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転生したら精霊!? 元令嬢は召喚されました  作者: 奏多


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まずは町を防衛しましょう

 ラフィオンはすぐさまゴーレムの体を作ってくれた。

 直下が石畳だったのか、雪の中から現れたのは石を積み上げたような形のゴーレムだった。ラフィオンの二倍くらいの背丈がある。


『マーヤ』


 呼ばれたとたんに、するりとゴーレムと一体化する。

 ラフィオンの方は、続けて火竜を呼び出していた。

 火竜も召喚によって空間を越えるんだろうか。数秒かかったものの、ふわっと上空にその姿を現す。

 灰色の空に広がる赤い翼が、一度地上に舞い降りて行った。たぶんラフィオンと一度話すためなんだろう。


 その威容を眺めていたかったけれど、私は町へ向かった。

 観察するのに夢中で、ラフィオンの頼みを叶えられなかったら困るものね。


 町まではほんのすぐだった。

 遠くに豆粒ほどのラフィオンの姿が見える程度の距離だ。町の周囲は低いながらも石垣で囲まれて、入り口には沢山の兵士の姿がある。

 町の奥の方では、別な出入り口から町の人を逃がそうとしている兵士の姿も見えるので、ラフィオンと一緒にやってきた兵士の数は数百人はいるのではないかしら。


 町からの避難はわりと早く済みそう。

 整然とというわけにはいかないながらも、町を歩く人の数はかなり少ない。ほとんどの人がもう外へ出たのではないかしら?

 みんなが町を出るまで、この入り口辺りを守っていればいいかしら? たぶん、全員が出たところで、今度は逃げる人達の方にくっついていればいいわよね?

 私がのしのし近づいて行くと、兵士達は喜んで迎えてくれた。


「おお、魔法使い様が言っていたゴーレムだ!」


 と言っていたので、ラフィオンは予め私を呼ぶことを教えていたのね。良かった。

 とりあえず兵士さん達の前に立ちはだかる。

 まだ他の魔獣も攻めてこないので、ラフィオンの戦いを観戦することにした。


 火竜は高く飛び、冬の巨人に炎を吹きかけている。

 雪に覆われた周囲の木々が燃えるほどの熱に、巨人の体が溶けていくらかがくずれた。

 それでも倒れずに吹雪を発生させ、火竜が逃れるようにさらに上空へ。


 けれど急に冬の巨人が、ゆらりと態勢をくずし、膝をつくようにその体が木々の向こうに沈む。

 たぶん、ラフィオンが別な召喚を行って、違う攻撃をしかけたんだと思うの。

 それくらいでは冬の巨人もまだ倒されきらないのか、火竜は断続的に攻撃をしているし、何か轟音が時々聞こえてくる。


 ……大丈夫かしら。

 心配になったけれど、とうとう私の方にも敵がやってきた。

 人の大きさほどの、狐のような姿をした青白い魔獣だ。それが十、二十……あら、三十って多くない?


 足下の兵士さん達も、あまりの数に怯えつつ剣を構えたり魔法の準備らしきことを始めている。

 雪の上に図を書いたり、呪文を唱え始めたりと様々だ。

 ラフィオンよりも時間がかかりそうだ。でも強い魔法が使える人もいるのかしら?

 でも安心していて、町の中に入り込まれたら大変だ。


『私も何かしなくちゃ』


 普通にゴーレムで戦って、間に合わなかったら困る。

 でも何をしよう。また魔法を試してみる? でも大量の敵を相手に、私のへなちょこ魔法で間に合うか不安だわ。


『それよりは誰か呼ぼう。そうしよう』


 魔法を使おうとして、また雷の精霊が集まって来て精霊の庭に強制送還になるのは困るし。召喚だったら、モリーを呼んだ時はあんまり疲れなかった。

 さて誰を呼ぼうかしら。

 沢山の魔獣を相手に、モリーでは大変だろう。……ふむ。


『ケティル、もしかしてラフィオンに呼ばれてる?』


 呼びかけてみたけれど、応答がない。どうやらラフィオンが使っているのは、別の精霊みたい。


『じゃあケティルにしよう。ケティル! どうか呼び声に応えて!』


 広範囲攻撃なら、ケティルが一番だ。

 同属性ならすぐに呼びかけに答えてもらえると、以前聞いている。だからケティルに呼びかけて、私は数秒まった。

 すると、ふっと自分の中から力が抜ける感覚が訪れる。


 目の前に、ふわりと黒い影が寄り集まってくるような光景とともに、濃い影の上に白い少し大きめの犬が現れる。でもその頭には、琥珀色の目が三つ。

 間違いなくケティルだ。

 周囲にいた兵士達が、動揺している声がする。なので、大丈夫だと示すために、私はのしのしのケティルに近づいて、その背中にそっと触れた。


『ケティル、来てくれてありがとう!』

『久しぶりーマーヤ』


 呼ばれたケティルは、嬉しそうに尻尾を振ってくれる。

 可愛い動作なのに、背後の兵士さんは怯えたような声を出していた。


「きっとラフィオン様が、お呼びになったのだろう」

「じゃあ味方……?」

「これ以上敵が増えてたまるか! ゴーレムが仲良さそうにしているから、たぶん間違いない」


 背後ではそんな話をしていた。

 どうやら味方という認識はしてくれたみたい。私は彼らに声で説明することができないから、助かったわ。

 さて、魔獣も大分近づいてきている。急いで片付けよう。


『呼んだばかりで申し訳ないのだけれど、あの魔獣を倒すのを手伝ってくれる? ケティル』

『いいよー』


 ケティルは実に気楽に、そして快く受けてくれたのだった。

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