喰らわれ森の巫女(いけにえ) 共通1
『わたし……どうして他の子と違うんだろう……』
『君は皆が同じでいいの?』
『そうじゃないの、顔や声は違うのはいいのでも……耳の形が変なの!』
彼は意識していなかったが、言われてみると少女の耳はまるでエルフのように横に広がっている。
『うん……そこらの人間に数人いるかいないかだね』
長く生きてきて一人か二人はいた様な、そう呟きながら彼は気にすることはないと少女をなだめた。
「スティーラ! 朝よー!」
無意識のうちに電源を切った目覚まし時計はもう鳴らなくなってしまった。
「あと5(フュンフ)分待って……」
昨夜は明け方まで森の守り神にご祈祷をしたから、まだまだ寝足りない。
「もう15(アンフェンセル)分待ったのよ。お隣のレピスちゃんもとっくに登校したわ!」
「ええ!?」
いつも優しい母だが、仕事や学校などの時間には厳しいところがある。
だけどデートの時間はルーズで遅刻しても気にしないとかで、恋愛がうまくいかなかった母はそれを許容できる父と出会った。
そういうコイバナを聞くと、うらやましいと思う。おかしいところを個性として認めてくれる人、いつか私にもできるといいな。
「どうせ遅刻だけど朝ごはんはお空で食べる! ホウキは?」
「これを使いなさい」
差し出されたホウキは光沢があり丈夫そうで持ち手が竜血樹で染められている。
「……もしかして、高級な木製?」
「これは代々森の巫女となる娘が継ぐのよ」
「いってきます!」