愛着
薄暗い部屋。
8畳くらいだろうか。
置かれているのはベッドと箪笥くらいだ。
そのせいかとても広く感じる。
ベッド、枕、カーテン、家具はすべて黒に統一されている。
今…午前…4時…20分ぐらいだろうか。
寝ぼけ眼のままリナは正面にある時計を見た。
隣ではいつもの様に明希がベッド眠っている。
リナは安心し、少し微笑んでまた眠りについた。
次に目を覚ました時、時計はもう午前9時を回っていた。慌てて跳び起きる。
隣には誰もいない。
明希は仕事に行っていた。
ご飯が用意されていた。
『また見送るの忘れちゃった』
とりあえずご飯を食べ、汚い部屋を掃除する。
一つ溜息をつく。
リナには悩みがあった。
ここ最近、明希の様子がおかしいのだ。
電話やメールを誰かとよくするし、夜中突然いなくなったりする。
前まではご飯も一緒に食べていたし、よく笑って話もしてくれていたはずだ。
不安でもう何日熟睡できていないだろうか。
突然、その日は訪れた。
リナの不安通りの事が起こったのだ。
いつも明希が帰宅する午後8時…ドアが開く。
明希は女と部屋に入ってきた。
顔ははっきりわからない。茶髪でロングの髪、襟元に白のファーがついたコートを羽織り、グレーの膝丈のスカートを履いている。
リナは女を睨んだ。
が、女はリナなんていないかのように無視し、楽しそうに話をしている。
しばらく話をした後、ベッドに座った。
…?
え…?
明希は女にキスした。
私が見てるのに…?
抱き寄せてベッドに寝かせる…
そのまま服を脱がせている…
女も明希の服を脱がせる…
リナはもう見ていられなくなった。
後ろを向いてうずくまる。耳を塞ぐ。
女の喘ぎ声…
嫌…聞きたくない…
何で?
明希は私の物なのに。ずっと一緒に生活してきたはずなのに。ナンデ?アタシノモノナノニ…。
『明希!!!!』
叫んで明希の元に行き、ひっぱたいてやろうとした。
あれ…?
手がない。
目の前にいる明希と女の姿が霞む。
息ができない…。
苦しい。タスケテ…。
女がこっちを見た。
明希がそれに気付き私を見る。ひどく驚いた顔をしている。『リナ!!何してんだよ!!』
苦しくて声がでない。
『…』
女が急に笑いだした。
『やだぁ〜。リナなんて名前つけてるの?』
『だってさ、お前がいない時寂しいだろ。
だからリナって名前つけたんだよ。家ではこいつを理奈だと思って可愛がってたんだから。
ハハッ、俺馬鹿だろ。』
『本当馬鹿だよ〜。早く水槽に入れてあげなよ。リナ死んじゃうよ〜。』
『はいはい。ほら、リナおいで。』