冴えない男と不思議な少女
しっかりと短編でも小説を書くのは初めてですが温かい目で見てくださると幸いです。
其処に男は佇んでいた。憂鬱な顔、いや虚無感に溢れた顔で、ただ公園のベンチに座り込んでいた。
時は午後5時、その男は溜息をつきながら夕暮れ時の空を見上げる。彼はつい先日、解雇を言い渡され、職を失ったばかりであった。男は社員寮に住んでおり、解雇により住居も失い、途方に暮れていた。本当ならば今頃はいつものように定時で上がり、家に帰るという嬉しさに心踊らせていた時刻であっただろう。今やそんないつも通りの日常が少し羨ましく感じる。
そうやって男が項垂れていると、一人の少女がその男の前に現れる。
「こんなところでどうしたんですか。」
歳は15、6程であろうか、高校のものであろう制服を纏った、髪の長い可愛らしい少女が話しかけてきた。
まさか話しかけられると思っていなかった男は困惑しつつも答える。
「…会社をクビになってね。路頭に迷って、どうしたもんかと考えていたんだ。」
男自身も驚いた。何故自分はこの少女にありのままを話そうとしたのだろうか?
「そうなんですか、どうしてクビになったのか心当たりはあるんですか?」
少女は男にそう尋ねながら隣に座る。
「業績不振でね、人員を減らさずを得なかったんだ。でもあの俺に全部仕事を押し付けてきた上司はクビになってないんだとよ。」
男はそう怒気の含んだ声で云う。
「それは…災難でしたね。」
少女は男にそう寄り添いながらいう。男は少女と話していると涙をぼろぼろと零す。
「こんなに親身に俺の話を聞いてくれた人は久々だ…。俺なんか友達とかも一人もいないし家族は俺のこと嫌ってるし…。」
少女は尋ねる。
「何故ですか?」
男は涙ぐんだ顔で云う。
「根本的に合わないんだ、価値観が。俺も家族の事は嫌いだ。あいつらは俺の辛さなんか1ミリも知らない。」
少女は不思議に思い、尋ねる。
「辛い…?どうして辛いんですか?」
男は少女に話す。
「…俺は、高校生の頃、不登校になったんだ。鬱病と診断された。鬱病でも頑張ってバイトして、精神科に行った。それで抗うつ薬を貰って、なんとか人並みの生活送れてる。」
少女は納得したように頷く。
「なるほど、鬱病、ですか。それは大変だったでしょう。」
男はそのまま語る。
「俺の親は、「精神科なんて異常者の行く場所だ!!」と言って行くのを肯定せず、お金も出しちゃくれなかった。」
少女はそれを聞いて驚く。
「それは、…とても辛かったでしょう。」
男は俯いて云う。
「…俺は、生きてていいと思うか?俺の場所なんざ何処にもない。行く宛もなければ、生きる希望すら見出だせない。…なんて、すまなかった、忘れてくれ。譲ちゃんに話すような事でもなかったな。」
男は立ち上がって去ろうとするが、少女は引き留める。
「良いことを教えてあげましょう。良いですか、人間は、いや生物は皆愚かなんです。勿論私も。生物が生物である以上愚かであるという宿命から逃れることは出来ません。だって、誰だって過ちを冒さない人など居ないでしょう?だから、人間は皆、愚かなのだと思えば、人間同士の違いなんてちっぽけに思えませんか?間違いを冒しても、前を向いて生きましょう。前を向くのに例え時間がかかったとしても。」
気付けばすっかり日も暮れ、空は真っ暗であった。だからか、月を背にしてそういいながら微笑む彼女は、とても不思議で、かっこよくて、とても…美しかった。
彼女はふとスマホを見る。すると驚いた顔をする。
「あ、すみません、もういかなきゃ。」
そう言って彼女は去ろうとする。
「待ってくれ!!」
そう言って何故か俺は彼女を引き留めようとする。自分でも訳がわからなかった。
「どうしましたか?」
男は少女に向かって感謝を伝える。
「…ありがとう。」
少女はにこっと微笑んで云う。
「どういたしまして。あ、あと…良い夜を?」
戸惑いつつも少女は走っていく。家路につくのだろう。
男は歩く。少女に言われた事を反芻しながら。そうして、男は前へ、前へと歩いていくのであった。
今回の小説は冴えない男と達観している少女をテーマに十数分?数十分ぐらいで書いたものです。若干不自然な箇所があったかもしれませんが、ここまで見てくださり、ありがとうございました。




