抹茶売りの少女
「抹茶~抹茶入りませんか~~?」
冬の都会の中で少女は声をからして叫んだ。
「あ、一杯もらおう」「私にも一杯」「あ、おれも!」
まぁそれはそれは売れるってもんで、あたりまえだ。冬なのだから。
(クックック…かつてこの町でマッチを売った女が居るとかどうとかだが、売れるわきゃあねえよ!100円ライターとかあるんだぞ!)
次々と売れて行く少女の抹茶。しかし彼女の商才はココでとどまらなかった。
夏になったある日。とうぜん温かい抹茶ももう売れなくなっていた。
(私は負けないわ…夏と抹茶といえばあれしかないじゃない!)
「抹茶アイスはいりませんか~?抹茶アイスきんきんに冷えてますよ~」
「一個頂戴!」「僕も!」「私ももらっていいかえ?」
やっぱり売れる。バカ売れ。
(クックック…抹茶にこだわってやってるんだ。この味では負けんさ。)
「みかん味のアイスはいかがですか~?」
「!?」
油断だった。彼女の油断から隣にライバル店を呼び込むことになってしまった。
それだけじゃない。今まで抹茶アイスのシェアを占めてきた子供達は次々とみかん側に寝返っていく。
そりゃこの時期はフルーティな方がいいだろう。宇治っても無駄なのだ。
宇治宇治してても仕方が無いので、アイス以外に何か手はないのかを考えてみることにした。
(原点に返ってマッチをうってみるのはどうだろうか)
そりゃ売れないなんてもんじゃなかった。
圧倒的に需要が無い。
びっくりした事にみかんアイス売りの少女はメロンやブドウを携え屋台を立てた。
その隣には生キャラメル売りのタレント兼牧場主もいたりした。
(これはまずい…こだわりの抹茶でなにか…)
この抹茶を肌にぬると美肌効果があると嘘情報を流した。
これはかなりうれた。が、肌がぼろぼろになった。驚くほどにぼろぼろになった。と告訴された。
試しに塗ってみたらぼろぼろになったついでにほくろが一個増えた。
そんなことしてるうちに隣のアイス売り屋台の少女と生キャラメル売りのタレント兼牧場主が
手を組み生キャラメルアイスが誕生して大繁盛したりしていたとさ
彼女たちにとってはめでたしめでたし
宇治宇治してても、って言い回しが個人的にお気に入りだったり。