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転生したら精霊!? 元令嬢は召喚されました  作者: 奏多


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助けてくれたその人は

「何だ!?」


 部屋を出て行こうとしていたレイセルドは、コンラート王子を追い越して走って行った。

 置いて行かれたコンラート王子は呆然としたものの、部屋に戻らずにその場でぐずぐずとしていた。

 もう一度呼びかけようとしたけれど、その前に黒い影みたいな人影が走って来て。


「ぐえっ!」


 コンラート王子を部屋の中に突き飛ばしながら入って来た。

 一体誰がと思った私だけど、黒いマントを羽織った黒い衣服の人に見覚えがある。もしかして、サリエル王子の侍従さんその1じゃないかしら?

 続けて入って来た数人の姿、私はもっと驚いた。たぶん騎士なのだろう男性陣に混じって、黒い男物の服を身につけた、グレーティア王女がいたからだ。


『え、お、王女殿下……?』


 思わず口に出してしまう。聞こえないから問題ないのだけど。

 でも、これって助けに来てくれたってことよね?


「やっぱり王子のいる場所に居ましたわ。早くゴーレムを解放しなくては! ラフィオンが!」


 グレーティア王女の言葉に、私は驚く。え、ラフィオンに何かあったの!?

 駆け付けたいけどそういうわけにもいかない。とにかくグレーティア王女達が、私を囲んでいる図形を消してくれるのを待つ。


 グレーティア王女は魔法使いなので、そうすれば解けるということはわかっていたのだろう。騎士達に指示して、さっさと図形を消してくれた。

 でも体が動かせない。どうして?

 と思ったら、グレーティア王女はこの状態になった理由が、すぐにわかったみたい。


「コンラート王子!」


 とても焦った様子のグレーティア王女は、床に倒れていたコンラート王子の胸倉をつかんだ……って、ええっ、グレーティア王女が!?


「このゴーレムを、何を使って動きを封じたのですか!?」

「私はよく……わからない。変な砂だ。魔法使いを捕えるためのものと同じだとしか……」


 グレーティア王女の剣幕に、うろたえながらコンラート王子は答える。王女はちっと舌打ちしてコンラート王子を離し、騎士達に命じた。


「やはりアレを使ったようですわ。急いで魔力を足して」


 指示を受けた騎士達は、腰から下げていた水筒を手に私に近づく。え、水かけるの?

 と思ったらその通り。背中にばしゃっと水をかけられた。

 冷たくはないんだけど……と思ったら、ふわっと力が戻った感覚がする。少しだけど。

 それはグレーティア王女も感じたようだ。


「相当枯渇していたのかしら……? とにかくラフィオンの所に連れて行かなくてはならないわ。運んでちょうだい」


 王女の指示で騎士が二人で魔法を使い、私の体が浮く。すごい、浮く魔法だわ。そういえばアルテ王国の騎士は、魔法が使える人しかなれないのだったわね。

 そうして私は、閉じ込められていた地下から解放された。


 やっぱり貯蔵庫みたいなところだったらしくて、大きめの扉から出るとすぐに、整えられていない庭の一画に出る。

 するとまた、どん、と地響きと轟音が響いた。

 グレーティア王女が引きつった表情になる。


「早く、ラフィオンはまだ庭かしら?」

「おそらくは」


 黒服の侍従さんの言葉に従い、グレーティア王女達はさらに移動しようとする。

 それを引きとめたのは、立ち上がったコンラート王子だった。


「まて……そのゴーレムは私のもの……」


 よろよろと歩み寄るコンラート王子は、まだぼんやりした様子だ。

 グレーティア王女は、困惑した表情で黒服さんに尋ねた。


「どうしましょう。連れて行ってしまったら、ラフィオンが何をするかわからないわ」


 確かにこのままでは、勝手についてきてしまいそうだ。


「私めもそのように考えます。しかし置いて行くというのも、不安なのは確かです……安全策を取りましょうか」

「安全策?」

「王子も運んで、被害者のように装いましょう。今の状態でも、おかしいことはわかりますが……もう少しだけ、悪化させましょう」


 そう言って黒服さんは、上着のポケットから何かを取り出すと、コンラート王子に近寄って何かを嗅がせ、子供にするように言った。


「さあ王子。ゴーレムをくれると言った人のところへ行きましょうね。ところでゴーレムをくれると言ったのはどなたでしたか?」

「セネリス男爵という人が……」

「なるほどわかりました。その人の所へ連れて行きますので、大人しくしていましょうね」


 黒服さんが、ぼんやりした表情になった王子を担ぐ。

 ……え、その、悪化させるというのは、コンラート王子に何か思考力を失わさせるような薬を追加したということ?

 サリエル王子の侍従は怖い……。

 と思うものの、コンラート王子が暴れることもなくなるし、こんな状態の王子なら、ラフィオンが私が消滅寸前になったことを知ってもそうそう怒り難いだろうということはわかる。


 きっとコンラート王子の身を守るためにも、これが最善なんだろうとは思うの。

 私をさらう時に、グレーティア王女にも何かしていたし。王族に被害を与えたのが他国の王族とか、もう目も当てられない状態だもの……。

 本人の意思じゃないってことで収めた方がいいわよね。


 とにかくそうして、私とコンラート王子は運ばれることになった。

 話からすると、ここにラフィオンが来ていて、彼のいる場所へ向かっているみたい。

 私はほっとした。

 ようやくラフィオンに会えるのだもの。安全に精霊の庭へ帰ることもできるんだわ。


 そう安心していたら。

 やがて見えて来たのは、館を囲む塀を壊した火竜の姿と、火竜のせいで燃やされたのだろう、黒焦げになった庭木。

 そんな火竜の前に立つラフィオンと、逃げ腰になっているレイセルドの姿だった。

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