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転生したら精霊!? 元令嬢は召喚されました  作者: 奏多


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冬の巨人を討伐します

『ただちょっと、属性が近いから倒しきれないかも。そこは一緒にいる兵士に頑張ってもらうといいよーマーヤ』

『え、属性が同じ?』


 ケティルの言葉に驚くと、うなずいて教えてくれた。


『雪の魔獣は、冥界の性質を持っているんだよ。だからちょっと僕の力も効きにくいけど、マーヤとそこの人間たちが戦うよりは、効率がいいと思うよ』


 それを聞いて私はなるほど、と思った。

 だからラフィオンは、ケティルを呼ばなかったのね。属性が近くて、冬の巨人とは相性が悪いと思ったんでしょう。

 でも巨人サイズではないのだし、こちらの眷属らしい魔獣ならどうにかなるんでしょう。

 良かった……。


『あ、でも待って。もしかしてアラルとか呼んだ方がいい?』


 雪と戦えそうな精霊といえば、火。

 炎の鳥の姿をしたアラルのことを思い出して言うと、ケティルに『呼べるかな?』と首をかしげられてしまう。


『マーヤ、たぶん呼ぶだけで力がいっぱいいっぱいになるかもしれないよ? すぐ精霊の庭に帰っちゃうのならいいけど』

『あ、やっぱりだめ。なしで!』


 アラルに会いたいし、一緒に戦ってくれたらとても楽だろうけれど、私はこの後ラフィオンと話があるのよ。

 待ってと言った私の方が、魔力切れで帰ってしまいました、なんていうのは避けたい。ラフィオンに申し訳ないもの。

 そういうわけで、ケティルと私、そして兵士さん達とで戦うことにする。

 まず私は、兵士さん達にわかるように雪に文字を書いてみせた。


『この召喚獣が先に動きを止めて、敵全部にダメージを与えます。その後、ゴーレムが突撃してから、攻撃を開始してください……と』


 なにせケティルの攻撃は、あの煙によって冥界に引きずり込み、お食事をするという代物だ。

 うっかり兵士さんが近づいたら、巻き込まれて一緒に食べられてしまうもの。

 注意書き、大事。

 兵士さんのうち何人かが、私の書いた文字を見てくれた。


「え、ゴーレムって文字書けるのかよ?」

「ラフィオン様のゴーレムはちょっと特別なんだろう……」


 そんなことを言いながらも、注意書きのことをみんなに伝えてくれた。良かった良かった。

 そして敵を迎え撃つのにも間に合った。

 伝達が終わるのと同時に、私達よりもずっと前の方に出ていたケティルが先制攻撃を行った。


 ケティルを中心に、黒い煙が広がっていく。

 横に広がっていた煙が、先頭集団の足を捕えた。

 ギャインと犬のような悲鳴が魔獣達から上がった。

 黒い煙に巻き込まれた何匹かの魔獣が、べきりという震えのくる音と共に煙の中に沈んで行く。


 う、心が痛む。まるで普通の動物をいじめているみたいで嫌……。

 だけど相手は魔物。戦わないと、兵士さんや町の人が殺されてしまうもの。

 ケティルが黒い煙を一度消したところで、私は走り出した。


 それが合図になって、準備していた兵士達が魔法を放つ。

 私が到着するより先に、魔法が着弾して炎や爆発をまき散らす。

 身動きがとれなくなっていた狐のような姿をした青白い魔獣達は、その半数が白い雪になって消えた。


 残った魔獣達も、私が殴り、放り投げ、さらに抵抗できなくなったところを剣で倒されて白い雪に変わって消えた。

 よし、こっちは終わったわ。

 ラフィオンは……と思ってみれば、あちらも佳境に入っているようだった。


 真っ白な雪の塊みたいな冬の巨人は、少し町の方へ近づいている。

 おかげでその全貌が見えた。

 雪の上に城のように巨大な上半身が生えているような感じだ。


 火竜の炎で炙られて溶けるけれども、冬の巨人が吠えると吹雪が強くなり、その体を徐々に回復していく。

 冬の巨人は火竜に向かって手を伸ばし、空振りをして倒れ込む。

 そこへずるずると滑るように上半身が移動してくる。


『ラフィオン、大丈夫かな……』


 じりじりと町に近づきつつ、溶けた場所も回復していく冬の巨人に、不安を感じた。

 火竜の方も離れながら攻撃しているということは、前回と同じように、アスタールを頭に乗せて来ているのかもしれない。だからあまり接近したくないのかしら。


 そう思ったら、ラフィオンが火竜から何かを投げた。

 小さすぎて何かはよくわからない。でもそれは冬の巨人の中に吹雪と一緒に摂り込まれてしまった。

 けれど数秒後、冬の巨人の中から爆ぜるように炎が噴き出す。


『ちょっ、冷た、冷たああああああ!』


 誰かが召喚されたみたい。聞き覚えのある声が、冷たさに叫んでいる。

 噴き出し、冬の巨人を中心から溶かす炎の中から、緋色の鳥が飛び出して来た。


 あれ、アラルじゃないかしら?

 グレーティア王女達とラフィオンが、海で蛇を討伐している時に呼んだきり会っていなかったけれど、たぶんそう。


『アラル!?』


 声を届けようとすると、アラルは旋回してこちらに飛んで来た。


『マーヤ? うわあああんマーヤ! 君の気配がするからと思って呼ばれてきてみたら、酷い目にあったんだけどおおお!』


 飛んで来たアラルはゴーレムの腕にとまって、ひしっと肩にしがみついてきた。


『こんな酷いの初めて。びっくりした! びっくりしたんだよ!』

『ご、ごめんねアラル』


 慌ててなだめていると、ケティルがしみじみとつぶやいた。


『ああ……まぁ、ラフィオンはちょっと乱暴だからねー……』


 え、ラフィオンもしかしてみんなに評判悪いの? それは困ると思ったけれど、ケティルは苦笑いをしているので、心底嫌というわけではないみたい。


 そんなことを話している間に、中心から壊された冬の巨人は、戻る前にと火竜からの強烈な炎を叩きつけられていた。

 壊れた部分を狙って爆発を起こされ、崩壊したところで火竜は重ねて周辺ごと炎で埋め尽くす。

 一瞬で冬の巨人がいた辺りの雪が溶けた。


 ラフィオンは素早く火竜から降りると、雪が溶けた場所にあった何かを拾ったようだ。

 それでようやく、冬の巨人の討伐が終わった。

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