19-①対峙
瞬くと、蛇のような眼差しが睨みを効かせて自分を今にも飲み込もうと機会を窺っているようだった。
この男は確かユウキの先輩で、ピッチャーとしてのライバル。睨みに耐えながらも彼女はその顔を思い出す。
「確か、中條先輩、でしたよね」
目を逸らさずに彼女は訊く。
「俺はお前なんか知らない」
興味なさげに彼はユウキに目を向ける。が、アカネが視線を遮って見せた。
「加賀君と知り合いだったんですね」
ファミレスに着くまでに見ていた雰囲気からすれば、この二人が知り合いであることは間違いない。ただ、確認のためにアカネはそう問うた。彼女の中でも一気に謎が解けていた。やはりユウキはハメられたのだ。この、目の前にいる中條と加賀に。何が目的かは不明でも、ユウキとのやりとりがそれを如実に物語っていた。
「俺と加賀が知り合いだったら、一体なんだってんだよ」
凄みを効かせる先輩。
「あなたがユウキにタバコを吸うよう加賀君に勧めさせたんじゃないんですか」
圧力にも屈せずアカネは問うが、彼はそれを鼻で笑う。
「一丁前に推理しやがって」
中條はそう言うと、彼女の肩越しに視線を投げ、
「なあ、こいつ、俺とお前のことをどこまで知ってんだ?」
とユウキに訊いた。アカネは幼馴染を背中で窺うが、目立った反応はない。
「まあいい。それで?」
一息つき、男は改めてそう問う。
「それで?」
「それで、お前の思いつきが本当にそうだったとして、それを証明できるようなもんをお前らは持っているってことなんだな」
上級生は確認するように二人を視線で舐め回す。しかし二人には示せるものなど何もなかったのだった。
「証拠もないのに、いい加減なこと言うんじゃねぇよ」
十分に間を取った後、中條は二人にそう言い放った。
「お前が勝手に自分のやったことで写真を撮られて停学くらったからって、確かな証拠もないのに人様に濡れ衣を着せようなんてもってのほかだぞ」
アカネの肩越しに中條はまくし立てた。彼女は反論の言葉を見つけられず、冷たい言葉の盾になってやることもできなかった。
「お前らのせいで白けたわ」
さらに中條は言葉を浴びせる。アカネはそれに黙って耐えることしかできない。
「なあ、ナナ、お前、なんでこんなことした」
先輩はナナにゆっくりと気怠そうな視線を向けた。
「私は加賀っちがここにいるっていうから、一緒に落ち合おうと思っただけだよ」
彼女はやはり肩をすくませそう応える。
「とにかく、こんなところで騒いでると通報されるかもよ? もう場所変えて遊ぼうよ」
そしてナナはそんなことを言って中條の腕をとったのだった。




