」
「はっはい!」
さっきまで心地の良い日差を浴びながら、居眠りしてしまって材料を聞きそびれた。
でも薬学はお菓子作りのようなものだから大丈夫よ、クラスメイトのクラール大魔道一族の没落令嬢アクアルナだって出来た簡単な睡眠薬の調合だもの。
「薬品Ωに人毛、キノコの胞子少量と後は……」
「……授業はちゃんと聞くように」
「すみません!」
「ではアクアルナ、代わりに調合をしなさい」
「あ、はい」
魔法の成績では勝ってるから、なんか悔しい。
このクラスには私とアクアルナとラヴィーナしか女子がいない。
どうしてもライバル視してしまう。成績だけでなく担任の先生のこともあった。
「あの、ラヴィーナ……良かったら一緒にお昼……」
「おーい飯の時間だぞ」
「幸ちゃん、ラウル!」
例の留学生と問題児じゃない。仲がいいなんて知らなかった。
ラヴィーナは彼の幼馴染で、好意があるようだから邪魔したら悪いわね。
それじゃあ、アクアルナは……窓へ目をやると噴水の水を飲んでいるのが見えた。
「ガッテム!」




