非王道2
非王道とは関係ありません。
今日は、お鍋が食べたい!闇鍋したい!と思いながら、スーパーで買い物しようと家を出た。最近、父も母も忙しいらしく帰りが遅いので、夕食担当は私だ。私は好き嫌いがない代わりに悪食だ。ご飯にチョコがけはもちろん、はちみつ、タバスコなんかもかける。味は濃く、はっきりがモットーだ。今日の鍋には、マシュマロとか入れるといいんじゃないと思っていると、黒塗りの黒が一台、家の前にどどんと止まっていた。中から、黒いスーツを着て黒いサングラスをかけた男が出てきて、あっという間に私をその車に乗せてしまった。これは、誘拐だ!
「なんなのっ!降ろして!車から出してよっっっ!誘拐なんて、犯罪なんだから!うちには、お金もないし!」
じたばたと暴れて、喚いた私の抗議もむなしく、私をさらった黒男(全身真っ黒な為名付けた)は、さっと車から出ると前の運転席に座り、後ろの席の私との仕切りをしめ、車は走り出した。
なんとか車から出ようとするが、ロックがかかっているらしく、ドアはもちろん、窓すら開かない。くそう、黒男め。どうしようと考え、携帯あるじゃん、と警察に電話しようとすると、電池切れだった。くそう、黒男め。こうなれば、誰かに気付いてもらおうと、窓をたたいてみるが、誰も気づく様子はない。くそう、黒男め。
諦めて、キョロキョロすると、座席の横にお菓子があった!チョコやクッキー、マシュマロなんかがあり、鍋の材料ゲットじゃん!と黒男を見直した。
チョコをチョコっと食べたら、くだらないギャグのせいか、眠くなったので、寝た。
起きてみると、車は、私の知らない道を走っていて、しばらくして、どでかいヨーロッパ風の門の前でとまった。門の向こうには左右対称の庭が広がっていて、真ん中には噴水まである。家は、というか、これは家なのか?という、城にも見えなくはない家がででん、と建っている。日本にもこんな所あったんだぁ〜、でも、掃除とか移動とか大変そぉ〜と思っていると、いつの間にか、城のような家の前に車はとまり、黒男がドアを開けて、私が降りてくるのをまっていた。
慌てて、ありがとうございます、とお礼を言い、車から降りると、家の中に入った。しかし、誘拐犯の黒男にお礼なんて言う必要なんかなかったのに………。
家の中はこれまた、すごい、としかいいようがなかった。とにかく広い玄関は床はもちろん大理石、上を見上げれば吹き抜けで、壁には、有名であろう人が書いた絵や作品がかけてある。まぁ、そういう事に疎い私には、価値はわからないけれど。
家の中には、執事はもちろんメイドがいた。
外観はまるで城、家の中には執事とメイドとくれば………
異世界トリップ!!!
いつの間に!もしや、私が車の中で寝ている時かぁ!と考えているといつの間にか、執事はある扉の前で止まっていた。どうぞ、御入り下さい、と言われたので、部屋に入ると、見た事もない男がソファーに座っていた。
男はここに座れというかのように、男の横をぽんぽんとたたいた。しかし、初対面でまずいだろうと思ったのと、何か危ない気がすると第六感がはたらいたので、反対側のソファーに座ることにした。
「ここは、どこの世界ですか?」
「………。日本で〇〇というところですが…」
とめちゃめちゃ知ってる地名を言われた。思っい切り日本じゃん。異世界トリップじゃなかった!!!私の夢を返せ!王子様とイチャラブかと思ったのに………。
「で、あんた誰?私に何か用?誘拐までしたんだから、よっぽど大事な用事なんでしょうね」
王子様でないとわかれば、この男はただの誘拐犯だ。
「おやおや、怒ってますね。まぁ、そんな怒ってる貴方も可愛いですが。
しかし、将来の妻との対面が怒った顔というのは少し残念ですが…」
「………」(この男、変態だ)
「………」(ビックリしてる顔も可愛いですねぇ)
「はぁ?将来の妻?私とあんたが結婚するわきゃ、ないでしょう?」
「いいえ。しますよ、結婚。嬉しいコトに。
あなたのお父様の会社が倒産しましてね。あなたとの結婚を条件にその借金を僕が肩代わりしたんですよ」
「父さんが倒産って、ギャグじゃあるまいし、冗談でしょ?」
「いいえ、本当です。このとおり」
と一枚の紙を出してきた。紙の内容と男の顔を見ると本当のようだ。しかし、借金のかたに結婚なんて………。
「あなたは私と結婚なんて、嫌でしょ?ちゃんと働いて返すから……」
「まさか。結婚は大歓迎です。僕もそろそろ歳ですしね。家族が欲しいですし。あぁ、結婚となったら、貴方は働かなくても、大丈夫ですよ。子供の世話もあるでしょうし。あっ子供は3人はほしいです。もっと、というなら、いくらでも!もちろん、あなたによく似た女の子は一人はほしいです!」
何か話が危険地帯に入ってきたので、遮った。
「ところで、かんじんの借金はいくらなの?」
「一億です。一生働いて返すよりも、ここで、僕の提案にのった方がいいと思いせんか?この書類にサインして下さるだけで、いいので」
と別の書類を出してきた。
確かに一億は大きい。私の家族が働いて返すといっても最低10年はかかると思う。もしかしたら、もっとだ。実は、目の前にいる人が、天使かもしれないと思い始めた。顔は格好いいし、お金持ちそうだし、いいんじゃない?
やばい、私、流されてる…。
目の前の男も私が提案にのりかかっているのに、気づいているのか、体を乗り出し、私の耳元に囁いてきた。
「どうします?さぁ、サインした方がいいですよ」
私は仕方なく、書類を手に取り、読んでみた。不備はないようだ。
「仕方ありません。サインします………。」
と 言うと男が微笑んだ。しかし
「………なんちゃって。誰がこんなヘンテコな提案にのるか!サインなんてしません!」
「しかし、会社はどうするんです?借金は?一億なんて大金あるんですか?」
「あります!!!」
「………え?」
「あります、一億!」
と言うと、私は一枚の紙切れをカバンから取り出した。
それを見た男はビックリしている。
「昨日、当たったんです。
一億円の宝くじ」
これで借金はチャラですね、と言って私はにっこり笑う。
「一億以上だったら、提案のってたんですけどね。あと、おとといでも提案のってました。宝くじ当たったの昨日だし。まぁ一億ちょうどだったし、今日だったから。じゃぁ私もぅ行きますね。たぶん、二度と会う事はなさそうですし」
そう言って、私はその場をあとにした。
その場に残された男は、がっくし、肩を落とした。街で彼女を見かけて、一目惚れし、なんとか自分のものにしようと、あらゆるお金と権力を使ったのに………。
一億以上だったら………。おとといだったら……。
また、一から作戦を練り直しだ……。
楽しんでいただけたでしょうか?
なんか、この非王道シリーズはまってきたした。次はどんな非王道にしようか…(笑)
この話の続きも楽しい気がします。頑張れ、ヘタレ!