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転生したら精霊!? 元令嬢は召喚されました  作者: 奏多


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打開策が必要です

『王位を譲られれば、陛下はバイロン公爵にとって必要ないものになる。王位を譲られたという正統性が欲しいからこそ、陛下にわざわざ譲位について何度か交渉していたのだろうからな』


 王位さえ移れば、国王はただ口を出してくるだけの存在になる。


『それでも王だった人間だ。何か言えば、動く人間はそれなりにいる。バイロンにとっては邪魔でしかない。王位さえ受け取れば早々に処分するはずだ』


 ラフィオンが丁寧に教えてくれる。

 なるほど。バイロン公爵は、あくまで国王から王位を譲られたという形式がほしいのだろう。


『簒奪だと、国の運営で手間取るから……なのね?』


『面倒事は嫌なんだろう。国王や王子、王女が死んで不審がられても、当の国王に認められての即位なら文句を言う者も少なくなる』


『でもどうしてかしら』


 私は疑問に思う。


『王位が欲しいと思うのは理解できるわ。特にアルテは魔法の強さが物を言う国、一番強い自分が……とバイロン公爵が考えるのもわかるの。でも王位を得てしまった後で、どうして現国王やサリエル王子達まで根絶やしにしたがるのかしら』


 王位を得る前ならわかる。

 サリエル王子達がいては、王位継承の順位で揉めることになるからだ。譲られたのなら、揉めることにはならないはずなのに。

 それとも何か恨みがあるの?


「とにかく身を守る方法を考えるしかないかぁ」


 サリエル王子が疲れたように目を閉じる。

 そこでグレーティア王女がようやくといったように、ラフィオンに説明を求めた。


「それで、父上はなんて?」


 ラフィオンが一連の出来事を説明すると、グレーティア王女は顔をしかめる。


「なぜそんなにも……父は現実を見ようとしないのでしょう」


「昔からだよ。僕等が狙われても、ほとんど梨のつぶてだっただろう。それでバイロン公爵をつなぎとめて国を守らせていたのだから、ある意味国のためを思ってはいるだろうけどね。もっと上手い交渉の方法があったと思うし、父としてはね……」


「自分の治世が安泰であることを優先しただけですわ。そのために子供を捧げる覚悟もなく、一方で自分の手では生贄として捧げたくないから、黙ってみていただけ」


 グレーティア王女がきっぱりと言う。

 どうも国王は、自己保身の意識が強すぎるみたい。あと自分で考えて行動するのではなく、その時だけしのげればというやり方をしてきたんだろう。

 結果、子供たちからは呆れられ、守った玉座を追われた後のことは考えずに、バイロン公爵から与えられた解決策に飛びついたのだろう。


「今頃になって公爵に譲位すると決めたのは、国王の仕事に疲れたから……ってところかな。面倒になったんだろう。僕等が力をつけてきて、バイロン公爵との競り合いが激化したから収めにくくなったって感じたんじゃないかな」


 サリエル王子は推測を口にして、ため息をつく。


「まぁ、父上も炎の魔法が苦手だったからこそ、文献を漁ったりして、ようやく血を媒介にすることを見つけ出したわけだし。おかげで僕も助かってはいるけどさ」


「しかしそれだけでは、殿下が身を守るのには足りない」


 ラフィオンの言葉に「そうなんだよねぇぇぇぇ」とサリエル王子がソファーに突っ伏す。


「やっぱり属性が違う母方の血が混ざりすぎるとさ、なかなか本家の血が出て来ないんだよね。バイロン公爵は確か、母方が遠縁でも王族の流れをくんだ家だ。だから炎の魔法の力が強いんだと思うんだけど」


「最初、グレーティア王女をほしがったのも、次代に血の濃い、強い魔力を持つ子供を望んでのことでしょう」


「王になると決まったら、もういらないと考えたのか……。ああ、ラフィオンを引き取る気だからか? 炎の魔術ではなくとも、今度は代々竜を召喚させればいいと考えたとか?」


「その可能性はありますね殿下。しかしそれでは、私を後継者にしなくてはなりませんよ。あちらの子息は炎の魔術が使えたはずですが」


「そこなんだよなぁ」


 サリエル王子とラフィオンの会話を聞きながら、私はふっと思いつく。

 そうだ、母親の血。

 父系社会なので、血統といえば父親の血を重んじるはず。


 けれど弱まっているのだから、母方の血の血統がそれを邪魔しているのは、どうもアルテの貴族の中でも通説になっているみたい。だからサリエル王子も「血が出てこない」って言うのだと思うの。

 でもそうすると……母方の血統の魔法なら、強い魔法が使える可能性はないのかしら?


『そういえばラフィオン。最初はなかなか召喚が上手くいかなかった、って言っていたわよね?』


『ああ、そうだ』


『ケティルが、ラフィオンは冥界に体質が近いって言っていたでしょう? だからケティルとかは呼びやすいのではない?』


『……確かに、考えてみればおかしいんだ。正直雷鳥なんかよりも、マーヤに会った後で試してみたケティルの方が召喚がしやすかった。反発されたくないからな、名前を知っていても言わずに契約をしようとしたんだが、それでもだった』


 やっぱりだ、と私は思う。

 ラフィオンはたぶんどこかで入った血のうち、冥界系の魔法が得意なものが強く出ているんだと思う。召喚の方も使えるくらいに血が濃いから、召喚魔法も使えているだけで。


『そうしたら、サリエル王子やグレーティア王女も、もっと得意な魔法があるんじゃないかしら?』


 それでもっと強い魔法が使えるようになったら、身を守れるようになるはず。


「そうか……」


 ラフィオンは私の話に納得してくれたようだった。


「殿下方、提案なのですが」


 そして私の思い付きを、サリエル王子達に話してくれたのだった。

久々の更新になりました。また続きもゆるゆるとがんばりたいと思います。

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