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20-①シワくちゃになった反省文を手に

 翌朝、夜が明けて間もないうちからユウキは家を出た。昨晩は眠れず、アカネに言われた通り下手くそな字で夜通し反省文を書いた。何度も書いては消してを繰り返したそれは、いつしかシワくちゃになっていた。こんなことを言っても、どうにもならないだろう。彼はそれを認めつつ、ただ自分の主張もせずに大切なモノを奪われるところには納得できずに、結局は文章をしたためたのだった。

「おはようございます」

 校門が開くのを待っていると、吉川が一番に現れた。

「早いな」

 監督はそれだけ口にすると、門を開け始めた。ユウキは言葉を掛ける代わりにその作業を手伝う。一言も発しない教師が校門を潜っても、彼はその背中を追いかけた。門を跨ぐ時に一瞬のためらいがあったが、何か言われるまでついていこうと決めた。

  吉川は職員室の自分の席に鞄を置くと、ようやくユウキを振り返った。

「すいません学校に来てしまいました。でも」

 監督が何かを言う前に彼は早口でまず謝罪した。

「昨日は気が動転していて何も話せなかったので、話だけでも聞いてほしいと思い、朝一で迷惑の掛からない時間帯に来ました」

  そして制服に忍ばせていたシワくちゃの反省文を取り出した。その様子を黙ってみていた吉川は、自分の席に着き、対面の椅子に座るよう彼に促した。

「思い出せる範囲で、日曜日のことを書いてみました。話だけだとどこか抜けてしまうかもしれませんし、第一、うまく話せる自信もなかったので」

 そう言ってユウキはそれを監督に渡す。神妙な面持ちで受け取った吉川はその紙面を開き、しっかりと時間をかけて読んだ。

「これを書いたところで、自分がお酒を飲まず、タバコを吸っていないという証拠にはならないことはわかっています。でも、やっていないことはやっていないとしか言えないんです。確かにあの写真だけ見れば、傍から見れば吸っているように見えてしまうかもしれません。でも、僕はタバコを勧められてもきちんと断って店を出たんです」

「やってないから、やってない、か」

 反省文を読み終えると、吉川はユウキに向き直った。

「お前の言うとおりだ。お前は本当に誘いを断り、やましいことは何一つしないまま、店を出たんだろう。短い付き合いだが、部活の顧問としてお前のことを見てきた者として、お前のことは信用しているし、信じてやりたい。でもな、やっていないからやっていないという論理は、俺には通じても、第三者の厳しい目には通じないぞ」

 一度、口を開いた吉川は、一息にそう諭した。

「お前の潔白を証明するためには、感情論でない、誰もが納得できる証拠が必要なんだ」

 そう言って教師は、自分のデスクに向かってしまう。パソコンが立ちあげられ、煌々とした光が、まだ薄暗い教室に放たれる。静かで、機械音が妙にユウキの耳に障った。

「お前の潔白を証明することは難しいだろう。正直、そう思っていたよ」

 背中を向けたまま、監督はパソコンを操作し続ける。顎に手を当て素早くマウスを操作すると、おもむろに動画の流れる画面をユウキの方へ向けてきた。

「アカネに感謝するんだな」

 再生ボタンを押すと同時に、吉川はどこか可笑しそうにそう言った。どうしてアカネの名前が出てくるのかと不思議に思うより先に、彼にはその動画の内容の意味を見つけるのに必死だった。

「あいつ、お前から野球を取らないでくれって言ってたよ」

 画面では、定点で数か所の客席が交互に映し出されていた———そこがファミレスであることは疑いようもなかった。

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