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君の音色

作者: 渡辺 ゆき

静かな日のこと。風が少し吹いた暖かい日だった。高校生活が始まり、桜の花は散ってゆく。空がまぶしい。ある日、授業中に窓の向こうの外を見ていた。微かに音色が聞こえくる。私は耳を澄ましながら聴いた。暖かくて優しい。この音色を聴いているうちに、少し眠くなる。チャイムとともに音色は途絶えた。


放課後。


「帰ろう!」

と友達が言う。私は、

「うん!」

と言い、友達と玄関のところまで来て、

「あ、数学、置いて来ちゃった。」

と言うと、

「数学、宿題でたよね?」

と言う。私は、

「そうなの?」

と言うと、友達は、

「もしかして、また、聞いてなかったの?窓の外を見てて。」

と言う。私は、笑ってごまかした。

「いいから、取ってきな。待ってるから。」

と言ってくれたので、私は慌てて取りに教室に戻った。自分の席のところに行き、引き出しを見て、数学を探した。

「あ、あった!」

と思わず口に出る。そして、慌てて出ようとすると、あの時の音色が聞こえた。私は、その音色の聞こえるほうへ行ってみた。すると、ドアの向こう側に、男の人がいた。トランペットを吹いていた。私は、ドアの前で音色を聴いていた。


彼が吹き終わった後、私は、思わず拍手する。

「音色!」

と言うと、彼と目があった。

「音色きれいですね。」

と言うと、彼は、

「ありがとう。」

と微笑んだ。


それから、この音色を聴きに来るようになった。色々と彼と話すようにも少しずつなってきた。私は、彼に会いに行くことが楽しみになっていた。音色を聴くたびに惹かれる。


3カ月後のこと。


彼は、卒業が決まっていた。ある日、

「もう、聴けなくなっちゃうだ…」

と何気なくいうと、彼は、

「ありがとう。」

と言う。少し、寂しさと心のなかにすっぽと穴が空いたような感じがあった。


彼が卒業する前日、私は眠れなかった。彼の音色と彼が頭の中に浮かぶ。その時、私は、まだ、わかっていなかった。この気持ちがどんなものだったのかを。


卒業式の日、彼に会いに行った。彼は人気があり、近づくことができないでいた。彼の周りには、たくさんの人。「おめでとうございます。」の一言だけでも、言いたかった。でも、なかなか、彼から人がいなくなることがなかった。


終わった後、どうしようか、迷っていた。私は、友達に会い、

「もう、帰る?」

と聞く。私は、

「うん。」

と言ってしまった。帰ろうとしたその時、あの音色が聞こえた。暖かくて優しい。心のなかにすっぽと穴が空いたような感じが残った。私は、彼に会いたいと思った。私は、咄嗟に走った。音色が聞こえるほうへ。


すると、彼はトランペットを吹いていた。私は、ドアを勢いよく開ける。彼は、私を見た。そして、微笑んだ。私は、涙が溢れでる。彼は、私に近づき、泣いている私にハンカチを渡す。落ち着いてから、私は、

「そ、卒業、おめでとうございます。」

と言った。彼は、

「ありがとう。」

と微笑んだ。そして、私の額にキスした。顔が真っ赤になる私。でも、うれしかった。私は、彼と微笑んだ。


春の訪れが少し早くやって来た。





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― 新着の感想 ―
[一言]  葵枝燕と申します。  「君の音色」、読ませていただきました。  私は同学年の男子に恋をしていたのですが、中学卒業と共に離れ離れになりました。臆病というよりビビりな私は、気持ちを告げられなか…
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