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転生したら精霊!? 元令嬢は召喚されました  作者: 奏多


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思いがけない効果

 私が再びラフィオンに呼ばれたのは、しばらく休むつもりで泉の中で揺られた後だった。

 行ってみれば、ラフィオンが不安そうな顔で小さな光の球みたいになっているはずの私を、両手で包み込むようにする。

 どうやらラフィオンは、西日の差し込む自分の部屋の中にいるらしい。


『マーヤ、大丈夫だったか? 消耗して消えたのだと思ったから、すぐに呼ばないようにしたが……その、一日待つのももどかしかったというか……』


 ぐっとラフィオンが唇を引き結ぶ。あれから一日経ったのね。

 心配してくれたんだなと感じて、私はくすぐったい気持ちになる。精霊の庭でも、呼ばれる現世でも、私には心配してくれる人がいる。それがとても心地いい。


『ありがとうラフィオン。ちょっと魔力を使いすぎただけなの』

『あれか……』


 ラフィオンも、私が魔力を消耗した心当たりがあったようだ。


『君が、ゴーレムとして召喚された状態で、魔法が使えるとは思わなかった。そのせいなんだろう?』

『そうなの。魔力を増やす方法があって、それを利用できないかなって使って見たらできたのだけど、精霊も寄って来てしまうみたいで』


 寄ってくるだけかと思ったら、欲しいと思う精霊にこちらの気持ちがつられてしまうとは思わなかったのよね。つられないようにしなくちゃ。


『でも大丈夫よ。回復したから』


 そう言えば、ラフィオンはほっとしたように息をついた。


『もう少し俺が、召喚魔法を上手く使えたらな……』


 ラフィオンの方は、自分の力不足を感じて、落ち込んでいたみたい。


『王宮内で目立つわけにはいかないせいで、あまり大物を召喚して倒すわけにもいかなかったが……。王女の名誉に関わるからな。勝手に連れ出して、コンラート王子に怪我をさせたとなったら、王女がコンラート王子に関わることを止められる口実になってしまう』


 そのせいでラフィオンは戦い方に苦慮したようだ。


『対抗措置はあるんだ。一番手っ取り早いのは、召喚主の座を奪い取って返してしまうことなんだが。あの氷馬は、俺は召喚ができないんだ』


 あ、なるほど。そうしたら倒さなくても戦う必要が無くなってしまうものね。


『上手くいく魔獣とそうではない魔獣がいてな。前からごく初歩的な魔獣を呼べなかったりもしたんだが』


 んん? でもラフィオンって火竜も契約してくれるくらいには魔力があるのよね? 力が弱いっていうよりも、何か得意分野があるんじゃないのかしら。

 そういえば……。


『ねぇラフィオン。ラフィオンってたぶん精霊を呼ぶ方が得意なんじゃないかしら? 私もそうだけど、私が名前を知っているのは全部精霊なのよ。みんなとあっさり契約できちゃえるのだから、精霊を呼ぶのが得意なのではないかしら』


 だから魔獣は呼びにくいだけなのではないかと思うのよ。


『精霊か……』


 つぶやいて考え込んだラフィオンは、扉を叩く音にそちらを振り向く。

 入って来たのは、先日私が驚かせてしまった従者君だった。


「サリエル王子の支度ができましたので、お知らせにあがりました」

「わかった。出る」


 ラフィオンは足早に部屋を出る。


『これから、コンラート王子の様子を見に行くんだ。君も気になるだろうと思って呼んだんだが、大丈夫か?』

『ええ、私が気絶させてしまったのですもの。様子を知りたいわ』


 昨日のコンラート王子は踏まれたり気絶させられたりと、本当に気の毒だった。謝る言葉を届けるわけにはいかなくても、お見舞いに行って陰ながら謝るべきだろう。

 そうしてラフィオンについていくことにした。


 サリエル王子と一緒に部屋を出て、王宮の途中でグレーティア王女と合流する。全員お見舞いということで、紺色や緑の落ち着いた色合いの衣服を着ていた。

 コンラート王子は、国王が居住する王宮中央の二階で寝起きしているそうだ。

 足を運んでみると、コンラート王子は既に朝から元気に起きていたようだ。

 特に負傷した場所や、不都合がある箇所もないという話を、先にコンラート王子に付き従って来ていたルーリス王国の伯爵から説明を受けた。

 私のせいで寝込むことになっていたら大変だと思っていたので、一安心だ。


 そうして青い絵が飾られた居室の一つに通され、そこでコンラート王子が来るのを待っていたのだけれど。

 ばん、と王族にあるまじき乱暴さで扉が開かれたかと思うと、ついていた侍従が止める間もなくコンラート王子が飛び込んできた。

 何事、とサリエル王子やグレーティア王子まで腰を浮かせる中、じっくり座ったままのラフィオンの側に、滑り込むように膝をつく。


「ああ、君に会いたかったデイース伯爵!」


 コンラート王子はがしっとラフィオンの手を握る。


「君にお願いがあったんだ。頼むから君の召喚したゴーレムに会わせてくれ!」

「……は?」


 思わず他国の王子にする返事ではない声を漏らしたラフィオンを、その場にいる誰もが責めなかった。

 なぜなら全員が、目を丸くしていたからだ。

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